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小さな一歩
俺には、憧れの人がいる。
強くて、かっこよくて、誰よりも輝いている。
そんな“君”を、周りの人は、
「なにあれ、当たり強くね?」
「対応冷た。氷かよw」
「ずっと一人で音楽聴いてて、陰キャじゃんw」
と、酷評し続ける。
陰口だけじゃなくて、直接的な嫌がらせもある。
でも、彼はそれに屈するどころか、立ち向かっていた。
面倒な役割を押し付けられたときは、嫌な顔一つせずに、期待以上の働きをし、掃除を押し付けられたときは、誰よりも綺麗に掃除をしていた。
周りの奴らはそれを見て、天才だの機械だのって言っている。
でも、あれは彼の努力の賜物だ。
予習復習は欠かしていないし、提出物や課題も余裕を持って終わらせている。
分からないところは先生に聞いて解決しているし、細やかなボランティアや人助けもしている。
彼は、凄い人だ。
そして何より、自分の“好き”を貫いている。
それが俺には、まるで“ヒーロー”のように見えたんだ。
そんな彼が、今では____
「おい、早く行くぞ」
「はーい!」
俺の隣を歩いている。
正直、今も夢じゃないかと思ってるけど、口には出さない。
数週間前まではただ憧れていただけだった。
でも、話しかけてみたら意外とすんなり受け入れてくれた。
一歩を踏み出すって、大事なんだって、改めて思ったな。
彼と過ごすようになって、僕は変われた。
時々ではあるけど、自分が思ったことを言うことができるようになったと思う。
それに、自分の“好き”を我慢しなくてもいいんだって、思えるようになった。
それからは、自分の好きをもっと楽しむことができるようになったし、毎日が輝いている。
やっぱり、好きって大事なんだな。
そう、気がつくことができた。
小さな一歩で、人は大きく変われるんだ。
「おい。まじで置いてくぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ〜」
「ふふっ……」
僕には、憧れていた人がいる。
強くて、かっこよくて、誰よりも輝いていて、優しい君。
俺も、君の隣で精一杯輝くよ。
「なに笑ってんだ?」
「なんでもないよーだ」
「あっ、おい!先行くんじゃねーよ!」
「さっきの仕返しー!」
“小さな一歩で、人は大きく変われるんだよ”