ヴィラン　及岩

岩泉said 俺は中学校に上がった時から、及川のことが好きってことに気付いた。 幼稚園の頃からずっと一緒にいる相手。 もう幼くない ハグをしたり、手を繋ごうとすれば、気持ち悪いって言われて、離れられる。 離れたくない。だから好きってことは分からないように隠す。 少女漫画とかみたいに、叶うために努力すらできやしない。バカみたいだ。 むしろバレてしまえばそれはもう人生が狂うようなもんだ。 まるで、通報されたかのように。 男が好きなんて、変なやつって思うかもしれないけど、好きなもんは仕方がない。 もっと単純に性別を分けてほしかった。 染色体みたいに簡単な記号で。 　　　　　　　　　　　ｷ　ﾐ でも、この感情は及川を侵害していく感情だ。 きっと否定される。 だから俺は世の中の敵なんだろうな。 お前の前で、友人のふりをするのはもうキツイんだ。 でも俺は悪だから善には救われない。 どんなやつでも悪でいいから俺を救ってくれ。ここにいるから迎えに来てくれ。 顔も名前も知らねぇやつがこの話を聞けば、間違いなく俺は悪なんだろうな。 まるで、人が嫌うような人生じゃないか。 もうオレの心は乱れきってしまったようだ。 --- 「及川。」 「なに岩ちゃん。」 　　　　　　　　　ｾ　ｲ こうやってまた感情を隠す 「及川さんさ今日も女の子に告白されちゃったよ。いいでしょ。」 「へーへーそーですか」 男と男じゃ結婚もできないのか。 そういやぁ前に国語でやった江戸川乱歩は批判されても続けたんだよな。 俺にはそんな勇気なんかないや。 このことを明かすのをビビってんじゃねぇよっていいたいけどな。 「もー岩ちゃん聞いてる?今めっちゃ悲しい話をしてたんだからさ。」 「そうか・・・。」 ｶﾅ 愛しい哀しい話を俺も誰かに話せたらな。 「でさー及川さんその前に付き合ってた子に別れてって言われてさ。辛かったんだー。でも、告白されたからもう平気かなーって思うんだ。」 お前の可能性に、幸があるといいな。 でも、全部隠すから嫉妬くらいはしてもいいよな。 　　　　　　　　　　　　 ・　・ 「とりあえず、バレーにも集中しろよ。」 「岩ちゃんが初めて『にも』って言ってくれた」 「黙って集中しろクソ及川。」 だれも知らないし、知られたくないこの思い。 もう、自分すらも演じてしまえば、騙してしまえば楽なのだろうか。 自分の考えをなくしてしまえば楽なのだろうか なら・・・。 --- 及川said 岩ちゃんが自殺した。 遺書が足元にあって、それを読んだ。 俺宛の告白の手紙だった。 俺も岩ちゃんが好きだった。 友人としてじゃなくて、恋人として。 なんだよ。同じ思いだったじゃん。 気付いてないでしょ岩ちゃん。 俺が振られたことはないんだよ。 いつも俺から振ってたんだ。 岩ちゃんが好きだったから。 もう岩ちゃん無しで生きていけない。 この世界は残酷すぎる。 自分の思いを隠さなきゃいけないなんて。 同性での結婚も、同居も出来やしない。 政治家はみんな改革を進めない。 否定され続ける。だから 岩ちゃんが死んだことで、それが減ってほしいな。 《ｵﾚﾓｼﾝﾀﾞｺﾄﾃﾞﾋﾃｲｶﾞﾅｸﾅｯﾃﾎｼｲﾅ》 今から会いにいくよ岩ちゃん。