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Collaboration.10
ルイスside
ふわぁ、と思わず欠伸が溢れた。
どれぐらい眠ってたんだろ。
とりあえず拘束はされていない。
「……強いなぁ」
フランシスとテニエルの姿だけ見えない。
あとは桜月ちゃんが普通に戦っている。
10代半ばの女の子ってあんなに強いものだっけ。
あ、僕やロリーナが戦場にいたのとそう変わらない年齢か。
「私達が眠っている間に拘束しておけばよかったのに」
「どうせ戦神も花姫も容易く抜け出してしまうわ、なら無駄手間を増やすのは得策じゃないと判断したのよ」
「ハリエット、もう私達で花姫を殺してしまいましょうよ、」
「エミリー、それはダメだよ…僕が異能で課した条件を達成できなければイライザが戻ってこれない!」
条件って、やっぱり“僕が桜月ちゃんを殺す”だよね。
本当に最悪な条件にしてくれてありがとう。
「私はイライザが戻ってきて欲しくないわけじゃないし、貴方達兄弟の幸せを邪魔したいわけでもない、」
「ならそこを動かないで頂戴よ」
「ハリエット、私にそんな事はできない__貴方達はこの横浜を、私の仲間を害そうとしているのだから」
「でもそうしなければイライザが…!」
「エミリー、貴方達の失敗の原因はね、私達__ルイスさんと私の大切なものを、人を、場所を…」
--- 「標的にしてしまったこと」 ---
「…ですよね、ルイスさん」
「あれ、気付かれてたんだ」
よいしょ、と傍観者は辞める。
「もうっ、起きてたなら早く云ってくださいよー!」
「ごめんね、君の台詞のいいところだったから邪魔しちゃうかなぁって」
「っフランシス...!もっと僕の条件をきつくしておけばよかったね、すまない…僕のミスだ」
「いいや、お前の所為じゃない…俺がしくじったんだ、ジョージ」
あ、フランシス帰ってきてる。
ついでにテニエルも。
「…なあ、ジョージ」
「テニエル?」
「…俺さ」
無表情だった彼は、息を吐く。
そして思いっきり目を見開いた。
瞳に宿る光に、僕の表情は優しくなっていたことだろう。
あぁ、信じたことは間違いじゃなかった。
「やっぱお前らのやろうとしてる事は間違ってると思うんだわ」
「テニエル...!」
「私達を舐め腐った態度をとっている何処ぞの|外国《とつくに》の客人がいるのは此処かい?」
何かの気配を感じて振り返ると、見慣れた人達がいた。
「探偵社の皆!」
「ボスが転移してくれたんだ…っ!」
希望と安堵に、桜月ちゃんの表情が綻ぶ。
ま、僕も緊張が和らいでいたけど。
「…っもぉ__!!折角イライザに逢えるからここまで来たのに!!どうしてこんなに邪魔されなくちゃならないの!?」
「君達は僕らを怒らせたんだ、…相応の返礼を受け取ってよ」
そんな言葉と同時に、また新たな人影が空から降ってくる。
「...え?」
「ちょ、テニエルやりすぎ!」
思わず叫ぶ。
いや、これは僕がこの世界に来るよりも大変なことだ。
「よっ、久しぶりだな! 何か分からないけど穴に飛び込んでみたら、ルイスがいるなんて──」
「どうもコナンさん変わりなさそうで何よりです。──じゃなくて、テニエル!? 君は莫迦なのか、いや莫迦だわやっぱりお前!!!」
「やりすぎぐらいが丁度いいだろ」
コナンさんは異能部隊の中でも特に危険視されてて、無断外出は始末書どころじゃ済まないっていうのに。
まだシャルルさんは良いとして、ヴィルヘルムさんの視線が痛い。
「えっと、ルイスさんのお知り合いですか……?」
「うん、僕達の大先輩だよ」
「その声──!」
「ひっさしぶり~! ねぇねぇ、桜月ちゃん元気にしてたぁ?」
いつの間にかアーサーとエマもいるし。
そして|異世界《うち》の人を|異世界《こっち》に呼ぶな。
この莫迦テニエル。
「莫迦莫迦」と言いすぎなルイスくんは好きですか?