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21:予感
私はもともと運動は得意な方ではあった。これはかなり心配されるだろうな、などと考えつつちまちま進む。
……暇だな。
ヒメさんは必死で走っているから話しかけることなんてできないし、ジョギングサボりは体育の先生に怒られる。この学校の教師は科目に関わらず怒ると怖い。
幸いなことに、遅くても走り切れたらそんなに機嫌は悪くならない。今はヒメさんが走り終わるのを待つだけだ。
……頑張れ。
「頑張ります……。」
今日の種目は走り幅跳び。もちろん大苦戦していた。逆に王族が走り幅跳びしてるなんて、私が勝手に考えているヒメさんの環境からはありえなさそうである。こういうファンタジー王族はそういうことしない。
「ぎゃっ」
ド派手に転んだ。私みたいな精神だけの状態だと、痛いっちゃ痛いけどいつもより体の感覚が弱い。ちなみに味もいつもより薄い。
「大丈夫!?」
ひぇっ。思ったよりひどい。私は血が苦手なのだ。いつもより感覚が鈍いからわからなかった。
「大丈夫です。このくらい慣れっこなので……。」
慣れてはいけない気がする。どうしたら慣れるんだ……って、この子の環境は絶対普通じゃないんだった。たぶんダークスマイルを浮かべているであろう。ご、ごめんなさい。
というかヒメさん、保健室行ってきな。早めに治療した方がいいよ。
「分かりました。といっても、どこにあるんですか?」
「あ、俺がついて行くよ。」
クラスのイケメン枠筆頭、瀧くんが付き添ってくれることになった。爽やかなオーラがこちらまで届く。こういうところまでイケメンだから人気あるんだね、瀧くんって。
「ありがとうございます。」
……顔、赤くなっていたりしないかしら?ヒメさん、声がちょっと上擦っていたような。
うんうん、青春だね!
「何を言っているんですか!?わ、わたしはそんなことありませんよ!」
「足、痛いよね。無理しなくていいからね。」
「ひゃ、ひゃい!」
初々しいね。こういうシチュエーションに憧れていたわけではないけど、見てて楽しい。微笑ましい。
……頑張れ。
「さっきと同じこと言わないでくださいよ!そ、それにそそ、そういうこと、ではないんですから!」
私は応援しているから!例え瀧くんが好きな人いたとしても、アピールしちゃえよ!私の体ではあるけど、まあうちのクラスで恋人にするなら瀧くんが1番良さそうだし、私は大丈夫!
「だから、違いますって!違います!」