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ジェットコースターに乗るハイテンション幽霊
「まぁ分かってはいたけど運転も俺なんだな」
「だって俺車持ってないし!免許もない!」
隣りに座っている零は何故か徒競走で優勝したあとかのような勝ち誇った笑みで言うが、まあ俺も幽霊が車の運転をするなんて話聞いたことがないので許してやることにした。
「ついたぁ〜!!」
俺達は結構有名な遊園地に来た。特定の時期や新アトラクションが出来たらよく番組に取り上げられて特集されるような遊園地だ。
「元気だな。で、どこ行く?」
「そりゃあジェットコースターでしょ!」
零は俺の腕を引っ張りながら目当てのジェットコースターの方に走っていった。
やめろって言っても多分無駄だと判断した俺は諦めて零に引っ張られていく。
そんなこんなで俺はずっと笑っているこの男に連れられジェットコースターに乗った。平日の真昼間はやっぱり人が少なくて待ち時間もそれほど長くはなく、零の話を聞いていたらあっという間に俺達の番になった。最初は、まだ緩やかな方のコースから始まって時間が立つごとにどんどん高くなっていく。おそらくここがジェットコースターで一番高いという瞬間、隣の男は手を上げながら楽しそうに笑いながら叫んでいた。スリルを味わえていいのかもしれないが、俺にはあれをする気力も、やる気もない。後ろのカップルは二人して恐怖の叫びを上げていた。楽しいデートになるといいが。
「楽しかった〜〜!!な、次はどこに行く?」
今さっきジェットコースターから降りてきたばかりだと言うのにこの元気さはどこから来てるんだよ。
「零は何乗りたい?」
「ん〜じゃあ観覧車!」
零は昨日やりたいことを聞いたときみたいに考えるポーズをしてから答えた。観覧車は最後に乗るようなイメージが勝手にあって遊園地に行く機会があったときはいつも夕方に乗っていたことで、何気に昼に乗ったことはない。
「おお〜!!たっか〜!綺麗〜!」
観覧車に乗ってから、いや、もうあの神社で会ってから零はずっとテンションが高い。
だが綺麗なのは同感だ。
「そうだな。遠くまで見える」
空や街並みが好きな俺は思わず口元が緩む。それを零は見逃さなかった。いや、見逃してくれなかった。
「あ〜!ライカが笑ってる〜!!」
「煩いな。俺だって笑うよ」
「え、今まであんまり笑わなかったじゃん!でも楽しんでくれてるみたいで良かった〜!」
「失礼だな。あとこのチケット代出したの俺だからな!」
「まぁまぁ細かいことは気にしないでいいじゃん!楽しんでるだろ?」
確かに楽しい。なんなんだこいつと思ったが、というか今も思っているが、最初に会ったときより不思議と話すのが楽しくなっている。そしてやっとお前呼びじゃなくなった。大きな進歩だ。
「まぁ楽しいけど」
「ツンデレだな〜」
また声を上げて笑う零を横目に、外の景色を見た。小さな着ぐるみが小さい子と一緒に写真を撮っている。綺麗な青のキャンバスに白い絵の具が浮かんでいるような空。
「お、頂上だ〜!」
零の言う通り俺達が乗っているゴンドラは、いつの間にか頂上になっていた。
「二人で写真取ろう!!」
「零は写るの?」
「え、考えたことなかった!写してみて!!」
スマホ越しに零が笑っている様子がはっきり見える。
「しっかり写ってる」
そう伝えると嬉しそうにはしゃぎながらスマホ貸して!と叫んでる零に仕方なくスマホを渡す。
「よ〜し、はいチーズ!」
慣れているのか、いい感じっぽい画角で写真を撮る。流石ハイテンション。
「よし!撮れた〜!」
零が見る写真の中には満面の笑みを浮かべる零と、少しぎこちない笑顔の俺がピースをしていた。
「ライカ写真あんま撮らないのバレバレだ〜!」
「撮る必要がなかったからな」
はいはい分かってるよ〜と何故か軽くあしらわれ、話をしていたら気がつけば地上に近づいてきていた。
一行目セリフで始まるの癖だなぁ、、