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極寒異変ノ章 壱
「あーあ、寒いわねぇ」
「何呑気に言ってるんだっ!!」
もう、紅はうるさくて困るなぁ。
「異変だって思わないの!?」
「だーかーらー、極闇異変の時も言ったじゃない。頼んでお金を払う人がいなきゃ、商売は成り立たないの。じゃああんたが払えばいいじゃない」
「ぐっ…!」
極闇異変、とは極光闇がもたらした異変だ。真っ暗闇に陥り、そのときはゆめが出てくれたが__
「まあムーンかサニーあたりが払ってくれるとは思うけど、カツアゲみたいなことはしたくないのよね」
「由有!??」
びくっと、した。鋭い声。
「異変なんだけど、解決してくれる!?」
「ぬあ」
ボブヘアにカーディガンを羽織った彼女・石崎ぬあだ。
「ここらしくないわね」
「金に糸目はつけないわ。明後日までに解決してくれたら、どんな金額でも払う」
「え、まじ!?」
「おい由有、がめついっ!」
どんな金額でも払うってことは、もう一生働かなくて済むってこと?
「ただし、時間がかかったら、木っ端微塵よ」
「いいわよ、やってやろうじゃない。成功払いでいいわよ、100万円」
「…あなたらしい額」
100万円!!
「紅、今日はわたしだけで解決する。だから、手を出さないで!」
「…はぁ」
ぬあは、花と植物を育てる程度の能力を持つのだ。
ただ、育てる植物はたいていぬあが調合した毒物で、特別調合のじょうろ水を浴びると生きて帰れないという…
っていうか、もうだいたい目安はついている。
ただ、それまでの道が長いんだけど。
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「何の用ですか?」
|唯也《ゆいなり》神社の28代目巫女の神野信だ。
「楓亜に会いたくて」
「ふぅん、そうなのね。楓亜に聞いてみるわ」
少しの沈黙。
「いいって。ただ、忙しいらしいわ」
「いいから!」
「はー。召喚」
信がお札を放り投げたところに、不思議な紋章がうかぶ。その紋章は、唯也神社の紋章と、信の巫女服のそでと胸元の模様と一致していた。
温度計を剣がわりのように突き刺しているセーラー服を着た楓亜。めんどくさそうに尋ねる。
「何?いま、季節の変わり目で神界は忙しいの!姉さんもいそがしそうだし…手短にお願い」
ふう、とため息をつく楓亜。
「あんたが、異変の元凶よね!?」
そう、びしっと言ってやった。