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曲名が無い曲はどう表記したら良いのか分かりません ()
雨の日になると 、 あの駅を思い出す 。
踏切を超えた先にある 、 小さな無人駅 。
夜になると 、 なぜか文字盤がゆらゆら揺れて、 案内板の文字が踊り出して見える場所 。
最初に来た時 、 私は確かに思った 。
__ ここから今日は 、 人が出てきた 。
改札も無いのに 。
電車も止まらないのに 。
濡れたホームの奥から 、 誰かが歩いてくる気配だけがした 。
「 ねぇ 」
振り向いても 、誰も居ない 。
けれどベンチの隣が沈み 、 肩に触れるはずのない冷たい雨粒が 、 内側から落ちてきた 。
カンカンカンと 、 踏切が鳴る 。
曲がるはずのない線路の先で 、 見えない夜汽車が通り過ぎた音がした 。
空を見上げると 、 まるで音楽のような風が流れている 。
__ 聞けるはず無いのに 。
「 あの日から停まってるんだ 」
隣で 、 私の声が言う 。
「 ここ 」
私は目を伏せた 。
線路を越えれば 、 何か思い出してしまう気がしたから 。
今日も雨 。
ホームの奥には 、 人影が並んでいた 。
みんな 、 何か分かったふりをして 、 ただ立っているだけ 。
何もしないまま 、 遠くを見ている 。
「 ここはどこ ? 」
声が震える 。
見回しても 、 何もない 。
はずなのに 。
案内板の 「 明日 」 が 、 黒く塗りつぶされていた 。
「 迎え 、 来るかな 」
私は答えない 。
口を閉じる 。
ほんとは 。
迎えが来てほしいのは 、 私の方だったから 。
踏切が鳴る 。
ホームの人影が一斉に動き 、 駅の外へ歩き出す。
今日もまた 、 誰も見えない。 誰も追えない 。
私はベンチに残る 。
隣の気配が立ち上がる 。
「 じゃあ、おやすみ 」
足音が遠ざかる 。
私はようやく顔を上げた 。
ホームには 、 学生証が落ちていた 。
拾い上げる 。
写真の中の私は 、 雨の中で笑っている 。
行き先欄 ―― 不明 。
発行日 。 ―― 明日 。
踏切が止まる 。
世界が静まる 。
そのとき 、 背後で声がした 。
「 どうして 」
振り向けない 。
「 どうして止めたの 」
私は知っている 。
この駅に来るのは 、 帰れなくなった人だけ 。
「 迎えに行こうとしたのに 」
冷たい指が 、 背中に触れる 。
私は目を閉じる 。
__ あなたが来ないように 、 強く止めたはずだったの 。
踏切が 、 もう一度鳴った 。
ホームの奥で 、 新しい足音が生まれる 。
駅の入口から 、 また今日も 。
誰かが 、 ゆらりと出てきた 。
そして雨の中 、 ここではずっと 。
誰も見えはしない 。 誰も追えやしない 。
夜だけが 、 曲がった線路の先へと 、 静かに続いていく 。