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音のまま演じ切れ #2
**第二話 目撃、困惑、興味**
トイレを出て、小さく息を吐く。緊張の余り漏らしそうだったが、間に合った。何をとは言わないでおくが。
おれは教室に入ろうとして、不穏な空気に気づいた。反射的に隠れる。
「__なぁ、綾瀬さんとヤったんだろ?」
「……は?」
どうやら、高倉さんがチャラ男に絡まれているらしかった。
(うーわ、コイツ最低っすね。ドンマイっす、高倉さん)
とりあえず心の中で罵っておく。
「誰でもヤらせてくれるって噂じゃん」
チャラそうな男__以後モブAとしよう__の言葉に、高倉さんは目を見開いている。
「え、誰がそんなこと……」
「知らないけど、そうなんでしょ ねぇ頼むって!」
「……誰がそんな噂流してんですか?」
高倉さんにグッと胸ぐらを掴まれ、眉根を寄せるモブA。
「は? お前コレどういうつもり? やんの?」
「噂流してんの誰かって聞いてんだぜぇ……」
「__っ?!__」
突然現れた悪魔の様な男に、おれは息を呑む。
(えっ? た、高倉さん……? どーゆー状況?)
「モモちゃんはよぉ……そんなんじゃねぇんだわ。やめとけ、そーゆー噂流すの」
「オレじゃねぇって! わかったよ、わかったから放せって!」
凄む高倉さん(?)に怯んだのか、モブAは喚く。
すると、高倉さん(?)が高倉さんに戻った。
(あ、アイツはやっぱり高倉さんだったんすね。てか、人格変わってたくね? えっ、二重人格?)
高倉さんは咳き込むモブAに「ご、ごめんなさい!」と謝っている。
うん、さっきの大人しい高倉さんだ。
そんな彼を見て、おれは思わず呟いた。
「……彼、考察し甲斐がありそうっすね……!」
演劇好きとして、怪異好きとして、考察好きとして……興味が湧いてきたっす!
原作のシーンはあんまり出したくないんだよねぇ……。
やっぱり、原作は原作が一番じゃん? 基本的にさ。
おつみらーぁ。