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ホワイトデー ver.2023
異世界研究所魔法研究開発棟魔法戦闘部の番外編になります。
良かったら「バレンタインデー ver.2023」もどうぞ!
今日はホワイトデー。
勿論俺──柊木奏斗もお返しを用意している�。
「紅葉ちゃん、喜んでくれるかな……」
魔法部隊の女性陣が毎年俺達に用意してくれて、今年はブラウニーをもらった。
誰が誰に渡すかはくじ引きらしく、紅葉ちゃんだった。
物凄い真顔だったけど、そんなに俺へ渡すの嫌だったのかな。
それは少し悲しいかも。
「……でも、最近の紅葉ちゃんは楽しそうなんだよな」
俺の前以外ではよく笑うようになった。
本部で生活するようになった頃はずっと無表情で、何を考えているかが分からなかった。
でも、一人になると必ず泣いていた。
まだ中学生なのに両親を亡くして、どれだけ傷ついたのだろうか。
物心つく前から親のいない俺には分からない。
「あ、風鈴。紅葉ちゃん知らない?」
「赤松さんなら、共同スペースで朝日さんと勉強をしてますよ」
感謝を伝え、俺は向かうことにした。
風鈴の言うとおり、紅葉ちゃん達はそこにいた。
「ハッピーホワイトデー!」
「うわっ、急に|大声出さないで《話し掛けないで》ください」
「多分心の声が出てるよ、紅葉」
嘘、と結衣ちゃんに指摘された紅葉ちゃんはシャーペンを落とした。
拾うついでに、俺は小さな包みを手渡す。
紅葉ちゃんは反応が薄いのに対して、結衣ちゃんは早く開けるように促す。
別に大したものじゃないから、人のいるところで開けなくても良いんだけどな。
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珍しく、柊木さんが困ったような顔をしている。
あまり他の人には見られたくないのかな。
包みはそこまで大きくないけど、意外と重さがある。
とりあえずお菓子とかじゃなさそうだな。
「ほら結衣、勉強を再開するよ」
「……!」
「勉強は嫌だ~」
柊木さんと一瞬目が合った。
どうも、とだけ言って勉強へ集中しようとする。
すると柊木さんは口パクで何かを伝えて微笑んだ。
(ありがとうなんて、言われることしてないんだけどな)
勉強が終わると、結衣は櫻井さんに呼ばれて仕事に行ってしまった。
一人になった私は、部屋に戻ることにする。
「……そういえば」
柊木さんから貰ったものが何か、まだ見ていなかったな。
袋を開けると、中には箱が入っていた。
本当に何が入っているんだろう。
予想のつかないまま開けてみると、そこには腕時計が入っていた。
「待って、これ値段いくら?」
絶対高いんだけど。
でも、値段を調べるのはあまり良くない気がする。
暫く葛藤して、とりあえず考えることは止めた。
買い物ついでに体を動かしてこよう。
どうせなら、と私は腕時計を着けるのだった。
腕時計
男性から女性へ「あなたと同じ時間を刻みたい」
女性から男性へ「あなたの時間を束縛したい」
親から子へ「お仕事・勉強を頑張ってね」