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習作3
駄菓子屋から帰ったら、翳が今月の生活費を仕分けていた。使わなくなったおくすり手帳に、ガリガリとシャープペンで書きつけている。おれは上から覗きこんだ。
食費より雑費が多い。この雑費というのが酒や薬を指すのだとおれは知っている。翳は肉や魚より風邪薬を好んで摂取する人間だ。そのせいで万年皮と骨で、明日病院に行くことになっている。
またおれは、翳がカフェインとアルコールの中毒者であることも知っている。最近はコーヒーを飲んでいるところはあまり見ないけれど、以前は躍起になってブレスケアを噛んでいた。
「ただいま」
「ん」
くじの景品でもらった小さいゴムボールを翳の頭に載せながらおれが言うと、翳はわずかに首をかたむけて答えた。その拍子にゴムボールが床に落ちて、赤い塊がころころと転がる。
「いじわる」
「んー」
翳は生返事。
「ねえ翳」
「ん」
「今日の、…夕飯は?」
「んー…1000円」
「えー」
翳が突然金額を言い出すのは、「今日は作る気がないからそれで買ってきて」という意味だ。でもおれはそれが翳の料理よりおいしいと分かっていても、買ったご飯を食べる気にならない。大事なのは翳が作ったという事実。
「…じゃあ…トマトとゆで卵。あとコーンスープ。それでいい」
「うん」
トマトは洗って切るだけだし、コーンスープは多分インスタント。それでもおれは翳が用意するご飯が好きだ。