閲覧設定

基本設定

※本文色のカスタマイズはこちら
※フォントのカスタマイズはこちら

詳細設定

※横組みはタブレットサイズ以上のみ反映

オプション設定

名前変換設定

この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります

公開中

ひまわりの向こう側

いまごろ親父、電車乗ってんのかなー…。 今日の朝イチ、かーちゃんがオレを起こしてくれた時、 オレはまっすぐげんかんへと向かった。 いつもの家なのに、その時はうんとひろく思えて、しずかだった。 鳥のさえずりがチリチリなって、空はきれいな白色だった。 「じゃあ、元気でいろよ、アキ。」 そう言って親父はでっかい手を、オレの頭におしあて、わしゃわしゃとかいた。 「うん。オレ、チョー元気でいるから。」 そうか、と親父は笑って、体をゆっくり後ろに引きずっていた。 じゃあね、というと、おう、と親父は答えたけれど、 いつもより足はゆっくりで、なかなかすすんでいるようには見えなかった。 だけどオレは背中をおすように、ビシッと敬礼をした。 すると親父は、それよりも力強く、ズバッと敬礼を返してくれた。 親父の目の中はうるんでいた。 親父はそれから、ふり返ることもなくすすんでいった。 走るようにしてオレももどり、朝メシをかきこんだ。 その時はたしか、まだ5時をさしていた。
「わっ、スゲーッ!中に人がいる!」 ナツはコウフンしたようにカラーテレビを見つめ、指をさしていた。 「ほらほらっ、スゲー動いてる!」 そんなナツがおかしくて、オレとトウヤは思わず笑ってしまった。 ナツは、きょとんとしていた。 「お前らはすごいとおもわねーの?」 「すごいけど。見なれたってゆーか…。」 トウヤがそういうと、ナツはこう言った。 「やっぱ、慣れが一番こえーんだなー。」 そう言い、ナツはまた変わらず、コウフンした様子でテレビを見た。 いたってオレもレイセイをギリギリ保っている。 だって… オレもオレんちのテレビを初めて見るから……。