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乱しと整え
「こんにちは」
「あー?」
清楚そうなやつ、というのが第一印象だった。
毛量が多いのか、|白髪《はくはつ》を少しだけまとめている。襟をきちんと正しているのが、鬱陶しいというか、嫌だ。
あっしの能力に反しているみたいで嫌だ。
「乱橋未玲さん、ですね」
「そうだよ。あっしのことだ」
「では、さっそく掃除を始めさせていただきます」
手際よく片付けていく彼女を見る。彼女は能力を使っていないようだった。すべて手作業で、ひとつひとつ、片付けている。
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あっという間に綺麗になった部屋。あっしは清華にたずねた。
「なんで能力、使わないんだ」
「ここに来る前の作業が染み付いているからです。人間なので、それなりの収入が必要なわけで。こういうサービスを始めました」
「人間…か」
人間___
かつて、あっしもそうだった。
能力で好き勝手暴れて、白露様に罰を受けた。その最高罪が『妖怪になる』ことだった。妖怪に対する差別心を持つ人も大勢いる。妖怪そのもののイメージが悪いのだ。
「…懐かしいな」
「懐かしい、とは?」
「あっしもそうだった。悪事を働いてからは、妖怪だけど…。ずっと、あっしの部屋を綺麗にしていてほしい」
清華は、切なそうな微笑みを浮かべた。
「わたしは人間です。人間の寿命は、あなたにとっては儚いもの。抗えない運命なのです。本当は、こうしてあなたと話しながら仕事をしたいのですが、そうはいきません。それが、自然の摂理ですから」
「っ…!」
彼女は、自分の死を受け入れようとしている。
「冥界に行ったら、そのうち会える。今のままだったら、確実に冥界にいられるはず。長い年月がかかろうとも、あっしはお前のところへ行けるさ」
そう、ぽつりとつぶやいた。本音だけど、本音ではない。
「何もかも乱しても、あっしは運命に抗ってみせる」
「…そうですね。そうなると、いいですね___。では、これにて失礼します」
去ってゆく清華の姿は、切なそうで、寂しそうだった。