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海の泡は消えない 1話
気がつけば、私は孤独の中で生きていた。海と陸の戦争が始まってからもう何年が経っただろうか。戦争に行った父は帰ってくる気配すらない。
「すぐ帰ってくるからね」
私が12歳の頃、母はそう言って電車に乗った。しかし私は知っている。私と弟を置いて逃げたのだと。
今日、私は18歳になった。そこでふと考えた。「働こう」と。
私と弟は物を盗んで生活していた。違法だが、今では誰もがそうやって暮らしている。でも、私は真っ当に生きたかった。
でもこの国では女は子を産むものとして扱われていたため、誰も雇ってはくれなかった。
店を出たある時、一人の青年に声をかけられた。
「仕事を探してるの?俺についてくれば三度の飯と寝床付き、どう?」
「仕事内容は?」
「俺の旅に付き合うだけでいい。」
明らかに怪しかったが、明日食べるものにも困っていたため、弟と共に青年についていくことにした。
旅の初日、私たちは自己紹介をすることにした。
「俺はジェイク、よろしく。」
「私はエラ。で、弟のルアン。」
「よろしく。」
「で、どこに行くの?」
「目的は俺の母親探し。」
「どうやって探すの?」
ルアンが聞くと、ジェイクがこう答えた。
「手紙があるんだ。」
ジェイクが開いた手紙にはこんなことが書いてあった。
ジェイクへ
今まであなたの成長を見守れなくてごめんね。私はとある事情であなたのお父さんと暮らせなくなってしまったの。20歳になったら北の海に会いに来て。
ママより
「北の海って海の悪魔が出るって噂の?」
エラが聞いた。
「そうだよ、だから一人は嫌だったんだ。」
「でも北の海って激戦区だし、何より遠いでしょ。大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。」
その言葉は全く信用できなかった。
まずはコンパスを頼りに北の街へと歩き出した。