公開中
ナンパから助けてくれたのは有名モデル……!?
夜の帳が下り、街の喧騒が少しずつ落ち着きを見せ始めた午後十時。
ネオンサインが色鮮やかに舗道を照らす中、佐江柳 紬は一人で歩道を進んでいた。
彼女にとってこの街は、
いつか自分が「キラキラに輝くアイドル」として立つステージへの第一歩を刻む場所であった。
しかし、その静かな足取りを遮るように、不快な声が耳元に届いた。
男性A「ねえ、君。一人? 良かったら一緒に飲みに行かない?」
紬「……いえ、結構です。急いでいるので。それに私まだ飲めないので」
紬は困惑しながらも丁寧に断り、歩みを早める。
しかし、男の執拗な追跡は止まるどころか、より強引なものへと変貌していった。
男性A「そんなこと言わずにさ。ちょっとだけならいいだろ? ほら、こっちに来いよ。」
紬「やめてください……離してください!」
恐怖で足がすくみ、視界が揺れる。
その時であった。
背後から低く、しかし凛とした声が響いた。
煌星「失礼。彼女を放してくれないか。」
振り返った先には、圧倒的な存在感を放つ一人の青年が立っていた。
整った顔立ち、モデル特有の洗練された立ち振る舞い。紬は瞬時にその顔を認識した。
それは、彼女が十四歳の頃からずっと追い続けてきた憧れの存在,
――トップモデルとして名を馳せる雪城 煌星であった。
男性A「……あ? なんだお前、関係ねえだろ。」
煌星「関係がある。この女性は私の知人だ。これ以上しつこく付きまとうなら、警察を呼ぶことになるぞ。」
煌星の放つ威圧感と、
モデルとしての圧倒的なオーラに気圧された男性Aは、毒づきながらも逃げるように去っていった。
紬は安堵のため息をつき、震える肩を抱いた。
紬「……ありがとうございます。本当に助かりました。」
煌星「いいえ。あまり夜道で一人で歩くのは危ないからね。怪我はないかい?」
煌星は優しく微笑みながら問いかけた。
その距離の近さに、紬の心臓は跳ね上がる。
彼女にとって彼は画面越しに見ていた神聖な存在であり、
今この瞬間、自分を救ってくれたヒーローであった。
紬「……あの、本当にありがとうございます。私、ずっと……あなたのファンなんです。」
煌星「えっ?」
驚きに目を見開く煌星に対し、紬は顔を赤らめながらも正直に告げた。
彼女の瞳には憧れと感謝の光が宿っていた。
紬「十四歳の時からずっと見ていました。あなたがモデルとして歩む姿を見て、私もいつか……キラキラに輝くアイドルになりたいって思ったんです。」
煌星「君が僕のファンだったなんて……驚いたな。そんなに熱心に見てくれていたのか。」
彼は少しだけ照れくさそうに笑い、紬をじっと見つめた。
その瞳には、彼女の純粋な夢に対する敬意が含まれているように見えた。
煌星「アイドルを目指しているんだね。君の目はとても真剣だ。……いい目標だと思うよ。」
紬「はい! でも、まだオーディションに落ち続けていて……自信を失いそうになることもあります。」
その言葉を聞いた煌星は、一歩踏み出し、彼女と視線を合わせた。
煌星「挫けないことだ。君の輝きは、君自身が決めるものだからね。……あ、そうだ。もしよければ、今度僕の仕事の現場を少しだけ見に来ないか?」
紬「えっ!? 私が、あなたの現場に……!?」
驚愕で固まる紬に対し、煌星はいたずらっぽく微笑んだ。
煌星「冗談じゃないよ。君のような熱心なファンなら、特別に案内してあげてもいいと思わないか?」
夜の街角、二人の間に流れる空気は、先ほどまでの緊張とは正反対の温かなものへと変わっていた。
紬にとっての憧れと、煌星にとっての新たな出会。
この一夜の出来事が、彼女の夢への道を大きく変えることになるとは、まだ誰も知る由はなかった。