蘿莉控男爵と露草姫（仮題）

･･･それも現在は、村長の娘で品がほど善く、 生来の気取らない性格から屋敷での評判は好ましい。 男衆は「お嬢ちゃん」、「rosé（ロゼ）」。 下女の間では「露（rosée）姫」、もしくは「月 lune（リュヌ）」と呼ばれている。 ※露姫：朝露から生まれたというお伽話の不幸な妖精。露草＝月草とも呼ぶそうだ。 土地の有力者から人質を取ることは非道でもないし、 暴君などと謗られるのは心外で、あらぬ嫌疑が掛からぬよう、必要な取り交わしだ。 だからこそ、娘の意思遵守は勿論のこと外出も条件付きながら認めているのだ。 周囲の憐憫の情に反して、娘は屋敷に来てからというもの、 元からここが生家であったかのように、気ままな人質生活を謳歌している。 `「兄弟姉妹が多く、家では身の置き所が無かった」` `「自室が欲しくて早く結婚して家を出たかった」`とは後日談だ。 反抗期と大人への憧れを拗らせというところか。 浅はかではあるが、齢と事情を考慮すれば致し方ないだろう。。 ･･*’“*:.｡. .｡.:*･゜ﾟ･*･･*’“*:.｡. .｡.:*･゜ﾟ･*･･*’“*:.｡. .｡.:*･゜ﾟ･*･･*’“*:.｡. .｡.:*･゜ﾟ･*･･*’“* 娘が次兄に性暴力を受けていたことが明るみになり、村長一家は対応に悩んでいた。 次兄の女癖は悪く、戒律の厳しい国で一家の醜聞が明るみになれば･･･最悪、 話が誇張されて村々に噂が広まれば一家の体裁はすこぶる悪くなる懸念が生じた。 そのような時に、ちょうどコチラから話が舞い込む。 質入れの提案について持ち掛けた時に三女、 即ち当人希望の即断で受け容れるという逆提案には面食らったものだ。 余程の醜面か素行不良、婚約先断固拒否のじゃじゃ馬娘でなかろうかと勘繰り、 慎重に当日面談で判断する事に至る。 会ってみた第一印象は四姉妹の中で地味目な、ごく平凡な娘だった。 伏し目がちに目を合わせようとせず、泣き崩れて人質を拒んだ娘。 長女次女が身代わりを主張し、 場が混沌としたのを鑑みた供の衛士は出直すことを求める。 ここで村長は三女と二人きりで話し合いたいと切り出し、 我々は部屋を移して‥‥暫く待たされた末。 家族に説得された三女は "無理やりに" 屋敷へ連れてこられたのだった。 当初の三日間は部屋に引き籠って食事を摂らず、 自害をほのめかすなど憐れみを誘い、屋敷の者が一見すれば健気にも映っただろう。 **実際は。。** 帰りの馬車の中で家族との別離に涙に暮れる･･･。 どう宥めていいものか‥と思案していたにも拘らず、 出発と同時に胸元へしな垂れ掛かり、輝く瞳で嬉々として開口一番。 `「どうお呼びしましょうか。貴方？ご主人様かしら^^♪ 」` `「末永く、宜しくお頼みしますわね^^♪」` 村長の方からは事前に筋書きと兄弟姉妹にも口裏合わせが済んでいた。 しかし当日になって娘は即興で家族との別れを悲しむ芝居をうつ。 恐らく、衛士の心を打っただろう。 村長も巧くこれに合わせ、一家で体裁を取り繕ったのだ。 まあ･･･容姿に見合わず大胆なことだ。