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記憶
ジャバウォック公園には、すでに他のみんなが集まっていた
奏「…全員、揃ったみたいだね」
杏「今度はなんなの…」
彰人「そんな嫌そうな顔すんだったら来なきゃいいだろ」
杏「さ、逆らったら何されるか分かんないじゃん!」
彰人「…何されるのか、誰かに試してほしいもんだけどな」
志歩「は?なにそれ。いちいち嫌味っぽく言うのやめてくれない?」
彰人「っるせーな…」
志歩「あなただって、怖くてここに来たんでしょ?平気なフリするのやめなよ」
彰人「はぁっ!?」
みのり「な、仲間割れはよくないよっ…!」
彰人「あ…?仲間?」
彰人「いつから俺が、お前らの仲間になったんだよ」
冬弥「あ、彰人…?」
彰人「言っとくけどな…」
彰人「俺は殺れるぞ?」
穂波「え…っ?」
絵名「ちょっと…あんた、今なんて言ったの?」
彰人「聞こえなかったか?」
彰人「俺は殺れる…そう言ったんだよ」
や、殺れるって…本気じゃないよな…?
冗談…だよな?
奏「一旦落ち着こうよ…」
奏「私は言ったはずだよ。犠牲者は1人も出させない…」
奏「それは東雲さんも同じ。私はあなたを死なせない」
彰人「んだよそれ…綺麗事ばっか言いやがって…」
彰人「……チッ」
なんとか収まったみたいだな…
モノクマ「あのー…」
司「うわ!?」
モノクマ「なんか揉めてるみたいだったから、いつ出ればいいのか分からなくなっちゃって…」
モノクマ「中途半端なタイミングで出てきてしまいました!」
雫「あら?その格好は?」
モノクマ「レクリエーションタイムの為の衣装だよ」
愛莉「え…何するのよ?」
モノクマ「南国の島っぽく漫才をっ!」
まふゆ「南国…っぽいのかな?」
奏「…漫才って1人でもできるの…?」
モノクマ「無理なので…相方を用意してきました!」
モノミ「な、なんでちゅかこれ!」
一歌「そうだろうとは思ったけど…」
モノクマ「では早速、《《『お笑いモノクマ漫才ライブ』》》はじめるよー!」
モノミ「えっ?きいてないよー!」
モノクマ「どうも!モノクマでーす!」
モノミ「モ、モノミでーちゅ…」
モノクマ「2人揃って、ザ・モノクマーズでーす!」
モノクマ「では、早速ですが、ボクが得意の読心術を披露しちゃおうかな!」
モノミ「え、できるの!?」
モノクマ「試しにオマエの好物を当ててやるよ。えっとねぇ、オマエの好物は…」
モノミ「頑張って!うさぎと言ったらあれだよ!」
モノクマ「にん…」
モノミ「そうそう…」
モノクマ「げん!」
モノミ「食べないよ!人間なんて食べないよ!」
モノクマ「さてと、次はモノミの番だな。なんか一発ネタやれよ!」
モノミ「ふぇぇ!?そ、そんなのできないでちゅ!」
モノクマ「大丈夫だよ。心配するなって。ボクは笑いの神を降臨させる術を知ってるんだ」
モノクマ「というわけで、生きたまま血を抜かれるのと、死んだ後に血を抜かれるのはどっちがいいと思う?」
モノミ「何その2択!?なんでそんな残酷な質問させるの!?」
モノクマ「笑いの神を降臨させるためには、大量の血液が必要なんだよ」
モノミ「笑いの神なのに血を欲しがるんだ…」
モノミ「何を言われても血なんか抜かれませんよーだ!」
モノクマ「全く、モノミはすーぐ怖い顔するんだから」
モノクマ「オマエラも気をつけてくださいね。モノミって、本当は悪いやつだからね」
モノクマ「例えると、少年マンガの初期の敵くらいにね!」
モノミ「噛ませ犬じゃん!」
モノクマ「でも、モノミが悪いやつなのは、本当だよ?」
モノクマ「ここだけの話だけどね…」
モノクマ「モノミって、オマエラの記憶を勝手に奪っちゃったんだよ!」
モノミ「なんでやねん!」
モノミ「って、あれ…?」
モノクマ「ほら、オマエラってさ、どうやってこの島に来たのか誰も覚えてないでしょ?」
モノクマ「それはね、モノミがオマエラの記憶を奪ってしまったからなんだ!」
モノミ「きゅ、急に何を言い出すんでちゅか!?」
モノクマ「ちなみに…こいつが奪った記憶ってのはね、この島に来るまでの経緯とか陳腐なんもんじゃないよ」
モノクマ「なんと、オマエラが《《希望ヶ峰学園で過ごした数年間の記憶》》を丸ごとなのです!」
モノミ「ほわわっ!?」
モノクマ「ふぅ、思い切って言ったらすっきりした。やっぱり、記憶喪失ネタなんて時代遅れですよね!」
モノクマ「そんなネタを物語終盤まで引っ張るなんて、恥知らずな卑怯者のする事ですよねー」
モノミ「も、もうやめてくだちゃいって!」
モノクマ「うぷぷ…実は、オマエラは新入生なんかじゃないんだよ」
モノクマ「学園生活の記憶を丸ごとなくしたオマエラが、勝手にそう思い込んでるだけなんだ!」
モノミ「ほ、ほんとにいろいろとダメでちゅってー!」
モノクマ「キミとはやってられんわー!」
モノミ「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
モノミ「ツッコミが激しすぎまちゅー!!」
類「………………」
雫「………………」
こはね「………………」
司「………………」
司「…は?」
類「ど、どういうことだい…?」
モノクマ「どうだった?笑い取れてた?それとも笑いのレベルが高すぎた?」
奏「ねぇ…今の話はなに…?」
モノクマ「今の話って…」
モノクマ「あぁ、オマエラが学園生活の記憶を丸っと奪われた話?」
まるっと奪われた…?
学園生活の記憶を…まるっと?
何を…言ってるんだ…?
瑞希「あはは…そんなわけないじゃん…」
瑞希「だってボクは、希望ヶ峰学園に入学したばっかで…すぐにこの島に連れて来られたはずで…」
モノクマ「それは、オマエラがそう思い込んでるだけだよ」
モノクマ「モノミがオマエラの学園生活の記憶を消しちゃったせいでね…」
司「な、何を言ってるんだ!そんなわけないだろう!」
モノクマ「いやぁもう何年経ったのかね?家族や友人はどうなったのかね?向こうも心配してるかもね?」
絵名「そ、そんな馬鹿げた話信じるわけないでしょ!?」
杏「そうだよ!私が記憶喪失なんて…そんなのあり得ないし!」
えむ「も、もうキャパオーバーだよ…」
みのり「う、嘘だよね…?記憶喪失なんて…そんなの嘘だよね?」
モノクマ「ううん、嘘じゃないよ」
モノクマ「だって、もし嘘ならあれはなんだったのさ?」
モノクマ「希望ヶ峰学園に足を踏み入れた時に、オマエラ全員が経験した《《妙な目眩》》は…」
司「っな…!」
司「どうして…お前がそれを知っている…?」
モノクマ「うぷぷぷ…要はね、あそこが記憶の結合点だったわけですよ」
モノクマ「オマエラはあそこからの記憶がすっぽり抜け落ち、今に至るというわけです!」
司「なんだ…それ…」
頭の中が一気に空になっていく感覚
思考がうまく働かない。言葉がうまく出てこない。
呼吸だけが…自然と荒くなっていく
咲希「ほ、本当はあれから…すごく時間が経ってるって事…?」
寧々「そんな事あり得ないでしょ…!」
モノクマ「逆に…何であり得ないの?」
類「何でも何も…信じられるわけないだろう…?」
モノクマ「《《信じたくない》》だけでしょ?」
モノクマ「でも安心して!親切なボクが、オマエラの記憶を元に戻してあげるから!」
モノミ「ほえ!?」
モノクマ「ただし、それには交換条件があるんだよね…」
冬弥「まさか…」
モノクマ「うぷぷ、察しちゃった?」
モノクマ「そう!オマエラがコロシアイをすること!」
モノクマ「それがボクの提示する交換条件でーす!」
モノミ「ほわわ…!」
モノクマ「オマエラは知りたいんでしょ?奪われた《《学園生活の記憶》》を知りたいんでしょ?」
モノクマ「だったら殺しちゃいなヨ!ヘイユー、殺して記憶を取り戻しちゃいなヨ!」
彰人「て、適当なことばっか言ってんじゃねーぞ…!」
モノクマ「あらら?どうして怒っちゃうの?ボクは親切心で動機を与えてやったのに…」
モノクマ「だってオマエラったら、びびってなかなか殺せないでしょ?」
モノクマ「まぁそれも仕方ないか…」
モノクマ「人間なんて、子宮から出た途端に泣き喚く生まれついての臆病者だもんね」
モノクマ「だからボクがオマエラに与えてあげてるんだ。人を殺す免罪符となる動機をね!」
奏「いい加減にして…!」
奏「そんな妄想話で…私達が人を殺すわけないでしょ…?」
愛莉「そ、そもそも、記憶喪失の話なんて信じないんだから!」
モノクマ「けど、それ以上に信じられないのはお互いの方でしょ?」
まふゆ「どういうこと…?」
モノクマ「オマエラはお互いのことを何も知らない。だからこそ…」
モノクマ「《《裏切り者》》が紛れ込んでる事に、まるで気がつけないんでしょ?」
司「…は?」
モノクマ「ねぇ、どうしてオマエラは20人いるのかね?」
モノクマ「この島に来る予定だった希望ヶ峰学園の生徒は、19人だったはずなのに…」
モノクマ「そっか!きっとオマエラの中にボクも知らない《《裏切り者》》がいるからなんだ!」
モノクマ「なんちゃって!」
穂波「な、何言ってるの…?裏切り者…って…」
一歌「嘘だよ…嘘に決まってる…」
モノクマ「だからさぁ、どうして言い切れるのかって」
モノクマ「お互いのことを何も知らないくせに。お互いの本性を何も知らないくせに」
モノクマ「だから、誰かが殺しを企んでたとしても、オマエラがそれに気付くことは不可能なんだよ」
その言葉に、オレ達は押し黙ってしまった
誰でもいい…誰かに反論して欲しかった…
だが、誰もが口を噛んだまま、その場に立ち尽くしているだけだった
モノクマ「でもさ、もし本当に裏切り者がいるなら…それって酷い話だよね…」
モノクマ「仲間のふりしてオマエラを陥れようとするなんて、そんなヤツは殺されても仕方ないよね」
モノクマ「生き残りたければ、自分が殺される前に相手を殺さないとね…」
モノクマ「アーハッハッハッハ!!」
司「………………」
こはね「う、裏切り者がどうとかって…本当なのかな…?」
絵名「だ、誰なの!?さっさと名乗り出なさいよ!」
奏「やめて、絵名。裏切り者なんているはずないよ」
奏「あんな話…嘘に決まってる」
志歩「ねぇ、モノミ。あなただったら答えられるはずだよね?」
モノミ「ほえっ!?」
志歩「さっきのモノクマの言葉は本当なの?記憶喪失だの裏切り者だの…」
モノミ「え、えっと…」
モノミ「ミナサンに必要なのは《《未来》》だけでちゅ…だからミナサンは過去など振り返らずに…」
モノミ「未来だけを見据えて、せ、精一杯生きていきましょう!」
えむ「あ!逃げた!」
彰人「はぁ…記憶喪失とか裏切り者とか、まるっきりフィクションだろ…」
彰人「やってられっか…」
記憶喪失?学園生活の記憶を丸ごと?裏切り者?
全てが現実だと思えなかった。
けれど…それ以上にオレの胸に突き刺さったのは、さっきのモノクマの言葉だった…
《《お互いのことを何も知らないくせに》》
キーンコーン…カーンコーン…
モノクマ「えーと、希望ヶ峰学園修学旅行実行委員会が、お知らせします…」
モノクマ「ただいま、午後10時となりました」
モノクマ「ゆったりとおやすみくださいね…ぐっない!」
冬弥「…あの、これからどうしますか?」
奏「とりあえず…今日は解散した方がいい、かもね…」
奏「少し思考を落ち着かせた方がいいよ…」
冬弥「それも…そうですね」
奏「みんな、余計なことは考えないようにね」
奏「明日の朝…モノクマのアナウンスの後、レストランに集合しよう」
その後のことは正直あまり覚えていない。
気づいた時には…
オレはコテージのベッドに、項垂れるようにして座り込んでいた
1人の空間でじっとしていると、同時によくない思考が頭をよぎる…
裏切り者……それは、他の奴らとは違う存在?
例えば、いまだに自分の才能も思い出せていない奴…?
司「…………………」
司「全く…わからん…」
オレはベッドに倒れ込み、すぐ目を閉じた
---
朝、やってきたレストランには…すでに数人が集まっていたが…
遥「…………………」
穂波「……………」
えむ「………………………」
やはり、空気は最悪だった
すると、遅れてきた面々もレストランに集まってきて…
奏「…全員揃ったかな」
こはね「あれ…?東雲くんがまだ来てないよ?」
志歩「もう殺されてたりして…」
えむ「ひぇ!?つ、遂に死者が!?」
絵名「勝手に殺さないでよ!さっき外で会ったってば!」
絵名「…でも、今朝は欠席するって言ってたよ」
杏「はぁ?こんな時にまで?」
奏「ううん、大丈夫だよ。じゃあ…東雲さんには、誰か後で話を伝えておいて欲しいな」
司「話…とは、何の話だ?」
奏「えっと…今日の夜、パーティーを開く事にしたんだ」
は……?
瑞希「えぇ!?パーティー…!?」
奏「うん、朝まで一晩中のね」
みのり「あ、朝まで!?」
奏「欠席はだめだよ。全員…強制参加、だからね」
まふゆ「奏がパーティーを開くなんて…何かあったの?」
杏「そうだよ…パーティーなんてやってる場合じゃ…」
類「あ…まって。僕は賛成だよ」
寧々「え、類?」
類「こんな時だからこそ、僕達はお互いに親交を深め合うべきなんじゃないかな」
類「宵崎さんも、そう考えたんだろう?」
奏「…うん、そうだよ」
奏「とにかく、今夜は私達全員が1つの場所に固まっておく必要があるの」
咲希「まぁ、気晴らしは確かに必要だよね…」
えむ「それじゃあ、ぱーっとやろうよ!」
穂波「それじゃあ私も、何か手伝うことがあれば協力します!」
雫「けれど…パーティーをする場所はどうしましょうか…」
瑞希「このレストランじゃだめなの?」
奏「うーん…もう少し外からの干渉を受けないところがいいかな…」
奏「できれば、モノクマでも立ち入れない場所…閉ざされた空間がいいけど…」
冬弥「それじゃあロビーもだめですね…」
愛莉「誰かのコテージってわけにもいかないわよね…」
類「だったら…ホテルの離れにある、ロッジ風の『旧館』はどうかな?」
杏「え、あのボロボロの?」
類「うん。でも、頑張って掃除すれば綺麗になると思うんだ」
類「それに、閉ざされた空間なんて条件、あそこくらいしか当てはまらないんじゃないかな?」
絵名「でも、旧館への立ち入りはモノミが禁止してたはずでしょ?」
絵名「改築予定がどうとかって…」
モノミ「話は聞かせてもらいまちた!この耳で聞かせてもらいまちた!」
モノミ「ミナサンの結束を固める為なら、あちしも協力は惜しみません!」
モノミ「なので、旧館への立ち入りを許可しまちょーう!」
モノミ「あちしも協力するから、一緒にパーティーしまちょう!」
遥「あ…行っちゃったね」
穂波「では、旧館で決まり…ってことでいいんですよね?」
寧々「でも準備はどうするの?改築予定で放置されてたなら掃除もしないと…」
絵名「掃除かぁ…めんどくさいからやだなぁ…」
類「じゃあ、くじ引きで決めるのはどうだい?」
類「こんなこともあろうかと、作ってきたんだよね」
どんなことがあると思ったんだ…
わざわざこんなものを用意するとは…
類「赤い印がついた当たりの割り箸を引いた人が掃除当番でどうかな?」
司「まぁ、これなら公平だな」
咲希「じゃあ、恨みっこなしだよ!」