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24話〜燃え盛る記憶、川のせせらぎ〜
さあさあ、いよいよですよ
―詐欺師視点―
クレンが、アクアの魔法に呑み込まれた2人を直ぐに助けに行った。
燃え盛る炎は魔法のお陰(?)で消えていたが、2人共意識が無い。
ボカロファンに至っては、それ程酷くは無いものの、全身に火傷を負っていて、身体のあちこちが焼け爛れていた。
四天王(水)「そんな······なんで···僕が負けるなんて···。」
一方アクアは、自分が負けた事が信じられない様子で、ずっと何か呟いている。
そんなアクアを見て、ガルーダが言った。
火炎竜「アクアも強かったよ。僕らが魔力限界突破させて戦うなんて、滅多に無い事だもんね。」
ガルーダの言葉に続ける様に、ライも言う。
賭博師「アァ、ホントだよ。こっちなんか2人も再起不能になってんだからな。」
2人の言葉を聞いたアクアは、驚いた顔をする。
しかし、直ぐにまた、いつもの冷静な表情に戻る。
そして、完全に消え去る間際に、独り言の様に呟いた。
四天王(水)「あの方は僕達四天王の比じゃない程お強い···。覚悟しておく事だね。」
それだけ言うと、川のせせらぎの様にサラサラと消えていった。
···最期の最期まで、アクアらしかったな。
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―奏者視点―
また、あの無音の夢だ。
《《あの時》》をサイレント映画にした様な、そんな夢。
家···と言うには大きすぎる豪邸が焼け落ちて、灰になっていく。
あぁ···そうだよ、これは全部、私がやったんだよ。
全部···全部お前らのせいなんだよ···。
私は、人外と契約をして、私の事まで人外にさせた両親が···いや、《《音羽家》》の一族が大嫌いだった。
もう、嫌いで嫌いで、殺意さえ湧いてきた。
でも、それでも我慢して生活してた。
なのに······。
あの時の"会話"で、堪忍袋の尾が切れた。
―なんで、ああなったのか···。
それは、ある日の夜の両親の会話。
人外になって、音により敏感になった私は、両親のその会話を聞いてしまった。
―せっかく高い金払ってまで契約して人外にさせたのに、あんな出来損ないに···。
自分が《《出来損ない》》呼ばわりされていて、息が止まるかと思った。
―あんな出来損ないだったとはな。ありゃ、どっかに売っていいだろう。安心しろ、人外だから死ぬ事は無いさ。
その時、私の中で何かがプツン、と切れた。
真夜中、両親の部屋にこっそり入って、部屋全体に灯油をまいた。
両親は直ぐ目を覚まして言う。
―奏楽···お前何してるんだ!?
奏者?「どの口が言ってんだ······。`さっさと死ねよ。`」
そして、その時多分、炎魔術でもトップクラスに強力なものを放ったんだと思う。
轟音が鳴り響き、部屋は一瞬で炎に包まれた。
勿論両親にも。
そして···直ぐ近くにいた私にも。
熱いなんてもんじゃ無かった。
「人外だから死ねない」っていうのが、凄く辛かった。
炎の勢いは増していき、屋敷全体を焦がしていった。
確かその後、不思議な空間に飛び込んだんだっけ。
そこから先の記憶は曖昧だけど、目を覚ました時には既にあの世界―フウライタウンに来ていた。
その中でも、「楽奏町」と呼ばれた音楽の街に。
楽奏町のガーディアンをしていたレムイアに助けて貰って、新しい名前も付けられた時は本当に嬉しかった。
その後···どうしたんだっけ。
あぁ、そうだ。
ちょっとしたチームを作ったんだった。
みんなとゆるーく生活してて、楽しかったのに。
いつの時か、私のチームじゃ手に負えない程の「闇」が迫ってきて、壊滅状態になった。
私は「闇」に打ち勝つ程の強力な力が欲しかった。
だからクレンの誘いを受け入れたんだ。
そうだ。
この戦いが終わってフウライタウンに戻ったら、楽奏町の私のチームを紹介してあげよう。
最近ウノにリーダー任せっきりだったからなぁ···。
トモリも心配してるだろうな。
あと··················は·····················。
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―堕天使視点―
作者「ソウ!!ソウっ!!お願い!!起きてっ!!」
少し前に目を覚ました狐が、ボカロファンに声をかける。
しかし、依然として彼女は目を覚まさない。
全員、本気で心配していた。
仮に、ずっと後で意識が戻ったとしても、最終決戦でいなければ意味が無い。
人が1人減っただけでも、戦力は大幅に減少してしまう。
戦闘力の高い彼女がいないとなれば尚更だ。
作者「折角私、ソウの事思い出したんだよ···?」
狐は、とうとう泣き出した。
作者「お願い······早く目を覚ましてよ···。」
その時だった。
奏者「__···ッ···。さ············や············?__」
一同「!!」
ボカロファンが、弱々しい声で呟きながら、目を覚ました。
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―魔狼視点―
···よかった······本当によかった······。
もうこのまま起きなかったら、本当にどうしようかと思った···。
奏者「······ごめんね。心配かけて。ちょっと······過去の事思い出しちゃって。」
うんうん成る程、過去を思い出しt······ゑ?
魔狼「ええええええ!?!?ど、どういう···???」
奏者「あぁ···いや、うん······。ウチ、よく分からないけど、人外と契約結んでた家系でさ。私嫌だったのに、無理矢理人外にされたんだ。」
···そうだったんだ···。
今までボカロファンの過去の事は余り聞いた事が無かったから、今ここで、衝撃的な事実を話され、驚いた。
彼女は一息置いて、自身の過去を語り始めた。
―私、ニンゲンの頃は「|音羽奏楽《おとばねそら》」って名前だった。
そして、私の家系は···音羽家は、人外と契約してる家系だったんだ。
そのせいで、私は無理矢理人外にされた。
でもね、その時私が余りにも抵抗し過ぎたせいで、人間と人外が混ざった様な···人間でも人外でもない種族になっちゃったんだ。
それが今の私。
両親は、私が中途半端な人外になった事を嘆いて。
ある夜、両親が私を"出来損ない"呼ばわりして、何処かに売り捌こうとしてる話聞いちゃってさ。
私の中で何かが切れたのが分かった。
そして、両親が寝静まった頃合いを見計らって、部屋に灯油撒いて、高度な炎魔術を放った。
屋敷も、私の身体も、一瞬で業火に包まれた。
そして···気がついたらフウライタウンに来てたわけ。
私は言葉を失った。
何時も明るく接してくれる彼女が、こんな暗い過去を背負っていたなんて。
奏者「私···回復能力とか弱くてさ。傷なんかもう治んないよ。」
ボカロファンは呟き、服の端をめくり上げる。
中から現れたのは、焼け爛れ、引き攣った様な身体だった。
一同「······!!」
全員、息を呑む。
奏者「火傷なんてもう治んないよ。これから先も、永遠に私を灼き続ける。」
ボカロファンは、寂しそうに呟く。
そして、決戦前に暗い話してごめんね、と謝った。
ボカロファンがこんな姿を見せるのは珍しかった。
それは、何故だかは知らないけど、この先の決戦で、何かが起こる事を暗示している様で。
若干尻込みするものの、みんなに向かって言う。
魔狼「···どんな苦境に立たされようと、我々は前に進み続ける。······闇を祓う為に。」
他の宴のメンバーが、力強く頷く。
いよいよ、決戦への扉が開かれようとしていた。
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―レムイア視点―
『おかけになった電話番号は······』
おかしい。
おかしすぎる。
ここ数日、電話をかけても全く出ない。
フェルだけではない。
魔狼の宴のメンバー全員だ。
ただ事では無い様な気がしてならない。
横を見ると、フェルが創り上げたチームのメンバー達が心配そうに見つめていた。
???「···で、どうだったん?」
緑の帽子に蝶の羽が生えた少女が問い掛ける。
レムイア「···いや。フェルどころか、魔宴メンバーが全員音信不通だ。」
私が答えると、足が透けている、絵画の様に美しい少女が心配そうに言う。
???「奏者···なんで電話出てくれないんだろ···。」
???「もし奏者に何かしてたら絶対許さない···!!」
人間の少女が、怒りの籠もった声で呟いた。
そっか。
彼女は、フェルの事が大好きだったからな···。
???「奏者なら心配いらない。大丈夫だよ。」
何処からか声が聞こえた。
一斉に振り向くと、玄関に黒尽くめで、猫の耳が生えた青年が立っている。
レムイア「闇魔道士···!」
???「その呼び方なんか嫌だなぁ。ちゃんと名前出呼んでくれよ···。」
彼は呆れて溜息を吐く。
???「で、団長は何処いんの?」
道化師風の少女が闇魔道士に聞く。
彼は一言、異世界だよ。と答えた。
???「そして、お願いがあるんだ···。」
彼は話を続ける。
???「はぁ!?危な過ぎるでしょ!?どうすんのさ!?」
「お願い」を聞いた一同が焦る。
闇魔道士は膝をついて、頭を下げた。
???「お願いだ。······僕も、君達に協力する。前に、そう言っただろう。」
一同「「「·········。」」」
暫くの沈黙の後
???「分かった。」
彼の願いを受け入れた。
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―???視点―
彼女には、前々から不思議な力を感じていた。
ってか、人間の頃からだけど。
彼女なら大丈夫だろう。
???「······奏者···いや、奏楽。君の力···僕に見せてくれよ。」
君のその力があれば、魔王は倒せる。
君は決して、音羽家の出来損ないじゃ無いんだから。
to be continued···
まさかの2章前にレムイア登場。
レムイアを考えてくださったミニ海月様、ありがとうございました。
さて、次回からvs魔王。
お楽しみに。