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対決ホルマリンランド
ある作家がドやっていた。
「皆さん、私、いつもランキングの底辺でしたが、なんと『異世界パープリン』で文芸賞を取ったんですよ。流行りのテーマは書かず、ただコツコツと。誰も見向きもしない私の作品が、賞を受けるなんて、驚きですよね。これが「継続は力なり」ってやつです。ランキングもポイントも関係ない。自分を信じて書き続けること。それが大切なんです。」。岩だらけの不毛の荒野に高放射能を含む嵐が吹き荒れていた。溶けた柱や焼け焦げた自動車など残骸が散らばっている。作家は鬼の首を取ったように演説している。白骨が聞いていた。そのそばにはまだ奇跡的に動いているスタンドアロンコンピューターがあった。ディスプレイに文字が流れていく。
「今日も一位、昨日ランキングも一位です!」
作家が勝ち誇る。「一位なのですよ!」
半ば焦げた小説のページが風に飛ばされていく。
「一位ですよ。みなさん。聞いているんですか?!」
反応する者はいない。
「一位ったら一位!」
作家はヒステリーを起こす。すると無人ドローンが着陸した。
「うるさいなあ!」とカメラアイで作家を睨む。
そいつには足が無かった。
「おい、そこのアンタ。俺の小説を読めえー!」
ドローンは言い返した。
「死にぞこないめ。とっとと成仏しろよ。凹すぞ!」
赤いレーザーポインターが作家を照らした。
「あ、お前。もしかして兵器?」
作家がドローンに言った。
「ああ、そうだが何か?お前こそ生成AIのホログラムじゃねえか」
すると作家は「俺のすごい小説読んでね♪たった一行で戦争停めチャウ。感動もの」
ドローンは長い長い吐息のような声をあげた。「さっきから通信帯域に割り込んできたのおめーか?」
作家は問いかけをスルーした。「ねぇ。俺の小説一位でしょお?」
ドローンは静かに言う。「ミサイルでぶっ飛ばされたくなきゃ黙ってろ。」
ドローンの警告にも関わらず、作家は無視して自慢話を続ける。
「一位だからね!すごいでしょ!この作品は本当に素晴らしいんだよ!だからみんなに読んでほしいんだよ!」
ドローンは再びため息をつきながら言った。「本当に黙っていないとミサイル撃つぞ。」
作家はドローンの言葉を聞き流して続ける。「この物語は、普通の人が異世界に召喚されて冒険するという定番のパターンなんだけど、主人公が自分の知識を駆使して、戦争を阻止するんだよ。すごく感動的なストーリーだから、ぜひ読んでみてくれ!」
ドローンの警告がますます厳しくなる。「最後の警告だ。黙っていないと本当に撃つぞ。」
作家はそれでも聞かずに続ける。「もちろん、主人公には仲間がいて、共に戦っていくんだけど、彼らの絆や成長も描かれているんだよ。読んだ人からは涙を流しながら感動したって言われてるんだから、きっとあなたにもすごく響くはずさ!」
ドローンはもう我慢の限界に達していた。「最後の最後の警告だ。黙っていないと…」
しかし、作家はドローンの言葉を聞かず、自己満足に浸り続ける。「この小説は、一つの作品として完成度が高いんだよ。キャラクターの心情描写や世界観の描写も細かく綴られていて、読んでいる人を惹きつけるんだよ!」
その瞬間、ドローンは我慢の限界を超え、ミサイルを発射した。
作家はその瞬間、自分の言葉が空しく響いていたことに気づき、絶望に包まれる。
ミサイルが作家に直撃し、一瞬にして彼は消し去られた。
「けっして読まざる者と書かざる者。越えちゃいけない一線を踏んだ結果だ。俺は攻撃ドローンだ」
ドローンは静かにその場を去り、荒野に再び静寂が戻った。
そして、作家の小説は誰にも読まれることなく、忘れ去られていった。
彼の思いは、ただ風に舞い散るページと共に消えていった。