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第6章:真実の記憶
第6章:真実の記憶
北の谷に近づくにつれ、ユウの夢にミナが現れるようになった。
かつての笑顔。小さな手。眠れない夜に聞いた、震える声。
「お兄ちゃん、どこにいるの……?」
そしてある夜、夢の中でユウは聞く。
「……本当に、君を守れたのかな」
目を覚ますと、カナが隣で焚き火を見ていた。
「ミナちゃんの夢、見てたんだね」
ユウは驚いたようにカナを見る。彼女は微笑み、焚き火を突きながら言った。
「寝言、聞こえてたよ。“ミナ、守れなくてごめん”って」
ユウはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと語り始めた。
「俺は、兄として失格だ。あの夜、もっと注意してたら、ミナを一人にしなかったら、今ごろ……」
カナは、焚き火の火を見つめながら言った。
「それでも、探してるじゃない。あきらめずに。ミナちゃんがその想いを知らないはず、ないと思う」