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第弐話【探】
「やぁ!みんな!」
夕食を食べている時、突然扉の方から声が聞こえてきた。驚き、振り返ると、金の短髪の男性が口元に笑みを浮かべて立っていた。一人の少年が叫ぶ。
「あっ!ノルエ様!」
少年はノルエ様の方へと駆けていく。みんなも続いて、「ノルエ様!ノルエ様!」とノルエ様の方へ集まる。シラハも少し顔をほころばせた。シラハの視線に気づくと、ノルエ様も微笑み返した。夕食を一緒に食べることができて、幸せだと思った。シラハは改めて、あの席に座っている誰かに感謝した。
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夕食後、ノルエ様に呼び出されたシラハはノルエ様の部屋へと向かった。ノルエ様は椅子に座り、シラハの方を真っ直ぐに見つめた。なにもかも見透かされているような気がして、シラハはお祈りの時間にしてしまった事を話した。
「すみません…………ノルエ様。お祈りの時間に顔を上げてしまいました………。誠に申し訳ございません…………。」
怒られるかと思い、ギュッと目を瞑る。しかし、いつまで経っても怒声は聞こえてこなかった。恐る恐る顔を上げると、微笑みを浮かべたノルエ様がいた。
「大丈夫。むしろ君で良かった。」
その言葉にシラハは違和感を憶えた。しかし、その違和感を口にすることはなかった。
「下がっていいよ。」
ノルエ様の優しく、しかししっかりとした声に言われ、シラハは部屋を出る。その途中、ノルエ様の机の紙が目にはいった。盗み見はよくないと分かっていたが、見てしまった。端っこの部分しか見えなかったし、一瞬だったが、『2実験:成功』と書いてあった気がする。実験?成功?シラハの頭の中がハテナで埋め尽くされた。分からないことだらけで、悪い妄想を振り払うように頭を振ると、壁に頭を打ち付け、苦しみ悶えることになった。
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夜中、誰かの足音で、シラハは目を覚ました。音からして、革靴だろうと思う。この|施設《孤児院》で革靴を履いている人物は一人しかいない。心臓が不規則なリズムで跳ね上がる。深呼吸をし、心臓を落ち着かせると、ゆっくりとスリッパを履く。なるべく音をたてずに、ドアノブをひねって、扉を開けた。蝶番の開く音が少し響いたが、大丈夫だろうと思う。ゆっくりと閉めると、忍び足で、足音の方へと向かった。
足音は思ったよりも早く歩いていた。引き離されないように、必死に追う。段々と息があがってきた。曲がり角を曲がった。曲がり角の先には誰もいなかった。
代わりに、少し隙間の開いた扉を見つけた。隙間から中を覗く。部屋の中は暗く、なにも見えなかった。思い切って、扉を開けて、入る。手探りで暗闇の中を彷徨っていると、奥の床に扉があった。開けてみると、梯子がかけてあり、地下へ繋がっているようだった。シラハは恐る恐る、梯子を下り始めた。
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございます!
前回同様、最後の方、セリフ無ですみません…………。
皆さんも予想(?)の通り、ここから結構暗くなるので、お気をつけて!
まぁ、まだ年齢制限はかかんない。
次回も読んでいただけたら嬉しいです!