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限定復刻!少女レイ
「っ!」
ガバッ
「もう...朝か。」
時計を見ると、午前の7時半だ。
「やばっ!急がなきゃ!」
彼女はカリン。
一人暮らしをしている高校2年生だ。
「行ってきまーす!」
そういい、彼女が家の扉を閉めた。
---
学校にて。
「おはよーん!」
レイが話しかけてくる。
レイは私の大親友。いつも仲良しだ。
「おはよう。」
「てかさー、聞いて!大ニュース!」
「えっ?な、何?」
「あの3年の藤島君が、付き合ったんだって!」
「えっ!!!????」
私は驚いた。普段モテ散らかしてるあの藤島君が、何とプロポーズしてきた女の子をokしたらしい。
あの藤島君が、okした子って、どんな女の子なんだろう。
「で、しかもしかもっ!」
まだあるのか...と私は思った。
「この前クラスの男子が、休日にその女の子と藤島君がデートしてるとこ見たんだって!」
レイはキャーキャー言いながら話している。
「へぇー!そうなんだ!」
その時、私は思いついた。
「ねぇ、レイ。その女の子とやらに、今度会いに行ってみない?」
「えっ、、、」
何故かレイの顔が曇った。
「あっ。い、いいよ!」
...無理に言わせてしまっただろうか。
「いや、別に私は...」
そう言おうとしたところで、
キーンコーンカーンコーン…
「んじゃ!また休み時間に!」
あっ、、、言いたかったのに。
まぁ、休み時間に言おうかな。
---
そしてお昼休み。
レイと話でもしながらお弁当を食べようかと思うと。
「あのぅ、カリンさぁん」
甘いような声が聞こえてきた。
「何か用ですか?」
振り向くと、とてもかわいい女の子が立っていた。
...身長的には先輩の方かな。
「今ぁ、レイさんはいますかぁ?」
と言ってきた。
何でレイを?と思っていると、
「すこぉーしだけ、お話がしたいのですがぁ。」
「...あ、レ、レイは今教室にいるはずだから、呼んできますね。」
「はぁーい!ありがとうございますぅ!」
相変わらず甘い声だ。
まぁ、そんなことはどうでもいいけど。
「レイー!先輩が呼んでるよ!」
「?はぁい!今行くね!」
そういい、先輩の女の子の前に来ると、
「あっ、お昼、先、食べてて。」
「えっ、何で?」
「いいからっ!」
えー、、、
「わ、分かったよ」
今日はぼっち弁かぁ、
そう思いながらも、私は教室を後にした。
---
キーンコーンカーンコーン…
5時間目が終わり。
私はレイのいる席に歩み寄った。
「レイっ!さっきはあの3年の人とと何話してたの?」
そう言うと、
「...カリン。気にしなくていいよ。世間話だったから。」
って言った。
「ほんとに?」
世間話もおかしいだろっと思っていると、
「うん。本当だよ。」
「…そう、レイ、何かあったらすぐに私に相談してね。」
「分かった。ありがとう、カリン。」
そういい、レイは席を離れていった。
---
帰りのホームルームが終わり、
私は家に帰ろうとしたところで、見てしまった。
え、、、あそこにいるのは、、、
レイッ?!!!!!!!!!?
なんでっ
「ごめんなさいぃ!!!」
あれは、、さっきの先輩っ?!
レ、レイは何で先輩の事、、、
ベチンッ!
鈍い音が放課後の学校に響き渡る。
だがそこには私とあとレイと先輩しかいないので、先生にさえも聞こえていない。
「レイ...!何してっ!!はっ...」
一瞬息が止まった。
つい口が動いてしまった。
当然、それはレイの耳にも、先輩の耳にも入っていた。
「あっ、、、」
「......カリン?何でそこにいるの?」
「いやっ、、そのっ」
「カ、カリン...さぁん......」
先輩とレイが言った。
「カっカリンっ!こ、これは違うくて、、、」
何が違うのよ。と、私は突っ込んだ。
まぁいい。問題はレイ。
「まぁいい、なんで、レイは先輩に何でそんなことしたの?」
「っ............!!」
「ゆ、許せなかったからよっ!」
「?」
「私はッ!あの人のために一生懸命アプローチして!そのためにバレンタインデーもっ!一から手作りでっ!作ったのにっ!しかもっ!ずっと入学の時から!一生懸命!やってきたのに!私はっ...私はっ!」
...知らなかった。
レイが、藤島君のこと、好きだなんて。
そして、入学した時から、ずっと追いかけてたって。
ずっと、幼稚園から一緒だった私でさえ、気が付かなかった。
そして、私はショックだった。
先輩にそんなことする人だった。って、それもあるけど。
ずっと、ずっと一緒だったのに、気が付かなかった。
いや、気づけなかった。
もし、気づいていたら。
応援できたかもしれない。
一緒に悲しめたかもしれない。
恋バナだって、聞けたかもしれない。
はっ、、
気が付くと、目の前に立っていたレイから、頬を伝って流れる雫の存在に気付いた。
「...レイ、それに先輩、ごめんなさい。」
私は静かに言った。
その声が、もうすぐ夕日を向かい入れようとする放課後に響いた。
「なんでカリンが謝って...」
そのあと、急にレイがはっとした顔で、言った。
「...ごめんなさい。先輩。藤島君があなたと付き合ったこと、とても、悔しくて。
だから、もうよかったんです。藤島君の事は。だから、、だから最後に、あなたの事、、殴っておきたくてっ、、」
「っ............。」
「ごめんなさい。最低で。」
「っ。レイ、、さん。あなたの気持ちはわかりました。確かに、私もその、“悔しい”気持ちはわかります。」
「...私が言うのもなんですけど、その、藤島君のほかにも、きっとあなたを救ってくれる英雄がいるはずです。」
「だから、大丈夫です。男なんて、星の数ほどいます!」
「っ…!!あ、ありがとうございます。私、最低なのに、どうしてっ、、、どうしてかまってくれるのですか?」
「それは、同じ経験はあるし、あなたの気持ちもわかるんですよ。
なのに、放っておくことだなんて、できないんです。」
そして、レイは涙を流しながら言った。
「......ありがとうございます。私、何で藤島君はあなたを選んだのか、わかった気がします。」
「…そうですか?こちらこそ、ありがとうございます。」
ちょうどその時、夕日が沈みかけていて、3人は急いで家に帰った。
---
...朝が来た。
そして私は、昨日の先輩の言った言葉を思い出した。
『ー私が言うのもなんですけど、その、藤島君のほかにも、きっとあなたを救ってくれる英雄がいるはずです。』
...確かに、そうなのかもしれない。
一人一人がもしかしたら、誰かを救う英雄なのかもしれない。
..................そうだといいな。
---
学校にて。
「おはよう!」
珍しく、私が最初に挨拶をした。
いつもは話しかけてくれるのに。
「おはよ!」
いつもどうりの笑顔。
...なーんだ。
「カリン。昨日はごめんなさい。」
「え、何で?」
「ずっと、一緒にいたのに。言えなくてごめんなさい。」
「私、本当は怖かったの。カリンに言ったら、もしかしたら、カリンも藤島君のこと好きになっちゃうかもって。ごめんなさい。カリンの事信じられなくて。」
「ううん。こちらこそ、気づいてあげられなくてごめんね。」
「謝らないで。あなたは悪くない。」
「ありがとう、、、」
その時、授業の合図のベルが鳴った。
---
その事件があった3か月後。
私たちは平凡に暮らしている。
だが、安全ではなかった。
私とレイの絆は。
「おはよ。」
「…はよ。」
こうなったのも先日のせいだ。
その日、私は心に決めた人がいた。
「よ、吉川君。」
私はその人ー吉川君にそう告げていた。
「つ、付き合ってください!」
ど、どうかな。。。
フられるかな。
「ぼくたち、気が合うね。」
「えっ」
「ぼくもカリンちゃんのこと好きだったんだ。」
「ありがとうございます!これからよろしくお願いします!」
私は泣きながら吉川さんに抱き着いた。
(誰かの気配を感じるな。。。)
そう思いつつ、私は感動に陥っていた。
そのあと、靴箱にて。
「ねーカリン。
「な、なに?」
そこに立っていたのはレイだった。
「レ、レイ、、、どうかしたの?」
「あんた、さっき吉川君に告白してたわよね?」
「う、うん。
よ、吉川君、付き合ってくれるって!私とっても嬉しかった。」
「アンタ。。。
あんたが良くてもッ!
あたしが良くないっ!」
「...は?」
「藤島くんが、先輩の手に渡って、私、悲しかったの。」
「....。」
「でね。私、とある人に相談したの。誰だと思う?」
「っ、、、ふ、藤島く」
「ンなわけないでしょ?あの私の事フッたクソやろうが?おとなしく私の相談聞くとでも?」
そういい、レイが私の肩をどついてきた。
「ちょっと?!何やってるのよ!」
「あははは、あははっはは!」
何を笑っているんだ、、この化け物は、、、
「じ、じゃあ、、、、」
「吉川君。わかるでしょ」
「な、何て言われたの?」
「『俺はレイの事、応援してるから!』だって。」
「へ、、、へぇ、そうなんだ…よかったじゃん。」
「は?」
え、、、何。。。
「良いワケないって言ってんの」
「え、何で、、、」
「まだ、分からない?」
「!」
心当たりは、あった。
「私が、、吉川君と、、、付き合ったから、、」
呆然と、淡々と。
「そうよ、!あなたが、、吉川君と付き合ったせいで、、、私、、私は、、」
その時、我慢できなくなって私は言った。
「私がどれだけ苦労したのかは、アンタなんかにはわからないでしょうね!
大体、告白なんて早い者勝ちよ!しかも、吉川君は私のこと好きって言ってくれたんだから!レイの事なんか吉川君は好きにならないっ!」
「ッ…!!!」
「あんたなんかに、、、
アンタのためを思って...言ったのに」
え?
「言って損だったわ。はぁ、もう絶交しましょう」
「ちょ、、、レイ!待ちなさい!」
私の掛け声はむなしく、レイは学校の門へと走っていった…
そんなことがあっても、少し挨拶は返してくれるレイの優しさには助かったことが何度もあった。
だけど、今は話す気にもなれない。
その優しさを上回るような、レイに取り付いた何かがある。
そう確信していた。
何がレイを動かすのか、、私には見当がつかない。
なんでだろう、、、
いや、違う。
私がレイの事を分かってあげられてなかったんだ。
藤島君の件と一緒で。
はぁ、なんで私、、、こんな。。。
今日は移動授業どうしようかな、友達と話すにもレイのほうに集まって...あれ?
私の、、、レイとおそろのキーホルダーがあった。
なんで机の中に...?
裏を見てみた。
なぜかって、本能だからだ。
すると、メッセージが直筆で描かれていた。
「吉川と、、別れろ?」
随分と露骨なメッセージだ。
それだけは絶対に嫌だった。
だから、私はずっと吉川さんと一緒にいよっと。
___そうして、レイが差し伸べてくれた仲直りのメッセージを、私は無視して、つかまなかったのだ。
、、、まるで居場所がなくなったみたい。
レイもそう思ってるのかな、とレイのほうを見ると、レイはほかの友達としゃべっていた。
その時、レイと目があった。
まるで...あざ笑うような眼をしていた。
それも一瞬で、すぐに私は目をそらした。
もう、レイと愛し合うことはできない。
それでも、恋というのは、狂う、恐ろしいものであった。
私も取り付かれてしまったのかもしれない。
レイと同じでーーーーーー。
そして、夏休みが始まった。
---
私は、いつもの通学路にある、青い踏切を見つめた。
後ろには入道雲がこちらに向かってくるのが見えて、巷では結構人気があるらしい。
何かの聖地…だとか。
なり響く警報機の音をかみしめて、私は今日もレイのことを考えていた。
「…。」
あれから一度も話していない。
夏休みに遊ぶ約束などしていなかったので、今年の夏休みには勉学に励むことにしようと思った時。
ふと、私は踏切の反対側に、一人の少女がいたことに気づいた。
__「レイ…」__
一瞬さん付けか苗字呼びにしようと思ったが、それほど今では気まずい関係なのである。
カンカンカンカンカンカン…
電車が過ぎないとやむことのない音が、沈黙を紛らわしていたのが幸いだった。
そろそろ電車が来るようだ。
ガタッゴトッ…
___あの前に人がいたら、どんなことになるのかな…
私は、そんなことを考えてしまった。
無論、そんなことをするわけがない。
何故、この考えが私の中に生まれたのかは、分からなかった。
---
ある日、ショッピングモールにいる時。
「あ」
私は、2人の少女を見つけてしまった。
一人は、レイ。
もう一人が…
「…。」
あの時の先輩だ。
いつも通りのツインテール。
いつの間にか仲直りをしたのだろう。
とても楽しそうにしている
「…。」
一瞬、レイがこちらを見て、ニヤッと笑った気がした。
「___はぁ。」
仕方がないので、私はその場を後にした。
---
キーンコーンカーンコーン…
夏休みが終わり、私はいつもの教室に入った。
すると___。
私の机に置いてあったのは、一輪の花が入った花瓶だった。
「誰が…」
まぁ、口ではそう言いながらも、誰が仕掛けたのかはうすうす気づいているのだが。
ふと、私の方を鋭く見る視線に気づいた。
その方を見ると___
案の定、レイがこちらを見て笑っていた。
何だよ、仲直りがしたいのか___?
そう思ったつかの間、
__「ざまぁw」__
という声がしたので、
あー、絶対これ吉川さんと別れてほしいんだな
と思った。
そんなに嫌ならもう…
--- 別れた方が、いいのかな ---
__でも、そんなの嫌だ…__
その時、授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
---
ふと思ったのが、最近、吉川さんとデート…というものをしていない事。
確か、最近吉川さんが冷たい態度をとってる気がする。
これにレイが関係していないといいんだけど…
私は、青く広がった空を見上げた。
「この2か月で、こんなに仲が変わるなんて___。」
人間って不思議だな、と思った。
「はぁ…」
空は、本当に青い。
それが本当にうっとおしくなる時も、それがとても嬉しいときがあった。
でも、今は憂鬱。
何回目かのため息をつき、私は立ち上がった。
「今日もぼっち弁か~、」
今日も、自分の机で自作の弁当を食べる。
いつもだったら、レイが私に駆け寄ってきて、一緒に食べよーって言ってきたな…
レイは、今日もあの先輩と食べるのかな。
そう思った時、
カタッ
と音がして、足に何かが転がってきた。
あ…
おそろいの、キーホルダーだ。
あの日は、蝉が鳴ってて、私の肩にセミが飛んできたな…
「懐かしいな…」
思い出した記憶と同時に、次は私に罪悪感が生まれた。
「私は一体、どうすればいいんだろ…」
今までずっと一緒にいたレイは、この事件一つで簡単に離れ離れになってしまった。
まさか、こんなことになるなんて思いもしなかった。
吉川さん…
レイ…
藤島さん…
一つ一つの考えが私の心を重くして、引っ掛ける。
「うああぁ…」
私は叫びそうになった。
いいのかな、と思ってしまった。
誰もいない、教室。
誰かに聞こえなきゃ、大丈夫だよね…
「うああぁああああああっ…!」
「嫌だよぉ…私、何も悪くないじゃない…!」
その瞬間。
「誰…?」
と、こちらを見つめてくる少女がいた。
「あ…」
私は恥ずかしさとたとえきれない感情で頭がいっぱいになった。
「そ、その…」
少女はこういった。
「私にできることはありませんか?」
どこかで聞いたことのある、声だった。
「え…」
「なんで…?」
「私は、あなたの願いをかなえることができる。」
「本当に…?」
その時、私は。
「…じゃあ……」
--- 「お願い。私を…助けてくれない?」 ---
そう言ってしまった。
「…はい。」
そう言って、彼女は私にてをさしのべてきた。
私は、その手を掴んだ。
--- もう、放さないようにって。 ---
---
初めは、レイの机に花瓶を置いたことから始まった。
「これなら、貴方と同じ苦しみを…与えられるよ。」
その方法は、
--- `虐めだった。` ---
最初は良かった。
少女が机に暴言を書いたり、レイに関しての悪い噂を流したり。
最初は嬉しかった。
嬉しいと思ってしまった。
ほしいものを何でも持っている、レイの苦しい表情が見れたから。
でも。
次第にはレイの周りから人が遠ざかっていくようになり、私は恐怖を覚えた。
「もういいよ。ありがとう。」
と、ある日私はその少女に言った。
「え?何言ってるのカリン。」
--- `「まだ終わりじゃないよ。」` ---
「え…いや…で、でも…流石に、可哀そうじゃない…?レイが。」
「…なんで?せっかく願いをかなえてあげようと思ったのに。」
「願い…?」
「言ったじゃん!カリン。『私を助けて』って。」
「わ、私はもう助かった!ありがとうってば!」
「助ける方法が、レイが私と同じぐらいに苦しむよう、『虐める』ことだったよね。」
「…!そうだったけど…。」
「…〝虐める〟には、終わりがないんだよ。」
「そ、そんな…」
--- 「終わらせてほしい?」 ---
「…うん!すぐに、終わらせて…お願い。」
「そっか。分かった。」
彼女は踵を返した。
その時。
__「終わらせない方が、身のためだってのに。」__
と、少女が呟いた気がした。
「…?」
私は、気のせいと思い、教室に戻った。
---
キーンコーンカーンコーン…
授業が終わった。
「さ、帰ろ…」
ふと、私はレイの方を見た。
「っ…!」
レイは、とても思いつめた顔をして、いかにも疲れ切っているように見えた。
「…そこまで効くなんて…」
改めて私はあの少女の恐ろしさを感じた。
帰り道、私はいつもの踏切で足を止めた。
警報機が鳴っているのに、線路の中に誰かいる。
「え…?」
その姿を見ると、私は息が止まりそうになった。
…レイだ。
「待って、レイ…?!」
カンカンカンカンカンカン…
警報機は変わらず音を刻む。
ガタ…ガタ…
と、電車が近づいてきた音がした。
「っ!」
私は、走り出した。
線路の中へ。
__止まれ__、止まれ、**止まれっ…!**
私は必死に願った。
ガタンゴトン…
ゴッ
鈍い音がした。
その瞬間。
「あ…」
千切れたキーホルダー。
赤く染まっている車体。
どうにも自分は、目の前で生きていたはずのレイに、目を向けることができなかった。
それは。
「あ…あ…」
鈍い音がする1秒前、
「な」
「ん」
「で」
と、レイの口が動かされていたからだ。
分かってしまった。
「……うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
私は、今までのことを思い出した。
「ごめん」
って言ってきたレイの手を掴まなかったこと。
虐めに加担して放課後準備をしていたこと。
悪い噂を広げ、レイを苦しめてきたこと。
自分が与えられた苦しみをはるかに超える物を与えてしまったこと。
全部、思い出してしまった。
青空が広がっている。
その景色をとても、とても、とても…
--- 醜い。 ---
と思った。
「ごめんなさい…っ」
と、屍の前でつぶやく。
その時。
「どう?」
と、いかにも、事故が起こっているというのに。
何事もなかったのような声で話しかけてくる少女がいた。
「お前…っ」
その正体は。
「あれぇ?私は先輩ですよぉ?」
「っ…」
《《いつも》》の、先輩だった。
「カリンさぁん?」
最初から、気づいておくべきだった。
「…」
「どうですか…」
--- 「これが、あなたがやった事の重大さですよ。」 ---
全部、自分が起こした事だというのを。
ガクッ
私は、膝から崩れ落ちた。
「…」
嗚呼。
この世界に救いがあるなら。
私はそこに飛び込みたい。
さようなら。