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織りなす魔法。3話
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朝の空気は澄んでいた。
太陽の光は木々の間をすり抜け、静かにいつもの広場を照らしている。
でも、カイの胸の奥は、その光とは裏腹に、重たく冷えていた。
ベンチに腰掛けた彼は、手元のスマホを何度もスクロールしては、また戻し、そして閉じる。
画面には、仲間たちのデータが並んでいた。
体調、魔力量の推移、昨日の行動記録。
「……異常なし。……のはず、なんだけどな」
呟いた声に、誰の返事も返ってこない。
それでも、カイは続けて画面を見つめた。
守りたいと思っていた。
誰よりも。
だからこそ、気づきたくなかった。自分が今、何をしているのかを。
「……これで、いいんだよな。俺は……ちゃんと、守れてるんだよな?」
その問いは誰にも届かず、広場の風に紛れて消えていった。
――そのとき。
「おはよ〜カイ。今日も早いな」
リアンの声が背後から響く。
気配を隠すようにしていたはずが、いつの間にか彼が立っていた。
カイは少しだけ肩を揺らし、スマホを素早くポケットにしまった。
「ああ、おはよう。ちょっと、眠れなくて」
「……また、気張りすぎてるんじゃねぇの? お前、そういうとこあるからさ」
リアンはあくびを噛み殺しながら、草の上にドカッと腰を下ろした。
何気ないその言葉に、カイは一瞬だけ言葉を失った。
気張りすぎてる——
本当に、そうかもしれなかった。
でも、気を緩めた瞬間に、すべてが崩れる気がしていた。
「……うん。でも、大丈夫。みんなが安心して過ごせるようにしておきたいだけだから」
リアンは「ふーん」とだけ答えて、空を見上げる。
その背中に、カイはほんの少しだけ視線を落とした。
(こんなふうに、当たり前みたいに笑ってる時間が……続いてほしいんだ)
そう思えば思うほど、カイの胸の中には、“もしも”が膨らんでいった。
もし、また誰かが傷ついたら。
もし、またあの時みたいに取り返しのつかないことが起きたら。
だから、手放せなかった。
情報を、記録を、そして——疑いを。
彼はポケットに手を入れたまま、無言で仲間たちの声を聞いていた。
そして、その静かな決意と、ひそやかな歪みは、
やがて大きな“すれ違い”となって、広がっていくことになる。
---
そして、6人のリーダーたちがいつものように集まった。
だけど、どこか空気が違う。いつもの賑やかな会話は影を潜め、みんな少し距離を測るように様子を伺っているようだった。
テオがいつも通りの明るさで口を開く。
「ねえ、最近みんなで集まるの久しぶりだよね。何か楽しい話題でもないかな?」
だが、その声に返ってくるのは小さなうなずきや、控えめな微笑みだけだった。
リアンはそんな沈黙を破ろうと、軽い冗談を飛ばす。
「おいおい、こんなに静かじゃ、俺のギャグも笑われないな!」
しかし、周囲からはかすかな笑い声が漏れるものの、彼の期待したほどの反応は返ってこなかった。
ゼインは静かに腕を組み、鋭い目で一人ひとりの表情を見つめていた。
誰もが何かを隠しているようで、その目は決して見逃さない。
テオがその視線に気づき、少しだけ声を落とした。
「みんな、何かあったのか?話したいことがあったら、いつでも言ってほしいんだ」
しかし、その言葉にも答えはなく、重たい沈黙が広がった。
広場の風がそっと吹き抜け、木々の葉が揺れる。けれど、誰もその自然の音に耳を傾けなかった。
みんなが静かに座っている中、カイだけが落ち着かない様子で辺りを見回していた。
何度もポケットの中の小さな端末に手を伸ばし、誰にも気づかれないように画面を確認する。
彼の瞳は時折、仲間たちの顔を鋭く見つめるが、すぐにそらしてしまう。
「カイ、大丈夫か?」
テオが静かに声をかけるが、カイは軽く首を振るだけだった。
その手は震え、指先が端末の画面をなぞる動きもぎこちない。
まるで何かを隠そうとしているかのようだった。
リアムが気づき、そっと近づいてきて言った。
「無理しないで。みんな、君のこと信じてるよ」
だが、カイはぎこちなく笑い、言葉を濁した。
「うん、ただ……ちょっと気になることがあってな」
その言葉に、周囲の空気はますます重くなった。
誰もが何か秘密を抱えていると感じていたが、それを口に出す勇気はなかった。
カイの不自然な振る舞いが、みんなの心にさらなる影を落としていた。
広場の片端にはドライが静かにベンチに座っていた。
いつも通りの冷静な表情を保っているが、その瞳はどこか遠くを見ているようだった。
カイはそんなドライの横顔をちらりと見て、ゆっくりと近づいた。
「……ドライ」
ドライは顔を上げ、カイと視線が合う。
しかし、その目には言葉にならないものが漂っていた。
二人の間に、一瞬だけ重い沈黙が流れる。
「お前、最近何かあったのか?」カイが少しだけ声を落として尋ねる。
ドライはしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと息を吐いた。
「別に。お前が勝手に気にしてるだけだと思うよ。」
その言葉は冷たくも聞こえたが、どこか脆さも感じさせた。
カイはその言葉の裏に隠れたものを見逃さず、さらに踏み込もうとした。
「俺たち、もう隠し事はやめようって決めたんじゃなかったか?」
ドライは視線をそらし、木の葉が風に揺れる音だけが静かに響いた。
「……そうだな」
短い返事の中に、かすかな共感と、そしてまだ言えない何かが隠れていた。
その微妙な間が、二人の間に張りつめた空気を少しだけ柔らげた。
けれど、その背後にはまだ、解けない影が潜んでいることを二人は知っていた。
おつはる〜!ちょっと変なところで切っちゃった☆ ごめんね。 スクロールお疲れ様!2351文字