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花宴
優華に何も言えないまま1日が過ぎて、そのままゴールデウィークへと入っていった。
図書室が使えないので、安野市立図書館に行った。そういえば、好きな曲のライトノベルが数冊あったはずだ。借りに行こうと、ペダルを漕ぐ。目の前についているカゴだけでは重いし、バランスが崩れる。リュックを背負って、入れて帰ろう。
数分すれば着く。サドルから身体を離して、ヘルメットをカゴへ突っ込む。スマホカバーに図書館利用カードは挟まっている。もしカードがなくても、確か電話番号か何か言えば良かったはずだ。
うぃん、と自動ドアが開く。図書室の比じゃないほど膨大な本があるこの図書館で、のらりくらりとまわって面白そうなのを手に取るのでは、圧倒的に時間が足りない。図書館内のパソコンで、好きな曲のタイトルを打ち込む。ヒットした本の表紙をタップして、詳細情報へと向かう。なんとなくの居場所は掴んだものの、一応本に振り分けられている番号とか、色々載っているレシートのようなものを刷っておいた。
ライトノベルの棚に行って、番号を探す。見つけた。クリーム色の背表紙。そっと抜き取ると、隣にあった本が倒れた。
「あ、阿部さん」
「源さん…?」
ちゃんといつものお団子の源さんがいた。制服だった。なんとなく、部屋着のような感じで来たわたしが悪い感じがした。
「いいよね、その本」
「あ…知ってます?この原曲。わたし好きなんです」
「へぇ、どんな曲?」
「えーと、」
頑張ってイントロだけを口ずさむ。下手だ。歌詞をつけて歌ってみるも、あんまり上手いとは言えない。ボカロだし、仕方ないとは言えど。
「…テンテンって感じです」
「へぇ」
今のはただ反射的に言ったものだろう。
そういえば、優華は図書室以外にもいるんだ。当たり前だけれど。
「これ借りようと思って。源さんは?」
「わたし?」
カゴに入れた本を見せてくれた。知らない文庫本だった。ページが黄ばんでいる。余程古いものなのだろう。
「作者さんが好きなんですか?」
「そう」
例えば、と例に出てきたのは全然知らない人だった。有名よね、という付け足しを食らうと、やっぱり読書好きを名乗っちゃいけない感じがした。
「じゃあ、また学校で」
「はい」
別れを告げて、わたしはカウンターへと向かった。
ボカロが出てると余計平安ではなくなる