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宝石泥棒
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「オールマイト!!」
今、司令室に駆け込んできたオールマイトに塚内が振り向く。塚内の叫んだ声が司令室内に木霊していく。
「オールマイト!ヴィラン連合が...!」
塚内がいいかけたところで目の前の巨大モニターにとある映像が映し出された。映像は、どこかの生い茂った森林で、洞窟の中から誰かが出てくるのが確認できる。
「あれは...死柄木、?荼毘、それから...トガヒミコ、?」
オールマイトが目を丸くした。映像は続く。死柄木が洞窟の中からスピナー、コンプレスなどを連れ出して来るのが見える。
「ヴィラン連合か、!」
その様子にオールマイトがヴィラン連合だと言うことを確信する。
中から出てきたヴィラン連合に死柄木が語りかけるている。すると珍しくヴィラン連合に焦りが見えた。
「死柄木は...何を言ったんだ?」
「わかりません。音声を聞くことはできなくて...」
焦りと同時にヴィラン連合の全員が360度見えるように背中合わせになり、いつでも戦える体制をとった。の頭上に突如黒い男が現れた。ヴィラン連合の反応で、明らかにそれは敵であることがわかった。荼毘の炎がみるみる上がっていく。
「エンデヴァー達は!?まだ帰って来ていないのか!?」
「それが...」
塚内は、オールマイトにしか聞こえないような声で真実を伝えたー
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「はぁ、はぁ、はぁ」
暗い夜道を少年が息を切らしながら駆け抜けていく。
少年の服はボロボロで、顔には十字架の上からバツ印を重ねた入れ墨が掘ってある。この入れ墨はこの国において死刑囚を意味する。そしてこの顔こそが少年の危険を表していた。狼のように赤い瞳は周囲は殺気で溢れ、顔に残った傷は尋常じゃない。
少年は腕の中の袋を握りしめ、ひたすら薄暗い夜道の風を切る。
突如鳴り響いたパトカーのサイレン。
「待てぇ!!!!!!」
警官の声が、廃墟都市に響き渡る。
「はッ、待つわけッ、ねぇっての!!」
少年の息は上がる一方。パトカーサイレンもこちらに近づいて来る。4,5台のパトカーが一気に少年に詰め寄って来た。
「ここまでだな。《《宝石泥棒》》」
少年の目の前で急ブレーキをかけた警官が、パトカーから銃を構えながら降りてくる。
追い詰めた。
なんて警官は思っただろうか。だが次の瞬間、警官たちの前から目にも止まらぬ速さで少年は姿を消す。これには警官も声すら出なかった。さっきまで追い詰めたと思っていた人物が次には視界の中にいないのだ。
「追ってこれば殺す」
警官の頭に重口が向けられる。警官の腰にあったはずの銃が今や少年の手に。殺されるまいと、警官はしぶしぶ両手を挙げる。それを見た他の警官達を次々と手を挙げた。
「んじゃ、さいなら」
少年が指をパチンッと鳴らすと、少年は跡形もなく消えた。
「クソッ」
警官、ディカオスは両手を降ろし、悔しさのあまり、自分の唇を噛み締める。そして地面にに転がっていた銃を拾い上げる。
--- * * * ---
一方、少年、ルークは薄暗い廃墟都市まで来ていた。街灯はあるものの、その役割を果たしてはいない。ルークは細い路地裏を得意に進み、廃墟のビルの前に出た。
今にも壊れそうな扉を開くと、ギギィという錆びた音がビル中に響く。
「誰かね?」
真っ暗な奥の方から入口まで響く声。
「明かりをつけろ。頼まれた物を持ってきた。」
「生意気な餓鬼め...」
そう言いながらもぱっとビルの明かりがつく。といってもチカチカと消えてしまいそうな明かりだ。奥の方には少し肥満気味の男が一人、椅子に座っている。反射で輝く数え切れないほどの金銀に光るアクセサリー達。でかい鼻。それにニヤニヤとした薄気味悪い顔。
ドサッ
男の前のテーブルにルークは持っていた袋を置く。
「1875年物。一つ560,700.00 ユーロはする。」
ルークが袋を広げるとそこには大量のネックレスやらがびっしりと詰まっていた。
「やるじゃないか!!」
男は食いつくように袋の中を除く。
「で?報酬は?」
ルークは手を差し出し軽くイラついているように見える。男は一瞬ニヤっとした後にすぐ顔が曇る。
「うーん、そうだなぁ、185.02 ユーロってのはどうだ?」
「はぁ?!っざけんなッッ!!!!!」
ルークの叫び声がビル中、いや、街中に響き渡る。ルークは血眼で男を睨みつける。男はそんなのお構い無しに笑みを浮かべ続ける。
「だってしょうがないだろう?途中で警官に目ぇつけられちゃってんだから。それに、お前が触っては汚くなっちまう。」
「お前ッッ」
「いいのか?殺しちまうぞ?お前の×××」
その言葉でルークの顔から一気に血の気が引く。
「その顔だよ...いい顔だなぁ...」
ルークは自分の拳を強く、強く握りしめ、下を俯く。
「は、はは、」
しーんとしたビルの中にルークの小さな笑い声だけが聞こえる。その奇妙な笑い声に男も正気を失ったのかと眉を寄せる。
「くだんね」
は?という顔を見せる前に男の首が飛んだ。周りは血で溢れた。手のナイフも真っ赤に染まる。顔に付いた返り血を拳で拭い、男の胴体を見つめる。そしてテーブルの上の袋を鷲掴みし、その場を去った。
--- ルークside ---
何が正義の悪だ。何が主役を引き立てるための悪だ。ヒーローとかどうでもいいんだよ。どうせ俺みたいなやつらのことなんか眼中にないだろうに。どうせアンリのことなんか救ってくれねぇくせに。
あームカつく。この世界も。人間も。全部。みんなみんな自分のことばっかだ。クズばっかだ。自己中ばっかだ。
「…**殺してやる**」
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ルークは再び暗い都市を慣れたように歩き進める。ルークがたどり着いた先には高く積み上げられたゴミ山があった。その奥の小さな抜け道を通ると、一つのボロボロの小さなテントがあった。
テントの布を履けて中に入ると銀色の輝く翼が目に飛び込む。
「ルーク、おかえり。」
その少年の額にはユニコーンのような一角が。ルークは少年の隣に座り込む。
「アンリも大丈夫だった?誰も来てない?」
「うん。」
ルークは安心したのか、安堵の声が口から洩れる。自分の体に付いた返り血にもお構いなしにルークは木の枝で火を起こし始めた。
「…ごめんな。こんな生活で。」
突然の謝罪にアンリは何と返せばいいかわからなくなる。
「アンリも羽、広げたいよな。」
ルークはついたばかりの火を見つめる。
そう、アンリはペガサスの唯一の子孫なのだ。その青く輝く目は揺らぐ炎とルークを写している。
投稿遅すぎた