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8.クランは、魔物のせいで目立つ
ふう、ようやくついたわね。
わたくしは、目の前の広場を見て、満足げに頷いた。
その広場には、ヴィール、フィルゲ、アリアがいた。
ヴィールは本を読んでいて、フィルゲは地面に何かを書いていて、アリアは相変わらず寝ている。
……ずいぶん濃いメンバーばかりね。
そして、魔物を引っ張っているわたくしに一番早く反応したのは、以外にもヴィールだった。
「知ってる……!」
そして、その声によって反応してくれたのが、フィルゲだった。
「え、何その魔物!? 初めて見た!!」
「じゃあフィルゲは知らないの?」
「うん!」
「じゃあなんでヴィールは知っているのかしら?」
「うーん、ヴィールはいつも本を読んでいるからね。そこで知ったんじゃない?」
「そうなのね。ねえヴィール、この魔物は何なの?」
「書く……」
書いて教えてくれるということかしら?
「分かったわ。ありがとう」
そして、ヴィールはこんなことを書いてくれた。
『その魔物はオグル。魔法攻撃に耐性を持っている。ここ二百年ほどは存在が確認されていない。住んでいるところも不明。過去は、大陸北部に生息されていたとされている』
「不思議なこともあるのね。教えてくれてありがとう」
「……」ペコリ
ふむ、情報が集まってしまったわね。
これだけでもこのオグルとかいう魔物を引きずってきた甲斐があったわ。
「ところで、しばらくこれを置いて行ってもいいかしら?」
「何で?」
「少し、森に用事が出来たの」
「森に用事? まあいいけど」
「ありがとう、フィルゲ!」
さて、これで心置きなく呼び出せるわね。
「つーちー!!」
「何だよ、呼び出すなら誠意を持て」
いつも通り、土が現れた。
「誠意? 持っているじゃない」
「どこがだよ」
「そうね、例えばコンクルートとドラゴンのどちらを呼び出す? と聞かれたらドラゴン、と答えるじゃない? つまり、呼び出されるには素材とかの価値が無いといけないのよ。そして、わたくしは今回、あなたを呼び出した。これってつまり、あなたの価値を認めている、誠意を持っている、ってことじゃない?
それに……」
「はいはい、分かったからそこまででいいよ」
「そうなの?」
それなら仕方ないわね。言いたいことはもっとあったのだけど、今は言わないでおくわ。
「うん、それで今回はなんの用?」
「あら? 分からないの?」
どう考えても神々が何かをしたとしか思えないのだけれど?
「うーん……最近忙しくなってきたせいで、心当たりが多すぎてどれなのかが分からない」
あぁ……神々らしいわ……
「オグルのことよ」
「オグル? ああ、確かに復活させたよ」
「やっぱり神々なのね……」
「それだけ?」
「それだけよ、だけど理由まで知りたいのよね~」
「理由ねえ、残念だけど、これは神々以外に教えることは出来ないな」
「そうなの?」
「うん」
「なら仕方ないわね。残念だけど今回の追及はこれくらいとしておこうかしら」
「うん、そうしてね」
「あ、そういえば」
わたくしは、一つ、聞きたいことを思い出した。
「この前、わたくし新しい聖女を発見したじゃない?」
「そうだったねぇ」
「あれの賭けには誰が勝ったの?」
「……」
黙り込む土。
少なくとも土は負けたようね。
「ねえ、誰なの?」
「……」
「だあれ?」
「………みんな外したよ……」
「そうなの!?」
もちろん、それってわたくしが関わっているのよね?
うれしいわ。神々の予想を裏切ることが出来たなんて。
これからもこんなふうに外させることが出来たらさぞかし爽快なことでしょう。
けれども、今回は偶然だもの。儲けもの程度に思っておきましょう。
そして、土は消え、わたくしはまた、広場に戻るのだった。
わたくしは、そのままオグルを引きずり学園に向かった。
「おい、あれ誰だ?」
「ん? あ、この前ネイラを倒したやつじゃねえ?」
「あ、それだ! それであれは何なんだ?」
「いや、分かんねえ」
「あ、じゃあ俺、聞いてこようかな」
「え、嘘、行くのか?」
「ん? 来るか?」
「うん、付いてく」
「分かった、じゃあ行こう」
「なあなあ、そこの魔物を引っ張っている美人ちゃん」
魔物を引っ張っている? ……わたくししかいないようなのだけれど、一部違う要素があるわよね? 本当に他に誰かいないのかしら?
「ほら、そこであちこちを見ているあなただよ」
「わたくし?」
「ああ(おいおい、貴族かよ)」
「何か用かしら?」
「実はさ、気になることがあってよ」
「その引きずっている魔物、何?」
ずっとそばで黙っていた男子生徒も会話に参加してきた。
「ああ、これ? オグル、というらしいわ。……そうそう、あなた達、ヨーゲルン先生を知らない? 魔物が専門分野の方なのよね、確か。この魔物のことについて詳しく聞きたいと思うのだけれど」
「ヨーゲルン先生? なら、案内するよ!」
先程広間でフィルゲに誰に見せればいいのか、を聞いたのはいいものの。どこにいるかまでは聞けなかったのよね。チャラそうな方たちだけれど、話しかけてくれて助かったわ。
「ありがとう」
そして、ついて行く。その間もいろいろ尋ねられた。
わたくしに趣味とかの話を聞いてくるなんて、わたくしが公爵だと知って取り入ろうとしているわけでもないのに、何の意味があるんでしょうね。
「ここだよ、多分、中にいると思う」
「ありがとう、助かったわ」
「こんな重い魔物、まじで引きずれるんだな……あ、先生は何を研究しているのかを一部の人にしか言っていなくて、気味悪がられているところもあるけど気にすんなよ」
「ええ、分かったわ」
研究結果を秘匿するのはまあ良いとしても、研究内容を秘匿するの? 変なことを研究しているのかしら?