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「ようこそ魔法学園へ」(1)
春。それは別れと出会いが同時に押し寄せる、新生活の幕開け。
大体の場合では冬の終わりを示し、日本では美しい桜が舞い散るとても素敵な季節だった。
そんな様々なことが目白押しであるこの季節だからこそ、混乱している者も多い。
今年のヴェラセルト教会立魔法学園新入生…|勘解由小路《かでのこうじ》 |椿《つばき》は、絶賛迷子であった。
大きすぎるスーツケースをずるずると引きずりながら、地図とにらめっこして数十分。
どの場所に立っていても見えていた小さな西洋風の城が学校であったことを知るのは、そのくらいだろう。
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「…つまり、|私《わたくし》は手に本を持ちながら本をなくしたと騒ぎ回っていたお母様と全く同じだと、貴方は言いたいのですね?」
「愉快なお母さんね…」
同じ制服の少女から声をかけられ、椿はようやくその「城」を学校であると認識した。
その少女はレティフォーネ・ロベッタと名乗り、椿に案内をしてくれてようやく、椿は学校への道に着けたのだ。
「そういえば貴方、名前は?」
「|私《わたくし》の名は|勘解由小路《かでのこうじ》 |椿《つばき》ですわ!|勘解由小路《かでのこうじ》家の一人娘でしてよ!」
「…どうりで見ない顔立ちしてるわ…日本人だったのね」
レティフォーネは納得したようにうんうんと頷く。
「それにしては貴方…やけに大陸共通語が上手ね」
「お母様に叩き込まれましたの!第一言語は日本語ですけど、幼い頃から共通語にも触れてましたわ!」
大陸共通語…フェルショーネ巨大大陸に住まうほぼ全ての人が扱う言語であり、全世界の第二言語として最もポピュラーな言語だ。
それもそのはずで、フェルショーネ巨大大陸は文字通りの超クソデカ大陸。
大陸共通語さえ使えれば20カ国に行ける、という言葉は冗談ではない所以だ。
「日本語ってほぼ魔法言語って同じよね…」
「あのうねうねしたよくわからないものと日本語を同じにしないでくださいまし!?」
魔法を発動する時の魔法陣に書いてある言語と日本語は確かに同じではない。どちらかというと日本語はうねうねよりカクカクしているのだ。多分。
「ほら着いたわよ、ここがヴェラセルト魔法学園。正式名称はヴェラセルト教会立魔法学園だけどね」
新入生とその保護者と思わしき人がごった返す、『城』。
|勘解由小路《かでのこうじ》 |椿《つばき》の新生活が、始まろうとしていた。
こっちの方がするする書ける…どうして…?
次は気分です。2週間経たない内には出る…はず…?