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3.生きてる
「 」セリフ
( )心情
( 効果音、動作・状況説明など
※暗い話が入ります※
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アイドル部のメンバーとの自己紹介と少しの会議はさっき終わった。グループ名や今後の方針などを大まかに決めたくらいだ。
昔の出来事を思い出したせいで、何となく気乗りせずにぼんやりしていた自分が嫌になる。
頭の中でぐるぐると考え事をしながら、昇降口に向かうため階段を下りていた時だった。
🌸「うぇ、、( クラッ」
急に視界が歪みんで目の前が見えにくい。
運悪く覚束ない足取りで階段を下りるはめになってしまった。身体もだるいし視界は霞んでいて今どうなっているのかが全く分からない。
🌸(手すり、掴まなきゃ. . .)
**グラッ**
🌸「あっ、 、!」
足を踏み外してしまったようだ。
そんな事を考えながら転がるように階段から落ちていった。一瞬だけ人影が見えたような見えなかったような、そこで俺の意識は途絶えた。
--- *** ---
🌸「パチッ. . . あれ、ここは?」
📢「起きたか。どっか痛いとかとかある?」
🌸「えっと、、、?」
目が覚めると見知らぬ天井が目に入った。
なぜかベットの上に寝かされており、隣にはいるまが居て俺に質問を投げかけてきた。
状況が今いちよく分かっていない俺を見かねて結局いるまがまた話し始めた。
📢「らんが階段から落ちてくるとこが見えた
から保健室に運んだんだよ。」
「で、痛いところは?」
🌸「特にないです。てか、ありがとう。」
📢「そ、じゃもう少しゆっくりしてな。」
いるまは言いたいことを言い終わったかのように、座っていた椅子に俺とは反対方向に座り直り目を閉じてイヤホンを付けた。正直、なんで隣に居続けてくれるのかよく分からないが、彼なりの優しさなのかなという謎めいた理由を付けて納得しておく。
それにしても、いるまってめちゃくちゃモテそうで羨ましい。すっと通った鼻筋、目は三白眼でキリッとしてたかな?、ウルフカットの紫髪で先端だけ白色。アイドル部に選ばれるのは、やっぱりこういう人なんだなと実感しながら、いるまをじっと見つめていた。
📢「. . . なにさっきからジロジロ見てんの?」
🌸「や、すまん。なんでもない。」
📢「なら良いけど。てかお前寝不足なの?目の下の隈とかやばいよ?」
🌸「まじ?コンシーラーで隠した筈なんだけ
どなー笑」
📢「あんまり夜更かしとかすんなよ。」
🌸「今日がはじめましてなのに、そんなに優しいんだ?」
📢「ッ. . . 普通だろ。( 顔逸」
人に優しくされるのっていつぶりかな。中身の無い俺の事なんて誰も愛してくれなかったからな。なんかちょっと嬉しいかも。
いるまもいるまだよな。いるまの事は全然知らないけど、こんな俺と一緒に居るよか、もっと他に時間使えば良いのに。
📢「. . . ! なんで泣いてんの?」
🌸「へ、、、?( ポロポロ」
気づいた時には頬に涙が伝っていた。
人前で泣くなんて恥ずかしいな、そんな事を考えながらなんて言い訳をしようか頭を回す。
📢「俺で良ければ話聞こうか?」
🌸「ごめん、大丈夫だから。気にしないで」
📢「、、、」
結局はテキトーな事を言ってしまった。何で泣いてたかなんて、ほぼ初対面の人に話す訳ない。それにどんなに仲良くなろうと俺は人と一線を引く。もう、傷つきたくないから。
📢「いーや、“大丈夫”はこの世で一番信用ならない言葉だからな。こんな初対面の奴に言いたくないかもしれんが、なんか吐けっ!」
いつの間にか、いるまは俺の方へと姿勢を向き直しており彼の真っ直ぐな黄色い瞳と視線が絡み合った。言わないと離してくれなさそうだし、言ってしまうか。嫌われたら、相手にとって俺はそんだけの奴だったってだけだし。
🌸「俺は産まれた瞬間に捨てられた。」
📢「、、、」
🌸「たまたま道を通りすがった人に救われて施設に入れたから今も生きてるけど、今まで誰も愛してくれなかった。施設の人も周りの奴も俺を見てくれなかった、用済みになればどんどん離れていった。どうせ親も親でゴムのし忘れとかでたまたま産まれてしまった邪魔者だと思ったんだろうね。
俺は生きてる価値の無いからっぽな人間なんだよ。そんな俺がアイドルだなんて笑えてくるよな。」
📢「そうか?」
🌸「. . . は?」
📢「俺にはお前がどんな過去を送ってきたとかは全然分かんないけど、お前は何か悪いことした訳じゃねぇんだろ。みんななんで生きてるかも分からず生きてるだから、自由に生きたもん勝ちだろ。」
🌸「なにそれ. . .笑」
📢「みんな何かに縛られて生きてるんだと思うよ、俺は。」
そう言う彼は、意外にも真剣な顔をしていた。
言ってしまった言葉を振り返ってみれば、これからの関係が思いやられるものばかりだと気付いた。でも、案外人に話してみるのも悪くなかった。心の中の錘が軽くなった気がする。
これが最初で最後になるだろう。
**ザー**
🌸「雨降ってきたね。」
📢「だな。」
🌸「いるまは帰らないの?」
📢「雨の中帰る馬鹿がどこに居るんだよ。」
🌸「それもそうだね( ニコッ」
俺といるましか居ない静かな保健室には、雨の降る音が響き渡っていた。まるで、俺たちの間を優しく埋めるように。
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ここまて読んで頂きありがとうございます!
次話もお楽しみに^ ^