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いつか、“出会いたかった世界”と出会えるかな。1
|現在《いま》から100年以上時が経った、21XX年。
政府は、「多様性」を尊重するため、差別的な行動や発言を、厳しく取り締まる法律を作った。
自分の素を出しても嫌な顔せずに受け入れてくれる。
そのため、人種、性別、年齢、どれも関係なく、様々な人が生活している。
女子校、男子校は廃止され、名前を呼ぶときも、ちゃん付け、くん付けは消えていった。
同級生だけでなく、先輩後輩同士でも、呼び捨てが一般的だ。
そんな社会になった今、大きく変化したのは性別だ。
多様性が受け入れられると、これまで「男」「女」に囚われ、異性になりたいなんて微塵も思ったことがない、という顔をしていた人たちが、自分のキャラに囚われず生活するようになったのだ。
そうなると、案外「女らしい」「男らしい」人はいない、ということが分かった。
制服は、ほとんどの学校が廃止し、制服がある学校でも、スカートとズボンを自由に選択できる。
性別適合手術も、声帯転換手術も、無償で受けられるようになった。
手軽に声を変えるために、高性能の変声機も、小学生でも買えるような値段で売られている。
男っぽく、女っぽくできるメイク道具も発売された。
しかし、そうなると、人の性別がわからなくなる。
今まで、男だと思っていた人が女だったり、女だと思っていた人が男だったり。
それでも、本人に性別を問うのは、法律に反するため、確認することができない。
そんな社会になった今———
☆★☆
この時期って、毎回緊張する。
そりゃあ、人生の中で10回もないから、当たり前かもしれないけど。
多分一生、慣れることなんてない。
でも、誰もが経験すること。
この日で、約3年間の運命が決まると言っても、過言ではないだろう。
だって、今日は高校の入学式だから。
そして、今年こそは——。
☆★☆
「|愛名初子《あいなういこ》です。えっと、好きな食べ物はドーナツです。ボカロ曲が好きで、毎日聴いてます。あと、歴史がすごく好きで、特に令和時代に行ってみたいなって思ってます。こんな私と仲良くしてくれる人がいたら、ぜひ話かけてください。1年間よろしくお願いします……!」
パチパチパチパチ——。
そう、今は自己紹介の時間だ。
先ほど、クラス・担任発表と入学式が終わり、クラスメイトみんなで教室で自己紹介をしている。
最悪なのは、自己紹介の順番が出席番号順だったということだ。
私の苗字は「|愛名《あいな》」。
つまり、出席番号1番になってしまったのだ。
自己紹介のほとんどが出席番号順だが、小学4年生のとき、1度だけ逆出席番号順で自己紹介をした。
そのため、今年こそはそうならないかと期待していたが、無駄だった。
まあ、一番最初も最後も嫌だけれど。
……っと、次の人の自己紹介が始まった。
「|朝比奈《あさひな》|希子《きこ》です」
へー、希子ちゃんっていうんだ。
「趣味は、アニメを観ることで、特技はピアノです。」
おぉ、ピアノが得意なんだ。ちょっと憧れる。
「好きな食べ物はピーナッツです。」
ちょっとおしゃれかも。
「……あと、愛名さんと同じく、私も歴史が好きです。よろしくお願いします。」
——へ? ほ、ほんとに!?
ていうか、私の自己紹介覚えててくれたんだ……!
のんびり投稿してる奴です〜
だから、次出すの遅くなっちゃうかもです、!
よろしくですー!