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こぐま はじめての入院
こぐまくんが入院することになりました
季節は冬になり、森は雪に覆われ、静けさに包まれていました。こぐまとメイは、温かい巣穴で寄り添い、お母さんクマとお父さんクマに見守られながら冬眠の準備をしていました。メイはすっかり大きくなり、たどたどしいながらも「にいに」とこぐまに甘えるのが大好きでした。こぐまも、そんなメイを慈しむように、いつも隣にいてあげました。
しかし、ある日のこと、こぐまは体の異変を感じ始めました。体がだるく、食欲もなく、熱っぽいのです。心配したお母さんクマとお父さんクマは、森の奥に住む賢いフクロウ先生に相談しました。フクロウ先生はこぐまを診て、首をかしげました。
「これは、少し珍しい風邪のようです。森の病院でしばらく様子を見る必要があります。」
森の病院――。それは、病気の動物たちが集まって治療を受ける場所でした。こぐまは、初めて聞くその言葉に不安な気持ちになりました。メイも、いつも元気なこぐまがぐったりしているのを見て、心配そうに「にいに…?」と小さな声で呼びかけました。
「大丈夫だよ、こぐま。すぐに元気になって帰ってこられるからね」お母さんクマが優しく抱きしめてくれました。
お父さんクマに背負われ、こぐまは雪道を森の病院へと向かいました。病院に着くと、たくさんの動物たちがいました。心配そうな顔をしたリスさん、咳をしているウサギさん、そして、寂しそうに遠くを見つめるキツネさん。こぐまは、少し心細くなりました。
病院のベッドに横になると、優しい看護師のシカさんが、温かいスープを運んできてくれました。スープを一口飲むと、少しだけ体が楽になった気がしました。それでも、夜になると、隣にメイがいないことが寂しくて、涙がポロポロとこぼれました。
「メイ…」
その日の夜、お母さんクマとフクロウ先生が面会に来てくれました。「メイがね、こぐまがいないと寂しがって、ずっと『にいに、にいに』って呼んでいるのよ。」お母さんクマの言葉に、こぐまは胸が温かくなりました。フクロウ先生は、「焦らなくていい。ゆっくり治していけば大丈夫だ」と優しく声をかけてくれました。
次の日、こぐまは少しだけ元気を取り戻しました。他の動物たちも、こぐまに優しく話しかけてくれました。リスさんは、面白い木の実の話をしてくれ、ウサギさんは、春になったらどんな花が咲くか教えてくれました。キツネさんは、遠くの山で見つけた美しい滝の話をしてくれました。
こぐまは、病院の中でも新しい発見があることに気づきました。みんな、病気で辛いけれど、お互いを思いやり、励まし合っていました。そして、何よりも、早く元気になって家に帰りたいという気持ちは、みんな同じでした。
数日が経ち、こぐまの体調はすっかり良くなりました。フクロウ先生が、「もう大丈夫だ。家に帰れるよ」と告げた時、こぐまは飛び上がるほど喜びました。お父さんクマが迎えに来てくれ、病院の動物たちに別れを告げ、こぐまは家路につきました。
巣穴の入り口が見えると、メイが待ちきれない様子で駆け寄ってきました。
「にいに!」
メイは、小さな体でこぐまに抱きつき、そのぬくもりに、こぐまの心は安らぎました。お母さんクマとお父さんクマも、こぐまの無事を心から喜んでくれました。
森の病院での経験は、こぐまにとって初めての寂しさや不安を伴うものでしたが、同時に、家族の温かさ、友達との絆、そして、何よりも健康であることの大切さを教えてくれました。こぐまは、メイの手を握りしめ、新しい冬の始まりを、家族と共に温かい巣穴で迎えるのでした。
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