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No,I’m not a Literature Club!
林沢レオ
緊急速報です。
本日午前6時28分 太陽から強力なエネルギー放射が観測されました。
放射規模は科学者の予想を大きく上回りました。
屋外の気温は危険水域に達しています。
これに伴い政府は緊急事態宣言を発令しました。
日中の外出を控えるようお願いします。
あのニュースから5日経った。赤の他人との共同生活。精神が擦り切れそうなくらいのストレス。家の皆は元気でありながらも、来訪者のことを教えてくれた隣人は死んだ。窓の外を見ると彼の家に火をつけられていた。
来訪者というのは人のふりをして人間を襲う怪物のことらしい。それらと人を見分ける方法がいくつかある。実際、暑い暑いと喚いて家の中に上がってきた連中の中にも何人かいた。その時は家の保管庫の中で眠っていたショットガンが仕事してくれた。
今家の中にいる人間は俺を入れて4人。外科医をやっていた老人、バーを追い出された長身の男、自称占い師の女、そして俺。基本的に体調確認と簡単な会話しかせず、寝ているか暇を潰しているかだけ。生活はとうにおかしくなってしまった。もうこれ以上人を家にあげたくない。
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「誰かいませんか?」
玄関のドアがノックされる。一応何かあっては困るから、ちょっとした会話を挟んで帰らせよう。
「どうされました?」
「外にいるのが怖くて、中に入れてもらえませんか?」
「外にはなにがいるんです?」
「ええっと…いろんな人がいます。銃を持ってうろうろしてる人とか、上半身裸のおかしな人とか…」
オレンジに似た茶色い髪を白いリボンで留め、どこかの高校の制服を着ている。女性にしては背が高い方か。
「余裕がないんです。帰ってください」
「私が持っている食べ物をあげます。それに、私の部活の副部長の電話番号です。入れてもらえませんか?」
食べ物がもらえるのはプラスかもしれない。
「いいでしょう、入ってください」
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家の4人で集まって話し合うオフィスを除いて唯一の空き部屋である風呂場へ案内し、そこで過ごしてもらうことにした。
占い師の女は台所に入ってきた俺の顔を見るなりこう言った。
「昨日誰かを入れたのかい。何か不吉な予感がする。気をつけて関わるといい。」
この女の勘が当たるのはいつも五分五分だ。今回の話は嘘か誠か。
「昨日新入りが来たようだな。彼女に何かあったら伝えておくれ」
外科医の老人はそう言い微笑んだ。前一度、家に上がった薬物中毒の男の怪我を治していた。その男は家に映画のテープがないことを知ると怒って出ていってしまったが。
「俺の個人的な思いだが、もっと人がいたら賑やかで楽しいだろうと思うんだがな」
バーの男は遠くを見つめるように話した。
「もうこれ以上人は上げられません。またあの子の時のように人が死ぬのを見たいんですか」
ある日、家出をした少女とパーカーの男が訪ねてきた。パーカーの男は来訪者で、家出をした少女は翌日血まみれで台所に倒れていた。
「あれのようには絶対にさせてはいけないと思っている。しかし俺だったら、死んでもいいから人を中に入れる」
「この家の主人は私です。そんなことはしません」
「わかってるよ」
この人とは話が合わない。私の性格が悪いのか、彼の性格が悪いのか。
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ようやく昨日入ってきた少女の検査ができる。
「調子はどうですか」
「大丈夫。けどやっぱり外は怖い」
「昨日言っていた部活って?」
「文芸部にいるの。私が部長。メンバーは少ないけど、みんないい子よ。」
文芸部。彼女の容姿からして運動部のような気もしていたが、意外とは思わなかった。
「検査させてください」
来訪者か人間かを見分けるポイントは5つ。真っ白な歯、爪の間の泥、充血した目、毛のない、カビが生えた脇、そして写真に写ったオーラだ。特殊なカメラで撮影するとオーラが映るらしく、家のメンバーで試して見たが使い物にならなかった。
「どこを見せればいい?」
「目を見せてください」
「はい、本をよく読むから少し赤いかも」
彼女の目は白く、至って正常だった。
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昨夜は誰も来なかった。それに、今夜ここで誰かが死んだ匂いがする。
保管庫。外科医の老人が死んでいた。やったのはあいつしかいない。
「検査させてください」
「昨日やったのに?」
「いいから手か歯を見せろ」
彼女はこちらに手を差し出してきた。爪の間は汚れていなかった。一応銃を突きつける。
「なぜ?兆候は見られなかったじゃない。死にたくない。あなたと一緒にいたい」
俺はこの女が外科医をやったと確信しているが、殺すのは今日じゃない。一旦見逃した。
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「なんであの娘を入れたの!?外科医の老人は優秀だったのに!!」
占い師はヒステリーを起こしていた。
「落ち着いてください。彼女はじきに追い出します」
「今すぐ殺して!殺さないと出ていくわ!!」
そういうと彼女はふいに黙り込んだ。台所のドアにはあの少女が。
「助けて!殺される!!」
叫びながら彼女は台所、玄関を飛び出して行った。外は焼けるような暑さだ。外を見るのが怖くなった。
「この間みたいになっちまったな」
バーの男は笑いながらそう言った。
「安心してください。彼女は今夜殺します」
「なぜ今じゃないんだ」
今はそういう雰囲気じゃないのだ。そう反論する前に彼は言った。
「人がいないのが寂しいんだろ?俺の言った通りじゃないか。大勢いた方がいい。違うか?」
なんなんだこいつは。無性に腹が立つ。
「この家の主人は俺だと言ったはずだ。これ以上俺に逆らうなら、お前を撃ち殺す」
「…わかった。今夜ここを出る。追い出されたバーにでも戻ってみるよ」
それでいいんだ。
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もうすぐ日没。副部長とやらに電話をかけた。電話口からはノイズと「例外が発生しました」としか聞こえなかった。
彼女にそれを伝えようと風呂場へ向かった。中に入ると彼女は微笑んだ。
「お前が来訪者なのはわかっているんだ。悪いが死んでくれ」
銃を構えながら、引き金に手を掛けた。
「私はあなたを襲わない。だから、お願い、私を殺さないで」
俺はその言葉に従いたかった。そして従った。
「家には私と、あなたしかいない。あなたに必要なのは私だけ」
その言葉を聞きながら、俺は彼女に抱きしめられた。
エンド「2人だけの家」