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雨女
わたしが起きたからだろう。ここでは今日も雨が降っている。今日はしとしと肌と髪を濡らすくらいの弱い雨。石で出来た鳥居、階段のところ。目が覚めるといつもそこに立っているのだ。
一歩一歩、降りていく。
歩く度にひんやりとした感触が裸足に伝う。裸足で街を歩くのは、意外と心地良い。家なんて概念を取ってつけていいものかは分からないけれど、この神社が、街が、わたしの家になるのかもしれない。
記憶なんてない。宛てなんてない。
だってわたしは雨だ。雨そのもの。泣いているなんて表現されることもあるわたしだけれど、当の本人は至って正常だ。
雨の強さを少しは変えることができるし、神社で祀られているのも、雨乞いによる豊穣の神様だった。神様だという自覚はないし、祀られていることも知らないから、もしかすると雨の精霊的な。妖怪的なものと言った方が近しいかも。
メモを兼ねた設定
雨の化身だと思い込んでいた少女だったが、本当は呪縛霊だった。霊は強まった記憶に関連して意識や自我が強くなるので、雨の日だけ強くなる。
事故に遭い死亡。あまりに突然だったため覚えていないことの方が多い。生前はうら若き少女だったが、今はやや無気力でダウナーな子となっている。