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一羽
数年前―――
ここ、天界では生まれて六年経った神の使いたちが「悪魔」か「天使」かを創造主様が分けられる日だった。
悪魔は、人に誘惑をもたらす悪の者。天界では忌み嫌われる存在である。
天使は、人を導く者。天界では尊ばれる存在である。
その年。天使候補とされたのは心優しい少年の使いであった。
彼は、どの者にも分け隔てなく優しく、決して驕らない清い者だった。
そして、悪魔候補とされたのは少年とは幼馴染の少女の使いであった。
彼女はいたずら好きで、怠惰で高慢な者であった。
きっと誰もが少年が天使で少女が悪魔になると信じていた。
しかし。なんの手違いなのか、少年は悪魔に分けられ、少女は天使となった。
少年は期待されていた分、失望された。天使達や家族からは石を投げられ、罵られた。
逆に少女は失望されていた分、期待された。天使や家族からは温かい歓迎がされた。
そして現在―――
「イト!入るわよ!」
大天使となった少女―――キーはボロボロで落書きだらけの小さな家のドアを蹴破って入った。
それに驚いたのは悪魔の少年―――イトだ。イトは毛布に包まってガタガタと震えていた。
「キ、キー!?どうしてここに⋯?ていうか、鍵をかけてたのにどうやって入ったの⋯?」
「こんなボロいドア、蹴破れば入れるに決まってるじゃない」
「えぇ⋯」
困惑気味のイトに、キーはズンズコ詰め寄っていく。
そして、イトの手を取る。
「久しぶりね?私が天使に、あなたが悪魔になった以来かしら?」
「そうだね⋯。キーは大天使になったんだって?おめでとう」
イトの心からの祝福にどこか納得いかない表情を浮かべるキー。
キーの表情にイトは不安になった。
「う、嬉しくないの?」
「⋯私が一番にあなたに伝えたかったのに、なんで先に知ってるのよ?」
「えっとそれは⋯」
イトのところには、よくキーの情報が入ってきた。
わざわざ家の前で天使達が言いに来るのだ。そして、キーの話をしたあと決まって言うのだ。
「お前と違って、キーは立派だよね」と。
黙りこくってしまったイトに、「まぁいいわ」とキーはイトの手を引いた。
「ほら、こんなところに閉じこもっていないで外に出るわよ」
「え⋯?い、嫌だ!」
イトは外が嫌いになっていた。できることなら外には出たくない。
だって、外の天使たちは怖いから。
怯えるイトの手をキーは強引に引く。
「いいから!こんなところに閉じこもっていたら体に悪いわ!」
「い、いいよ⋯体が悪くなっても心配する人なんていないし⋯」
自分で言っていて悲しくなったイトはシュンッと顔を下げる。
キーはその様子が気に食わないとばかりにイトの顔を手で包み、無理やり上に向ける。
「私が、心配するの」
大きく目を開けたイトの視線に照れるように「ほら、行くわよ」と強引に外へ連れ出すキー。
それに慌てたのはイトだった。
「ちょ、ちょっと待って。どこに行くの?」
「⋯私、今回の功績で大天使になったの。それと、屋敷をもらったの」
「えっと⋯よかったね⋯?」
「⋯屋敷が広すぎて使い切れないから、あなたも一緒に暮らすのよ。」
「⋯へ?」