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序章
グラフィティ
登場人物
シャン 船長
エリ 貴族ハイリッヒ家の娘
ドム 副船長
アーミン 航海士
ビリー 船医
サリデーニ国の設定
大小17島で国が舞台のため(フィクションのため空想の国)漁師などの海の職業が盛んである。
海を漂い続けて生きていく海賊が比較的多い。海賊の中にも水難救助、荷物運び、海上の自警団を中心とした海賊もいる。(シャンたちはこっち側)
船の設定
帆船、大砲は積んでいない(船に載せられる大砲は開発途中)
シャンは夜風をうけながら甲板に立ち物思いふけていた。
船に乗り、海を漂い続けて17年。17年前の自分はこんな生活になることなんて思ってもいなかっただろう。後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「キャプテン、いい寝酒を飲もうと思うがどうする?」
声の主は幼馴染でもあり、この船の副船長でもあるドムだった。
「妙な胸騒ぎがする」
すると見張り台で見張りをしていたアーミンが突然叫んだ。
「船長!3時方向からボートが近づいる」
シャンとドムは移動したランプで灯していたが暗くてよく見えなかった。
「よく見えないが、中に人が乗っている」
ドムは目細めて見ていた。
「敵の可能性は低そうだな」
敵の可能性が低いため安心したが、このまま小さなボートで漂い続けると考える、気が引けるので助けることにした。
すると船室からビリーが出てきた。
「どうした?騒がしいぞ」
シャンはここまでのことを話した。
「そうか、俺の出番か」
「頼んだぞ」
ビリーは船をボートに近づけるように指示した。ビリーは船からはしごをかけボートに移動する準備を始めた。ボートに移ったとき思わず声を上げた。
「どうした」
近づいたお陰でボートの中がよく見えた、そこには、金色の髪の美しい少女がいた。
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一時間ほど前
国の中でも有数な貴族ハイリッヒ家は、国の中でも自然が美しいと言われるロゾー島で過ごしていた。ある者たちの襲来がくるまでは。
エリは17歳の誕生日を迎えた。3年後には、勝手に選ばれたどこかしらの貴族の嫁にならないといけない、貴族なんて金だけの身分だとつくづく思う。一般階級の娘なら、17歳で自立をして、自分のやりたい職につき、好きな男性と結婚する。自由で素晴らしいと心の底から思う。
少し前にこのことを信頼のできる、執事に相談したら。
「ほんとうの自由は、誰にも持っていません」
と言われた。
なによりこの生活の一番の不満は、自分のことなのに自分では何もできないことだ。
いつのことかは覚えていないが、少し前に街に散策したときのことだ。
自分と同じぐらいの娘達はみな、家事・炊事ができるのに、できない自分が恥ずかしくなった。
その日から練習しているが、母から何度も嫌な顔をされた。
自室の窓から見える海を眺め、いつか自由に生きたいと願っていた。
どこからなのだろうか、聞いたことのない音が聞こえた。
慌てて、部屋を出た。すると父と母が目の前にいた。
「どうしました?何があったの?」
すると母が悲しそうにエリを抱きしめこういった。
「生きなさい、辛いことがあっても、自ら命を落とすようなことをしないで」
「どうして?」
エリは疑問に思った。母の言っていることが理解できなかった
「エリよく聞け、部屋に隠し扉があり、水路とつながっているからそこから逃げなさい」
「そんな嫌よ、みんなで逃げましょう」
父が悲しそうに、何よりも悔しそうに言った。
「私達は、もう一人では何もできない。エリは一人でもなんとかなる」
父は強くエリを引っ張り、部屋の隠し扉の中にエリを入れた。
隠し扉は中からは開かないようになっていた。
エリは涙を流したくなかった。泣き声を外の二人に聞かせたくなかった。
暗い通路を一人歩き、たどり着いた先には、ボートがあった。
決心した、このボートに乗り自分は海を漂い続けて生きていくと。
ボートを繋いでいた、漕ぎ進めた。後ろを振り返らず、ただ前に前にと進んだ。
海に出てからは波に身を任せた、混乱したせいだろう疲労感と睡魔が体を襲った。