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Tens:soleil 第7話
ガンバ ルヨ
一歩
「あのー?ここに隊長さんっていますか?」
イーストスは門の横にいた隊員に話しかけた。
「隊長様はおりません。一体何の用ですか?副隊長様なら中にいらっしゃいますが。」
「じゃあその副隊長さんに合わせてもらえますか?十の大罪人について聞きたい事があって。」
隊員の男性は門を開け、副隊長の部屋まで案内してくれた。
「ここが副隊長様の部屋です。それでは私はここで。」
隊員の男性は持ち場へと戻っていった。
「ここが副隊長の部屋…。」
イーストスは慎重にドアをノックした。
「副隊長さん?私は星霜の館のイーストス。聞きたい事があってきたの。中に入ってもいい?」
しばらくして内側からドアが開いた。
ドアが開くと高身長の男性が出てきた。
「ようこそ。とりあえず中へどうぞ。」
男性は優しく部屋の中心へ案内し、ティーカップに入ったお茶をテーブルに出した。
「どうぞお飲み下さい。これは永霓で有名な三遊茶と言うお茶です。」
アリアはお茶を口にした。
「おいしいですね。とても上品です。」
男性は少し笑い、話を変えた。
「あ、自己紹介がまだでしたね。私の名は|亜穹《あきゅう》と申します。以後お見知り置きを。それでイーストスさん?聞きたい事とはなんですか?」
「十の大罪人について何か知ってる事はない?実は最近オリンポスにいるかもしれなくて…まぁ私たちの推測だけど。」
亜穹は少し悩んで
「私は特に何も。おそらくですが隊長が何か知っていると思います。申し訳ありませんお役に立てなくて。」
「いいや、いいの。ありがとう。」
イーストスは椅子から立ち上がった。
「あ…お茶少し貰ってもいい?」
「どうぞ。」
イーストスは亜穹から茶葉を少し貰った。
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「結局成果なしですか…。」
アリアは残念そうにした。
「もう疲れたし、今日はもう寝ようよ。」
ニコがイーストスに提案した。
「そうね。まったく、ずっと暗いと寝る事忘れそうだわ。」
次の日
「ねぇ…カガリ君?」
「ん…ん?」
目を覚ますと目の前にはゼラウスがいた。
「なんだ?ゼラウス。あ…ソレイユも起きちゃった。」
「んー?カガリ…なんで起きてんだよぉ〜。」
ソレイユは目を擦りながら、大きなあくびをした。
「ちょっと外に着いてきてくれない?少し話したい事があって。」
ゼラウスはソレイユと俺を館の中庭まで連れていった。
「まず最初に話したい事。カガリ君、遺跡についてみんなと話している時、なにかおかしいと思わなかった?」
ゼラウスは木の下に座りながら、俺に話しかけてきた。
「いや…まったく。」
「じゃあ全部話わね。みんな遺跡の「名前」を誰一人として言っていなかったでしょ?」
「それがなんかカンケーあんのか?」
ソレイユはまだ眠たそうに言った。
「あの遺跡って、実は神様が作ったんだよね。火種を隠す場所として。だから誰も名前を知らないし、疑問にも思はない。普通は「外套」っていう物に隠されていて、人類は眼にすることも感じることも出来ない。」
「だけど十の大罪人が『月』からの祝福を受けて、その外套を数ヶ月前に壊しちゃったのよね。ハーディスが遺跡から魂のうめき声を聞いたのもそのくらい。」
たくさんの説明に俺は必死に追いついた。
「え…?でも、アポロンは遺跡の年代とかを正確に割り出していたぞ?」
「それは神様が遺跡に施した「設定」よ。万が一外套が破壊された時を考慮した物。」
「ちなみにアポロンの調査の結果は全部「設定」と同じよ。本当に彼の調査力には脱帽ね。」
「なるほどなー」
「ソレイユは本当に分かってるのか?」
コツ…
「あら?お客様?」
音がした方を向くと頭から蛇が生えた女が立っていた。
「こんばんはゼラウス。で、さっきは何を話していたの?あ…そこの子は初めましてね。私はメードゥ。よろしくね?」
「ああ…」
蛇…?あ、そういえば遺跡に蛇の牙が落ちてたな…。
「久しぶりメードゥ。タラッサには会った?」
「会うわけないでしょ。あの男、まだ生きてたのね。」
俺は困惑しながらゼラウスに聞いた。
「なぁ…こいつは誰なんだ?」
「この子は十の大罪人のメードゥ。何しに来たのかは知らないわ。」
「ああ…そう言えば目的を言っていなかったわね。火種の場所を聞きに来たの。あなたの「空間」のアルコーンの力なら分かるでしょ?」
空気が一瞬静まり返った。
「まぁ…確かに知ってるけど…でも教えてあげない。私でも敵に塩を送るような事はしないから。」
「へぇ…そっか。」
メードゥは冷静だった。
「じぁ、火種あげるね。」
突然、メードゥは火種を取り出した。
「え…?どう言うつもりだ?」
「マジでどうゆーことだよ…」
俺とソレイユは困惑した。
「別に一つだけ持っていても意味ないし。神の子の役割は、一つ果たせなかったとしても何の支障もないからね。ねぇ…神の子の君?この国、オリンポスの火種を灯し終えたら二つ先のシャッフングって言う国でまた会おう?これ以上この国で、私たちは君の邪魔をしないから。」
「信じて…いいのか?」
「うん。いいよ。」
メードゥは俺に遺跡の火種を渡した。
「じゃあね。」
そう言うと、メードゥは静かに消えて言った。
「びっくりした?この火種は素直に受け取っていいわよ。「万物」のアルコーンがいいって言ってるから。」
「じゃあ、オリンポスの燭台に灯しに行こう。ほら立って?」
ゼラウスは大陸の中心部にある神の燭台に俺を案内した。
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燭台に続く階段は物悲しかった。
「これ…なんか記憶にあるような気が…」
「うふ…ここの記憶はあるのね。そうだよ。ここは君が神の子として生まれた場所。戻ってくるの意外と早かったね。」
「オレもここ、記憶にあるぜ。」
「さぁ火種を灯そう。」
俺は火種を中心にある燭台に捧げた。
パァ…
オリンポスの燭台の火が少し灯った。
「これでやっと一歩進んだわね。これが単純計算で50回くらいあるのね。」
「50回か…先が見えないな…」
「頑張ってね。私も出来る限り協力する。君は神様が衰えてるせいで前例の神の子とは天と地ほど能力に差があるから。」
「でも、オレがいるから大丈夫だろ!」
「ああ、そうだな。」
それにしてもこんなに簡単にあいつが火種を返すなんて…何かあるのか?
いや考えるのはやめよう。
俺は少しだけ光る燭台を後に階段を降りた。
専門用語解説
アルコーン
ゼラウスが自身の星術「虚の全知、雲上の光」によって生み出された偽の神。
「空間」「時間」「生命」「万物」など様々な役割を持っている。