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collaboration.18
異能空間に転移するなり、治療が始まった。
殆どの人が無傷の状態で集まっていたが、唯一姿が見えないのは──。
No side
桜月「あれ、太宰さんがいない?」
敦「人間失格のせいで与謝野|女医《せんせい》じゃ治せないから大きな病院に行ってるよ」
中也「……終わったのか」
桜月「あ、中也」
中也「怪我してなさそうだな」
桜月「うん」
中也「……手前は無事で良かった、桜月」
え、と桜月は瞠目する。
桜月「名前! やっと呼んでくれた!」
中也「……うるせぇ」
桜月「あははっ、顔真っ赤だよ~」
中也「赤くねぇ!」
ボス「うわ、リア充うぜぇ……」
中也「誰がリア充だコラ」
ボスに掴み掛かろうとする中也。
それを見て笑う桜月の肩が不意に叩かれる。
桜月「ふにゅ」
振り返ろうとすると、桜月の頬にその人物の指が当たる。
中也「心配かけたな。ルイスさんから色々聞いたが──」
桜月「中也ぁ!」
中也「ちょ、泣くことねぇだろ!?」
桜月「だって、私、中也が死なないか、ずっと不安で、」
号泣する桜月の頭を優しく撫でる中也。
ちょっと待って、どっちも中也でややこしくなってない?
ボス「せっかくの再会なのに邪魔すんなよ」
いや、こっちに話しかけないでくれるかな。
ボス「うるさい黙れ」
ルイスside
与謝野「一応、治療は終わったよ」
ルイス「……ありがとう」
僕は感謝を伝えて、ベットの近くに椅子を持ってくる。
全部終わった、よね。
治療が終わってすぐに目覚められる状態じゃないのは判っている。
でも、もしものことを考えてしまう。
目覚めなかったら、せっかく解決したのに笑えない。
ルイス「君も結構自己犠牲するよね、#アリス#」
#アリス#が帽子屋と戦えないことは予想できていた。
でも、マッドハッターを救うためにわざと攻撃を受けるなんてね。
あれが最善策なのは、僕も判っていた。
短期決戦は難しく、気絶させれるほどの攻撃を与えられるとは限らない。
ルイス「仲間を守れなくて病んだから、同じ状況を作り上げる。そこまでは僕も思い付いたけど流石に実行には踏み出せなかったね」
全部が僕と魔人君の思い描いていたシナリオ通りに進んだわけではない。
この結末で、本当に良かったのかな。
マッドハッター「……ルイス」
ルイス「あ、服のサイズ大丈夫そうだね」
三月ウサギ「普通に疑問なんだけど、なんでワンピースあるのぉ?」
ルイス「万事屋で色々使ってたんだよ」
マッドハッターはシャツにデニム。
三月ウサギは薔薇の刺繍が施されたワンピースを着ていた。
僕は椅子を持ってきて、座るように促す。
三月ウサギはすぐに座ったけど、マッドハッターは躊躇っているように見えた。
はぁ、と僕はため息をつく。
ルイス「先に言っておくけど、今回の件で君に非はない。シヴァの協力者であった洗脳の異能者が君達の記憶を改ざんして、中也君を傷つけたり僕らと戦うように仕向けた」
マッドハッター「でも洗脳を防ぐことが出来た筈だ」
ルイス「可能性の話なら何とでもいうことが出来るよ」
言い方が、キツくなってしまう。
ルイス「僕が云えたことじゃないけど、起こったことはなかったことにはできない。過去に縛られて、後悔で足を止めるぐらいなら、がむしゃらでもいいから前へ進んだ方がいい」
三月ウサギ「本当にルイスが云えたことじゃないじゃん」
ルイス「……自分にも言い聞かせてることでもあるんだよ」
マッドハッター「ねぇ、ルイス」
僕はずっと、マッドハッターの方を見れていなかった。
自分がどれだけ酷いことを云ってしまうか、怖い。
でも、ちゃんと向き合わないといけない。
マッドハッター「ありがとう」
ルイス「──!」
マッドハッター「俺、アンタを追い越すぐらい頑張るから覚悟してろよ」
ルイス「……じゃあ、僕も頑張らないとね」
三月ウサギ「二人とも仲良しに戻れて良かったぁ」
ニコニコと笑う三月ウサギ。
別に喧嘩してたわけじゃないんだけどな。
桜月「あ、ルイスさん見つけた!」
ルイス「どうかしたの?」
桜月「中也に|首領《ボス》から連絡が来て、太宰さんも問題ないそうです」
携帯を見ると、めっちゃ着信が来てた。
普通に通知切ってたから気づかなかったな。
まぁ、森さんだし良いや。
桜月「三月ウサギさん可愛い!」
三月ウサギ「ありがとぉ。あ、一応マッドハッターも自己紹介したらぁ?」
マッドハッター「え!?」
三月ウサギ「桜月ちゃん、友達になってくれるってぇ」
マッドハッター「いや、普通に迷惑じゃ……」
桜月「迷惑じゃありません! 私は泉桜月。好きなものは可愛いものと甘いものです!」
えぇ、とマッドハッターは僕に助けを求めてきた。
いやこっち向かれても困るよ。
君が仲良くしたいと思うなら返してあげればいい。
マッドハッター「僕はマッドハッター。好きなもの、は……」
三月ウサギ「何で照れてるの?」
マッドハッター「ちゃんと自己紹介する機会なんてないからだよ!」
ルイス「それで、好きなものは?」
マッドハッター「……紅茶です」
ぽつり、とマッドハッターは呟く。
桜月「良いですね!」
中也「あ、桜月こんなところにいたのか」
桜月「中也!」
中也「この世界の|首領《ボス》からの連絡伝えたら帰ってくるって云ってただろ」
色々と大変だったけど、あちらの中也君も大丈夫そうだな。
もしも電流を流すのを阻止できなかったら。
そう考えるだけで頭が痛くなってくる。
これだけ大掛かりなことやって作戦失敗、からの世界滅亡とか笑えないよ。
さて、そろそろ落ち着いてきたし後始末をしないとかな。
ルイス「安吾にはこっちから話を通しておく。まぁ、彼のことだから色々手を回してくれるとは思うけど……」
マッドハッター「大丈夫。覚悟は出来てるよ」
三月ウサギ「マッドハッターの言う通り! もし牢屋に入れられても私達は問題ない。だから、そんな悲しそうな顔しないで?」
ルイス「……うん」
もう一度会える。
僕はそう、信じて待つことにした。
ルイス「中也君、今回は巻き込んで申し訳なかった。僕に理解できるとは言わないが、大変だっただろう」
中也「謝らないでください! この世界へ来る異能に巻き込まれた俺の落ち度でもありますから」
桜月「中也、この世界に来たときのこと覚えてるの?」
中也「え、あぁ……。普通に歩いてたら足元に穴が開いて、気がついたら捕まってた」
桜月「……穴?」
まさか中也君がこの世界に来たときのことを覚えてたとは。
穴に落ちて別の場所に移動する異能。
もちろん桜月ちゃんは気づいてしまっただろう。
中也「おい桜月!?」
桜月ちゃんが走り出す。
行き先は、もちろん《《彼》》のところ。
中也「ルイスさん、もしかして例のことは……」
ルイス「……まだ伝えられてない」
三月ウサギ「例のことぉ?」
マッドハッター「シヴァの協力者についてだね」
うん、と僕は頷く。
シヴァには協力者が二人いた。
一人はマッドハッターと三月ウサギを洗脳した異能者。
そして、もう一人は中也君をこの世界に連れてきた転移の異能者。
その転移の異能者の名前はジョン・テニエル。
異能名は『|不思議の国の入口《welcome to the wonderland》』。
この世界のボスだ。
ルイス「……僕のミスだ」
三月ウサギ「ルイス、今すべきなのは|後悔《それ》じゃない。早く桜月ちゃんの元へ」
ボスside
ボス「……。」
カキン、と刃の交わる音が辺りに響き渡った。
小刀とナイフで、小さく火花が散る。
ボス「急に何だ」
桜月「……んで」
ボス「は?」
桜月「何で中也をこの世界に連れてきたの! 出会いは最悪だったけど、信用してたのに……!」
意味が判んねぇ。
俺は中原中也をこの世界に連れてきてない。
まさか、ちゃんと説明を聞かないで俺のところまで来たのか。
おい、ルイス・キャロル。
絶対に許さないからな。
ボス「……てか」
普通に泉桜月が強いんだが。
俺が倒されてから何があったらこんなに強くなるんだよ。
奇獣も知らないのいるし。
ボス「このままだと──」
桜月「謝っても、許さないから」
気がつけば蹴り飛ばされて床を転がる。
本当にこのままじゃ死にそうだな。
ゴホッ、と体の奥から上がってきた血が地面を赤く染めていく。
あー、頭もクラクラしてきた。
探偵社の女医に治療してもらったとは云え、精神的な疲れはまだ取れていない。
そんな状態で泉桜月の相手とか、無理に決まってんだろ。
ボス「……おい、少しは話を」
桜月「中也を傷つけた人の話を聞くつもりはない」
ボス「……こりゃダメか」
泉桜月は話を聞いてくれない。
でも、このまま殺されたら彼奴は後悔する。
--- |不思議の国の入口《welcome to the wonderland》 ---
逃げるのが得策。
そう思ったが、俺は何かに捕まれた。
桜月「奇獣『四神・朱雀』」
ボス「流石に無理か」
仕方ないから異能力を解除すると、目の前に泉桜月がいた。
小刀が迷うことなく俺へ向かってくる。
諦めるしかない。
色々あったことを考えたら、迷惑料にしては俺の命は安いかもしれないな。
今まで殺されていなかったことの方が奇跡だ。
ボス「……後悔はするなよ」
桜月「──!?」
一瞬、泉桜月の動きが止まった。
マッドハッター「異能力!」
遠くから声が聞こえてくる。
この声は、マッドハッターだろう。
泉桜月の動きでも止めたのかな。
ルイス「テニエル!」
そんなことを考えるぐらいには、余裕があると思っていた。
倒れた俺の腹部を、ルイス・キャロルが押さえている。
生暖かいものが床に広がっていく。
あぁ、そうだ。
俺、刺されたんだった。
それで立ってられなくて倒れた。
生暖かいものは、俺の血か。
これだけ出血してたら、助からない。
痛みを感じないほど、死に近づいてきている。
テニエル「……。」
泉桜月は後悔しないだろうか。
忠告はしたけど、俺の話なんて聞いてもらえるわけがない。
だから俺は刺されて、こんなことになってる。
まぁ、そんなこと、どうでもいいか、
第十八話。
ボスゥゥゥゥゥゥゥゥ!?
はい、ヤバいね。
いつも通りのナニコレ展開が続いております。
後書き恒例(?)の雑談に入りましょうか。
元英国軍組が好きなんだけど((
いや、自分の作ったキャラが好きって言うのもどうかと思う。
でもルイスとアリスとマッドハッターと三月ウサギ可愛くないですか???
強さ的には 泉桜月>テニエル なんですよね。
だから、どうやっても桜月ちゃんにボスは勝てない。
それを判っていながら戦うボスにウッ涙が…
最後に桜月ちゃんのこと心配してるのが個人的に一番オススメ。
軽く説明のコーナー。
ボスの本名は「ジョン・テニエル」です。
そしてシヴァに協力してた異能者も「ジョン・テニエル」です。
中也たちのように、彼もこの世界に二人います。
軽く説明のコーナー。其の弐。
マッドハッターが好きなものは紅茶。
何でもない日のパーティーから引っ張ってます。
因みに、ケーキを作るのが得意です((誰も聞いてない
ののはなさんの小説も絶対見てね。
それじゃ、また次回お会いしましょう!