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Chapter 1:斗霧芽衣の憂鬱
めんどくさいことは嫌いだ。
「あぁ…めんどくせぇ…」
私──|斗霧 芽衣《とぎり めい》は、学校の何故か寝心地がいい机にぼやきながら突っ伏す。
布団に入るとなかなか眠れないというのに学校の机だとすぐ寝られるのはどうしてだろう。
家に学校の机と先生が欲しい、そんなことを思いながら手元の紙と睨めっこする。
“委員会希望調査票”
正直言って委員会に興味などクソほどない。てか、頭ぶっ壊れてんのかって感じ。
中央委員、生活委員、体育委員、文化委員、保健委員、放送委員、図書委員、飼育委員…
芽衣「うぜぇ…」
去年は一番楽そうな図書委員にしたが、皆考えることは一緒のようで落選。
妥協として入った生活委員は朝の挨拶運動がとんでもなく面倒臭かった記憶がある。
ま、真面目にやってる奴なんて誰1人いないんだけど。
そもそもなぜ委員会が強制なのか。
|従姉妹《いとこ》が中学生の頃は係は強制だけど委員会と部活は強制じゃなかったと聞いた。
この学校も委員会を強制しない形にしてほしい。いっそのこと中央委員にいって生徒会立候補するか?
これを一週間後に必ず提出しろ、と私たちの担任|柴田 佐久郎《しばた さくろう》──通称クソ柴が言っていた。
ちなみにこのクソ柴というあだ名は、クラスメイトの男子が考案したものである。
柴犬みたいな可愛い顔のくせに態度が高圧的。間違いを指摘するとへそを曲げ、仕事をサボることもしばしば。
10年以上前だったら即クビだが、今は違う。
10年前、あの地震から全てが変わってしまった。
いや、正確にはあの地震の後にあった出来事のせいである。
柴田「っち…外が騒がしーな…おい!斗霧!窓みろ!」
このクソほど高圧的な態度にぶん殴ってしまいたくなったが、確かに騒がしい校門前が気になる。
言われるがままに窓を覗くと、校門前に女性がへたり込んでいた。
女性の前にたち塞がるのは、さまざまな生き物が混ざったような容姿をしている化け物──サティロス。
10年前の地震ののち、やっと復興の兆しが見えたと思ったらサティロスの集団発生。
おかげで政府はぐだぐだ。サティロスの影響も相まって町中に転がる死体や怪我人はもはや風景、働き手も少なくなりこの有様である。学校があるのも奇跡なくらいだ。
芽衣「サティロスが校門を塞いでます。」
柴田「そうか!じゃ帰れお前ら!めんどくせぇ、あーあ、魔法少女さんは何やってんだか。」
クソ柴が愚痴り始めたらキリがない。
周りの生徒もカバンを背負い、自主退却。こんな状態で委員会調査票とか、頭ぶっ壊れてんじゃねーのこれ作った教師。
カバンを引っ掴み護身用のナイフを腰に結えると、サティロスだらけの家路を諦め遠回りして進んだ。
めんどくさい。家までは最短距離で帰りたいのに。
今更ながら、本当に憂鬱。