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第10話:怒りと裏切り
「楽園」の裏側を知った4人の心には、深い怒りと共に、自分たちが信じてきたものが偽りであったことへの大きな虚無感が広がっていた。しかし、その絶望を乗り越える力となったのは、彼らの間に育まれた「絆」だった。
「ファントムは私たちから全てを奪った」
雷牙が、怒りを滲ませた声で言う。
「家族も、居場所も、そして人間性までも」
「彼が提示した『楽園』は、私たちを繋ぎ止めるための餌だったのよ」
玲華が冷徹に分析する。
「私たちは、彼の支配から自由にならなきゃ」
仄は、白藍の手を握りしめた。
「私たちを愛してくれる人は、見かけによらないものだって、私たちが一番知ってる。白藍くん、雷牙、玲華、私にとってあなたたちが本物の家族、偽りの楽園なんていらない、あなたたちと一緒にいられれば」
白藍は、仄の言葉に深く頷く。
「ああ、僕も同じだ。僕たちの絆こそが、本当の幸せなんだ」
ファントムから次の任務の情報が届く。ターゲットは、彼らと同じくファントムの下で働くベテランの工作員だった。おそらく、彼らのように真実に気づき始めたか、あるいはファントムにとって邪魔になった人物だろう。
「彼もまた、私たちと同じように利用されていたのかもしれない」
白藍が呟く。
「もう、ファントムの駒にはならない」
雷牙が宣言する。
「今回の任務は遂行しない。むしろ、この男を保護して、ファントムの裏の顔を暴くための情報源にする」
4人の意志は固まった。彼らは、長年自分たちを支配してきたファントムへの反逆を決意したのだ。
--- 任務当日 ---
彼らはターゲットの男を拘束することに成功した。男は驚きと恐怖に震えていた。
「なぜだ!? お前たちもファントムの…」
「黙れ!」雷牙が男を睨みつける
「俺たちはもう、奴の指示には従わない。奴の真の目的を知っている」
男は、4人のただならぬ様子に気づき、静かに口を開いた。彼が語った真実は、彼らの予想をはるかに超えるものだった。
ファントムは、記憶操作技術を使って、裏社会の有力者を次々と排除し、自らの支配を強めていた。そして、彼らが信じていた「楽園」は、過去に彼らが育った孤児院を模倣したものであり、彼らのトラウマを刺激し、コントロールするための心理的な檻だったのだ。
「あの洋館は、あなたたちが育った孤児院の設計図を元に作られている。あなたたちの過去の記憶を呼び起こし、永遠にそこに戻りたいと思わせるための装置だった」
その言葉に、4人は衝撃を受けた。自分たちが「唯一の居場所」だと思っていた場所は、自分たちを操るための冷酷な罠だったのだ。
仄は、膝から崩れ落ちた。白藍が駆け寄り、彼女を抱きしめる。
「嘘よ……」
怒りと裏切りに満ちた4人は、ファントムへの反逆を誓う。彼らは、自分たちと同じように利用され、傷つけられた者たちを解放し、真の自由と希望を求めて戦うことを決意した。
「ファントム、覚悟しろ」
雷牙の目には、冷徹な殺意が宿っていた。
「お前が作った偽りの楽園を、俺たちが終わらせてやる」
🔚