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〈ラズリ・完結〉番外編3 タクの未来は
舞さんから、優里先輩が生きていたことを伝えられたのはあれから10年後。
「記憶はないんだが…優里がな、生きてた。」
それを聞いた僕はいてもたってもいられなくなり、病院へ走り出した。
走ってる最中も、記憶がないという言葉が胸に刺さったように,上手く走れなかった。
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「はあ…はあ…」
国立a病院。この病院は戦争で負傷した人達を匿っている。
中には、身元がわからなかったり名前すら覚えていない人がいた。
僕はその病院の所属の医者だ。まあ…離れの医者だが。
舞さんと僕は医者になると決めたのだが、一から勉強する舞さんと違い、親が元医者で医学が分かったのだ。
働ける年齢になると、すぐ資格をとり、エリートだったので医者になれたという話だ。我ながら自慢に思う。
「エメルさん、レイルさん!?」
病院の待合室には懐かしい2人の姿があった。
「あ、タクじゃないか。久しいな。」
「タク〜!元気にしてた〜?」
2人とも、変わってない。
少し笑みがこぼれたが、舞さんが来て、すぐさま真面目な顔になった。
「ついてこい…。」
2回に登り、ある病室の前へきた。
ガラガラ
「優里〜!見舞いの人兼、元仕事仲間が来たぞ!」
カーテン越しに、優里先輩の姿が見える。
「先輩!」
誰よりも先に走り出し、優里先輩のベットの前にたった。
「先輩…て、女子…!?」
絶句した。
そこにいたのは女性だった。
「おい、女子じゃねえよ、髪長えだけだよざっけんなタク。」
その瞬間、自分の中で、何か煌めくものが見えた。
「え、今、タクって…。」
「一部思い出したんだよ…。さっき階段から落ちた時にな…。」
涙が溢れ出してくる。
「ちょ、お前何泣いて…」
「せんぱああああああああああい死んだかと思ったじゃんかよおおおおおおお」
「おい、離れろよ…」
先輩に抱きついて大号泣してる僕を、舞さんがひっぺがした。
舞さんも、ちょっと涙が浮かんでた。
エメルさんも、レイルさんも。
いや、レイルさんは号泣してた。
「で、階段から落ちたって何…?」
舞さんの冷静な声が通ると、優里さんが固まった。
「また病室から出たの…?」
「…………」
無言の圧。
「すいませんでしたああ!」
いつか、みた光景。
「っぷ、ははははははは!」
「おい、笑い事じゃねえんだよタク!」
「ごめんごめん。ありがとう。」
優しい光が、僕らを照らしていた。
〈ラズリ・完〉