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🫙🫂
『お家でお手軽コールドスリープ』そう長々しく謳い宣伝する番組は、瞬く間に増えている。
(…やけに近代的だな、よく見るやつか?)
調べてみたがそれはロマンチックなものではなく、簡単にいえば冷凍庫に小さく収まり眠るだけの生々しい行為だった。
(まぁ安いし、買っちゃうか)
数日後、専用の冷凍庫を買ってしばらく見惚れる。
(おしゃれだったら嬉しかったんだけど)
特に情報のない無秩序さで、表面からも内部の冷たさが伝わった。
(死人にはこれがお似合いですか、って。)
暗く冷たい意識の底で眠ろうとするあと一歩のところ、玄関先で慌ただしく物音が響いた。
「…私が世界を明るくしてみせるから」
薄い意識の向こう側、肩を揺らしながら彼女が叫んでいる。
「最期まで一緒に居てください」
このまま二人で眠ってしまえばなんて思いながらどうすることもできず、嫌になるほど花の匂いに包まれた彼女を抱きしめていた。