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誰も知らないよ8
「ごめんなさい、やっぱやめときます…男性恐怖症が悪化しそうなので、」
彼女は軽い男性恐怖症になってしまっていたのである。イジメられていた訳ではないが、自意識過剰なのや陰口があったとの噂でなってしまった。
「ううん、いいよ。君の症状が悪化するよりしない方がいいでしょう。」
雨が降る中、彼女は泣く。いつも、笑顔も苦しさも全部全部隠して、人前では笑顔繕って。
「えらいね。ちゃんと生きてて。」
「でも…、ODしたくなるんです。でも固形の薬は飲めないし…。」
彼女は薬箱を開けては躊躇し、やっぱりやめよと部屋に戻る。
「死ねたらな。」
彼女はつぶやく。
「死ねたら?」
彼は聞き返す。
「うん。楽になれるよ。」
彼女は自分の死なんてものを特に考えはしなかった。
「他人の死は痛いけど、自分の死なんてさ。みんな喜ぶよ。」
彼女はいつの間にか敬語から解放されていた。
「僕は悲しむな。君が死んじゃったら。」
「そう…?こんなクズが死んでも?」
自分を過小評価しすぎ。彼女は親によく言われていた。
「君はクズじゃないよ。こんなに辛いのに、頑張って生きてる。」
彼はこんなに、と言いながら彼女の手首を持ち上げる。
彼女は黙り込む。自傷は辛くてやっているけど、何も自分は頑張ってない。辛いって思っちゃダメ。
そのような概念がもまた、彼女を狂わせるのだった。
「粉薬ください、大量に」
彼が持ち上げた手を大きく広げ、言った。
「そう言って僕があげると思う?」