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極闇異変ノ章 弐
「誰なのかしらね。ゆめから取るのは気が引けるわ」
「由有が言うなんて…」
ゆめは夢の管理人、最近は昼間も眠るやつらがいるせいで、忙しいらしい。もちろん、ゆめだって夜勤などで眠らざるを得ないひとは百も承知。でも居眠りは完全にスルーしているだとか。
そんなゆめのお金__ただでさえ忙しくて給料もろくにないのに__をもらうのはあまりにもかわいそうだった。でも、タダ働きでは私だって困る。
「まあ、ムーンは気前よく出してくれるはずよ。どうせ、きれいな星空がみえないから困ってた、ありがとうって言われるわ」
「ああ、ムーンか。…あれ?ライトが…」
「光らない?ウソ!じゃ、このあたりに極闇異変の元凶が?」
もう、暗闇でなにも見えない…。
「許さない!!」
聞いたこともない声が、わたしたちの行く手を阻む。
「誰よ?話は聞くわ」
「…その声は、人間?なら、尚更…!」
いきなり、眩しい光が突き刺さる。
「おい、落ち着けって、攻撃しないって!わたしは魔法使い、ニンゲンじゃない!」
「…じゃ、聞いて」
人間に恨みを…?
「わたしは生前、とある能力を持っていた。ひかりを操る能力。その能力でわたしは人気者になった。でも、その噂を聞きつけた大人が、わたしを改造し始めた!わたしの能力のひみつは、目にあると知ったらしい。闇を操れるよう、闇を操る目を開発した。それを植え付けられて、わたしはこんなに醜い義眼の容姿となったのよ!もちろん、自殺したわ。ここには人間がいるらしいから、鬱憤晴らしとしたの!」
「…そう、か。ごめん、軽く見てて」
どうすればっ…?
「ごめん、こんなことするつもりはなかったの。でも、やっぱりもやっとして。あなた、魔法使いだよね?隣の人間もいい人そうだし、もう鬱憤晴らしはやめたわ。
改めて自己紹介するね。わたしは|極光 闇《きょっこう やみ》。生前の名前じゃないけど。闇を通して出会えたんだから、闇も好きになったな。よろしくね」
闇がなぎはらわれ、光が差し込む。
そこには大きなコートをきて、ボブヘアの少女。片方は金色の目を、もう片方は深い黒の目をもっていた。
「よろしくね、闇。さ、まずは宴。新人がきたら宴で祝うのが、わたしたちの、この世界のルール。ほら!」
久しぶりの光が、わたしたちを優しく照らしていた。その裏には、影という闇__それは、光を際立たせるためのもの__があった。