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GW企画 #5
文豪ストレイドッグスより『清少納言』を深掘り!
清side
大型連休ということもあってか、街は観光客で溢れていた。
まぁ、赤煉瓦倉庫とか横浜中華街とかあるからね。
魔都と呼ばれるこの横浜は、今日も平和だ。
「泥棒! 誰か捕まえて!」
ほら、平和でしょ。
銃声も爆発音も聞こえなければ、例え泥棒が出ても平和のうちに入る。
言っていることが頭おかしいと思った。
でも、それが事実。
この街の裏社会代表と云っても過言ではない『ポートマフィア』が目を光らせてるのに、よく泥棒なんてしようと思うよな。
普通に頭おかしいと思う。
「樋口、車を回せ」
「了解しました、芥川先輩!」
ポートマフィアも日中から活動してるんだな。
流石に喧嘩を売るような莫迦は居ないだろうから、上納金の回収とかかな。
そんなことを考えていると、前方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「エリスちゃーん!」
いちいち言わなくても判ることだろう。
そう、あの|幼女趣味《マフィア首領》だ。
こんなところで買い物していていい人じゃないだろうに。
流石にこんなところで見つかるのは嫌なので、路地裏へと向かうことにした。
「重力操作」
「……うん、どうして?」
なるべく声を抑えながら私は云う。
普通に意味が判らない。
今日、よくポートマフィアの人達に会うのは何故だろう。
占いが最下位だったからだろうか。
とりあえず、この先には行かないことにする。
やっぱり彼らには見つかりたくない。
「太宰さーん、川を流れないでくださーい!」
住宅街の方に移動した私が聞いたのは、そんな声だった。
近くの川を流れる人の足。
誰のものか確信は持てていなかったけど、間違いではなかったらしい。
「全く、相変わらずの自殺が趣味らしいね」
白髪の少年に引き上げられた彼と目があったような気がした。
多分気のせいではないけど、無視しておくことにしよう。
そのまま川辺を歩いて行くと、見たことのある二人組がいた。
話しかけられると面倒だから踵を返そうとすると、肩を叩かれる。
「やぁ! もしかしなくても僕達のこと避けようとしていたよね?」
「……そんなことありませんよ」
「嘘だね。そこら辺の一般人ならまだしも僕の目は誤魔化せないよ」
もう、ため息をつくことも出来ない。
とりあえず眉間に手を添えながら会話を続ける。
「お二人はどうしてここに?」
「駄菓子の買い出し中さ。いつものお店は臨時休業で、どうせならと少し遠くに来てみたけど並んでいるお菓子は少なかったし、近くのスーパーにでも行ったほうが何倍もマシだったね」
「あー、なるほど」
「貴君は何故こんなところに?」
ただの散歩、と答えた私はすぐにこの場から離れようとする。
しかし、服の裾を掴まれてしまった。
逃げようにも、私のやり方では危害を加えることになってしまう。
諦めて大人しくするしか無い。
「折角こっちの方まで来たから煎餅屋に行ったんだ。焼き立てを一枚買ったんだけど本当に美味しいね、あれ。社長に頼んでお土産用で買ったんだけど、良かったらお茶しに来ない?」
「乱歩、流石にそれは……」
「福沢諭吉の言う通り、折角のお誘いですが断らさせてもらいます。探偵社には彼がいるんでしょう?」
多分だけど、私は彼と会わない方がいい。
人を救う側になって、私とは生きる世界が違くなってしまったから。
「そっか。じゃあ太宰が休みの日に来なよ。美味しいお茶とお煎餅用意して待っておくから」
社長が、と付け足したことによって全部台無しになったことは言わないでおこう。
めちゃくちゃ半端。