公開中
アンタイトル 第一話
はじめまして。U音です。
「さぁ全国中学生夏の駅伝大会。最終区へとバトンが渡り、接戦の中全員がラストスパートをかけます!」
全身に疲労がたまっていく。
もう嫌だ、辞めたい。
一瞬でも気を抜くと立ち止まってしまいそうになるが、私の身体は走ることを辞めてくれない。
だって、恐ろしいから。
皆でつないだ襷がなくなるのが。
「さあ全選手、ゴール前の最後のカーブに入りました!第78回、全国中学生夏の駅伝大会の優勝はどの選手の手に渡るのでしょうか!!」
目の前には2人の選手。
勝つためには、今勝負に出るしかない。
私は疲れた腕を大きく振りかぶり、一気に速度を上げた。
…悲劇が起きたのはその時だった。
頭の中に響く何かが切れた音。
それとともに右足から力が抜けていく。
あれ?と思ったのもつかの間。
私はトラックの上に倒れこんでしまった。
『あれ?あれ?なんで私倒れてるの?早く早く走らなきゃいけないのに…』
右足からの余りの激痛に意識が遠のく。
どこか遠くでピストルが鳴る音が聞こえた。
『あぁ、もう終わったんだ…』
「せ…ぱい…だい…ぶ…すか?」
どこかで誰かの声が聞こえる。
だけどもういいや。
なんにもなくなったんだから…
そのまま私は意識を失った…。
次に目覚めたのは病院だった。
どうやら私の右脚は肉離れを起こしたらしい。
「リハビリすればまた走れるようになるよ」
と言われたが、私はもう二度と走らない。
中学の間、ずっと履き続けた愛用のシューズを家の倉庫の奥深くに片づけた。
「バイバイ、もう二度と会わないと思うけど」
心持ち、倉庫の扉が開くときよりも重く感じた。