公開中
奇病患者が送る一ヶ月 四日目
皆優しい
皆愛ちてる()
[シエル視点]
「それで、どうして女子ばっかなの?」
私がどれだけ考えても答えのかけらも浮かんでこないこの疑問を口にすると、
「どうしてって…、女子会するからに決まってるでしょ‼」
梓はまるで分からない方が不思議といった口ぶりで言う。
私一度も女子会するなんて聞いてないんだけど?
「希乃さんと、月美さん、駑倉さんには断られたんでしたっけ?」
私の苦笑いを見向きもせずに綝さんがつまらなさそうに言った。
「うん、私とあずで誘ったんだけど無理だった。ざーんねん。」
冬華が続いて返事をする。
あぁ…、まぁ確かにあの三人なら断りそうだね…。
「さっき、お母さんがわたしのレシピでクッキーを焼いてくれたから遠慮せず食べてね!」
佐々木さんは机の上に置いてあるクッキーを指差しながら、楽しそうに言う。
そういうなら頂こうかな…。この人のって全部美味しいし…。
「あ、じゃあ私お茶淹れてくるねー!」
冬華さんもトテトテと言う足音をたてながら部屋の奥まで行く。
そんなに長居したら怒られるかもしんないんだけど…。
にしても女子会ねぇ…、意外とやった事ないな…。
…うん、まぁたまにはいいか。
仕事サボってるけど、大丈夫でしょ。
多分、ね!
---
[灰山視点]
「あ゛ぁ゛ぁ゛…、疲れたっす…。」
パソコンを打つ音が部屋に響く中、
菱沼はポツリと呟き、蓄積している疲労を顔に浮かべていた。
昨日は残業も何も無かったからよく眠れたと思うんだけどなぁ…。
昨夜は眠れなかったんだろうか?
「まだ始まったばかりだろー、頑張れって!」
そんなことは微塵も声にも顔にも出さずに、
俺は良かれと思い彼の肩を叩き、励ましてやる。
「ところでアイツはどこっすか?朝から見ないんすけど…。」
俺の励ましには触れもせず、鬼のような目をして俺を睨んできた。
「あー…シエルは今、女子会でもしてるんじゃねぇの?」
「女子会っすかぁ?なんで急に…。」
菱沼が俺の目を覗き込む。
「それは流石に知らねぇけど、
綝が女子会で地下室に行ってくるって言ってたからさぁ。」
「あぁ、それなら翠ちゃんも、さっき梓くんと冬華くんに誘われていたよ。」
俺が自分のオフィスチェアを座りながらぐるぐると回転させながら言うと、
黶伊もニッと笑いながら続けて言う。
「そうなんすか…、………………。」
菱沼は神経質らしく眉まゆをきらめかす。
「心配なのか?」
「いや…、人目につかない場所にいるって思うと、何かあったらどうしようって思ったんすよ。
せめて目が届く範囲にいてくれたら安心出来るんすけどねぇー…。」
そういうの、心配してるって言うんだよな…。
「…さて…、すまねぇが、俺今から用事あるんだ。」
俺は自分の腕時計を確認してから席を立つ。
「え、今からっすか?」
「うん。絶対行かないといけねぇ。」
「ちょ、誰の所に行くんすか!あと何時に帰って来るかも言うっす!」
「俺は子供かよ…。知り合いの所に行くだけ。
十時までには帰るつもりだけど、俺の分の晩飯はいいよ。」
流石の俺も、菱沼の過保護さに苦笑いをしてしまう。
「出来るだけ早く帰って来るっすよ!夜は危ないんすから!」
「だから俺は子供かよッ!俺、お前よりも年上なんだけど⁉」
「ふふ、気を付けて。」
黶伊はいつも通りの微笑みを浮かべてくれる。
俺も彼に微笑みを返し、頷く。
「あ、あとこれ。やるよ。」
俺は菱沼の手に、この間買ったフエラムネを渡すと、
「えっ⁉良いんすか⁉」
菱沼は食い気味でフエラムネを受け取り、顔一面に満悦らしい笑みを浮かべる。
さっきの過保護は一体何処へ行ったのやら…。これもまた苦笑してしまう。
お前のフエラムネ好きは逆に病気なんじゃねぇか…?
「……君も策士だねぇ…。」
菱沼の姿を見ながら黶伊が
俺の心まで覗き見るような目で、乾いた笑顔を見せた。
「んー?何の事だー?」
「ラムネはブドウ糖を多く含んでいる。
ブドウ糖が疲労の回復、集中力の向上、眠気覚ましにも使える事は有名だ。
要するに『俺の分の仕事も任せた』って言う事を遠回しに言ってるのでは?」
黶伊にまるで辞書のような説明をされ、
「ハッハッハ、まさかー。そんなんじゃねぇって。」
俺は冗談を聞くように返事をする。
「…本当は?」
「正解ッッッ‼んじゃ、頑張って!」
黶伊は俺の返事を聞くなり、少し困ったように笑うが、
俺は精一杯の笑顔で医務室を出た。
「ハッ!なんで灰山サンがジブンの好物知ってるんすか⁉」
「……そもそも隠す気あったのかい?」
---
[シエル視点]
「…紫苑センセイ、今何してるかな…。」
他愛のない話をすると言う謎の女子会の最中、翠さんが静かに呟く。
「あら、わたし達に気を遣わずに戻ってもいいのよ?無理させちゃ悪いからね。」
「今なら多分センセイ達の医務室にいるだろうから、会いに行ってあげたら喜ぶんじゃない?」
私も佐々木さんの意見に賛同する。
どうせ、院長が仕事を真面目にやってる訳ないから、
あの二人が代わりに仕事をこなしてるんだろうな…。
もしも菱沼さん一人だったら私を呼びに来るだろうし…。
「えぇ、じゃあそうするわ。」
「おっけー、また一緒に話そうねー!」
彼女は梓さんの言葉に会釈で返事をし、足早に歩いて行った。
彼女も可愛い所あるじゃん。
院長がもうサボってるって考えて…、
今翠さんが紫苑さんのお迎えに行った…。
あの人の事だし一旦仕事を中断して翠さんを優先するだろうね。
……あ、じゃあ結局菱沼さんが一人になるのか。
こりゃあマズイ。
「わ、私ももう抜けるよ。良い息抜きになった。ありがとー。」
「はーい!どーいたしまして!バイバーイ!」
引き続き悪気の欠片もないような明るい笑顔で手を振ってくれる梓さんに、
私も手を振り返し、彼女の後を追うように歩いた。
なんとか、なんとか書けたお
短いけど許してちょ
にしてもよく頑張った自分
さぁそこの君も、自分を褒めろ((