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本編16
誰か
誰か
このどうしようもない気持ちを
どうしようもないオレを
「救ってくれないか」
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「………司先輩のこと?」
「うん…最近お兄ちゃん、ずっと様子おかしくて…」
「とーやくんなら何か知ってたりしないかなって思って…」
「…ちょっと分からないですね…体調を崩してるという話も聞いてませんし…」
「そっか…そうだよね、ごめんね!急に変なこと話しちゃって…!」
「いえ、役に立てなくてすみません」
「ううん!アタシは大丈夫!」
「それじゃあ……またね…!」
「はい、また……」
………
咲希さんの様子がおかしい
焦ってるような、そんなことないような…
司先輩…
確かに最近、司先輩に関する話も聞いていない。姿すら見ていない。
昔からあの人は、よく無理をしていた
咲希さんの為に、みんなの為に、笑顔にする為に
俺は、司先輩の悩んでる姿を近くで見てきた、一緒に悩んできた。
「…心配だ」
何か情報はないのだろうか…
姿を見たという情報でも、声を聞いたという情報でもなんでもいい
先輩の現状を知れる情報を…
「冬弥!」
「…あ、彰人?」
「そんなとこでボーッとしてどうしたんだよ、今日は練習の日だろ」
「こはねと杏はもう先にセカイに行ってる。早く行くぞ」
「…そうだな」
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「疲れたー!今日もいい感じだったね!」
「ラップもだんだん上手くなっていってるし…すごく気持ちよかった…!」
「こはね、どんどんかっこよくなっていってるんだもん!私もめっちゃドキドキした!」
「んじゃ、今日はこんくらいでやめにするか」
「……ああ」
「おい冬弥…お前、いつもよりいまいちだったぞ」
「…なんかあったのかよ」
言ってもいいのか…?
彰人は司先輩とあまり話していない、頻繁に連絡を取る方でもなかったはずだ
司先輩の情報を得たい、何か知ってないかと急に言われても困惑するだろう…
それに、変に司先輩の話を広めるのもよくない気が…
「別に言いたくないなら言わなくていい。でも、」
「相棒だろ、俺達」
「あ………」
そうだ
相棒なら、彰人なら
話しても絶対信じてくれる。くだらないなんて言うはずない。
一緒に悩んでくれる。
「………司先輩のことで…」
「………え…」
「咲希さんから聞いたんだ、司先輩の様子がおかしいと…」
「何か知ってるかと言われたが、俺には分からなくて」
「それで…少しでも司先輩の情報を得るにはどうすればいいのか…って」
「…そうか」
「彰人は何か知ってたりしないか?」
「今何をしてるのか、見かけたりしたか、些細なことでもいいんだ」
「…うちに泊めた」
「…え?」
「|ここ《セカイ》だと少し、あれだな…一旦戻るか」
「あ、ああ…」
「あれっ?彰人達もう帰るの?今からこはねとメイコさんのカフェ行こうと思ってたんだけど…」
「…すまない、今日は…」
「用事があんだよ、またな」
「じゃあ仕方ないか…残念…」
「東雲くん、青柳くん、またね!」
「ああ、また明日」