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魔王様の御戯れ
わぁ!たいへんだ!スランプにおそわれちゃった!じゃあマオウにかいしゅうしてもらうしかないね!
荒野に1人、魔族が立っている。その名は魔王———。
そこに1人の人間が来た。哀れな迷える子羊には魔王の生贄となる運命でしかない。
だが、魔王は考えた。戯れに遊ぼうかと。
「人の子よ、力が欲しいか?」
魔王は語り掛ける。
「ヒッ…ま…ま…魔王だぁァァァァァアァァアァァァァァアァァァ!!!!!!!!!!」
絶望の悲鳴が虚空に響いた。そうであろう。魔王とは破壊の化身。暴虐の権化。逃げることすらも只人には叶わない。腰を抜かして間抜けに錯乱するだけの|人間《オモチャ》をみて魔王は嗤った。なんと滑稽で哀れで弱いのだと。
「もう一度聞こう。人の子よ、力が欲しいか?」
意味もなく語り掛ける。否、恐怖を搾り取るために。
だが、もはや人間は壊れていた。恐怖が限界を突破したのだ。
「ふん…まったくこれだから軟弱な人間はつまらぬのよ…」
魔王はそう吐き捨てて去って行こうとした。
「だが、お礼はせねばなるまいか…」
そういって振り返る。人間からしたらとんだ迷惑であろう。もはや壊れているゆえ、何も思わないようだが。
そうして呪文が始まる。
『夢想せよ、天より降り注ぐ月影を——我は眠りし迷い人』
|玉輪魔法《ルナイオン》の始まりに共通する一節が踊る。
月が現れ暖かに月光が降り注ぐ。まるで、子守唄の如く。
『虚空より來て蠱惑する、その蜜なる光に希う』
怪しげなその光は妖艶な雰囲気を醸し出す。
夢と現実が混ざり合い始め——
『切に願うその意志は断罪の天秤を傾ける』
もはや、世界の法すらも骨抜きにする。
『微睡の中で行われる破壊と再生は』
ムーンフラワーの香りが匂う。
『現実に起こりても夢なのだ』
ついには夢が現実を乗っ取る。もはや逆らえるモノは居ない。
『ゆえに神からも見逃された』
そう、神だって逆らえぬのだ。
『金輪際逃れられないと思っていた』
それゆえ。
『その忌まわしき理を、捻じ曲げよ』
全ての枷を外す。
『摩訶不思議なるその光の、魅惑からは逃れられない』
月光が魂に絡みつく。
『蠱惑に囚われて、それでなお抜け出せるものは神ですら居ないのだ』
神とて逆らえぬ。ゆえに神も囚われる。
『囚われよ、そして我が傀儡となれ』
その傲慢なる願い、夢がしかと聞き届けよう。
『そして虚な瞳に暖かな月光を注ぐのだ』
人間は魔王の|人形《ゴーレム》となる。
『|精神干渉《A s t r a l》——|月光は蠱惑的に降り注ぐ《B r a i n w a s h i n g》』
「御主人様。御命令ヲ。」
友達にシルヴァリオシリーズってのを教えてもらったんでググってみたらなんか呪文集でてきたからオマージュした。「創生せよ、天に描いた星辰を——我らは煌めく流れ星」とかカッコ良すぎるだろ(この呪文作った人のそのセンスが羨ましい)