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隣の学校の元ヤンに恋をする 7
英加扠
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次に目が覚めたのは知らない家のベットの上だった。目を覚ました瞬間、自分の家だと勘違いし、(今日の夕飯なんだろう)といささかドメスティックなことを考えてしまった。額にはこの部屋の持ち主が貼ってくれたのだろう熱冷まシートが貼られている。起き上がるとベットのスプリングが音を立てる。部屋は全体的に青系統の色でまとめられており、生活感がそんなにない部屋だった。取り敢えず、この部屋の持ち主にお礼を言ってから帰ろう。テーブルの上のスマホを付けると、17時26分。「後一時間くらいか、バス停まで行くか…」「いや、ふざけるな」と、後ろから平坦かつ若干怒りの籠ったような声、細いチタンフレームの眼鏡を掛け、前髪が若干眉毛にかかっている。髪は耳より少し下で、声を聞くまで女の子と間違えそうになる。服は薄い白シャツにパーカー、そして黒いズボン。そしてこの声はあの時、聞こえた平坦な声。顔は若干眉間に皺がよっているように見える。そうだ、お礼言わなきゃ。「あ、あの助けていただきありがとうございました。お邪魔になると思うので帰りますね、では」「お待ちください」出て行こうとスクールバックを下げた手を掴まれる。なんだ、私はこの人の逆鱗に触れることでもしたか。「な、なんでしょう」「…」やめてくれ、その沈黙。あんただろこの元凶、手ぇ掴んだの。「また、貧血で倒れるかもしれないので、バスが来るまでここでお待ちになってはいかがでしょう」「んあ」間抜けな声が出る。だってきみはさっきまで眉間にシワ寄せてただろ。私知ってるぞ?「これ以上ご迷惑をおかけするわけには…」「先程のようにまた道路で倒れたらどうなさるんですか。道路に這いつくばってでも日陰に行けますか」何も言えない、ぐうの音も出ない、この人毒舌。いや、でもこの家がどこかも、バス停までどのくらいなのかも分からないし、早めに出ておいたほうがいいのではないか。「ご親切にありがとうございます、ですがバス停まで行かなければならないのでこれで」というと、彼は考え込むような仕草をする。「分かりました。では、僕もご一緒します」「何故」「夏とはいえ、こんな時間に女性一人というのは賛同しかねます。先程言ったようにまた倒れてしまうかも。」少し眉毛を下げて心配そうに言われる。やめてくれ、湖夏の件で分かった私は押しに弱いのだ。少し渋々と言った感じで首を縦に振る。「では行きましょう」