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十階編①
登場キャラクター
水仮香澄、ノルエ・ユリファセーラ:主
赤城 宋:ABC探偵 様
藤咲 雷:柳田風雅 様
神我廻 蒼:碧隠 様
佐々倉 碧:MinoruMiu 様
三辻 大輝、音桐 湊:マツタロー 様
「ねぇねぇ、虫さん。ここから、出られると思う?」
短めの黒髪に、宝石みたいな水色の目の少女。|水仮 香澄《みずかり かすみ》は牢屋に入ってきたゴキブリに話しかける。ゴキブリはカサカサと牢屋を歩き回った後、どこかへ行ってしまった。香澄は溜め息をつき、壁にもたれかかる。ここから出ることは「できる」と思う。でも、私が出て行った後、みんなはどうなるんだろう?香澄はそう考えると出られなかった。
「香澄、実験の時間です。」
牢屋の鍵を看守の|赤城 宋《あかぎ そう》が開ける。少し長めの髪に、落ち着いた茶色い目の優しい看守さんだ。香澄は床に手をつかないようにして立ち上がる。
「分かった。」
実験は嫌だった。でも、私は看守さんは好きだった。
「宋さんってなんで虫嫌いなの?」
香澄は宋に何気に聞いてみる。宋は顔をしかめた。
「逆になんで好きなのかよく分かりませんよ………あの多数の足が蠢いてたりすると、もう視界に入れただけで………。」
相当苦手ならしい。香澄はちょっと躊躇った後、足元を指差す。
「えぇっと、そこにゴッキーくんがいるんだけど………。」
「………。」
なにも言わずに宋は倒れる。気絶しちゃったみたい。
「………雷さ~ん!」
香澄は大声で、|藤咲 雷《ふじさき らい》を呼ぶ。すぐに淡い緑色の髪に、右目が緑色、左目が水色、瞳孔が右目が白で、左目が黒の星形の人が走ってきた。
「あ、No.1じゃん!やっほー、!」
ぶんぶん手を振る雷。香澄は床に倒れている宋を指差す。
「あれ?宋さんまた倒れたの?」
「あ、はい。」
「仕方ない!宋さんはおいてく、!僕が代わりに実験室まで連れて行くよ、!」
「あっ、ありがとう、ございます。」
取り敢えず感謝しておく。香澄は雷と一緒に実験室へと向かった。一階にある実験室へ向かう途中の牢屋。
「ノルエちゃん!」
銀髪のボサボサの長い髪に、鋭い黄色い目。頭に生えた銀色の狼の耳の少女、ノルエ・ユリファセーラは香澄に気づくと、顔を上げた。
「香澄?今から実験?」
「う……うん………。」
ノルエは心配性だからあんまり言いたくないんだけどな………と思いつつ、香澄は気まずそうに言う。
「じゃあ、またね!」
「香澄。香澄のことは、私が守るから…………。」
言われた言葉に、香澄は頷けなかった。ノルエには実験で得られるはずの、能力がない。既に、実験段階2まで進んでいるのに、能力が発現する事はなかった。私の能力は「腐」。手で触れたものをなにもかも腐らせる能力。科学者さん達が言うには、両手に毒物を注入し、細胞が毒物と適合するかの実験をしたらしい。香澄の実験段階3。どこまで、強化できるか、だ。実験は実験段階があがるごとにより無茶苦茶になっていく。だから、今回も………。
「香澄、聞いてるかい?」
ノルエに聞かれ、香澄は曖昧に頷く。
「じゃ、じゃあね!」
香澄は逃げるように、雷について行く。ノルエが見えなくなり、実験室の前まで来た。
「雷さん、待っててくれてありがとうございます……。」
「あ~……ちょっと待って?鍵失くしたかも……。」
「あっ、またですか?」
雷はよく物を無くす。また他の看守さんに怒られちゃうよ?と心の中で思いつつ、も
「ノックして見ればいいんじゃないですか?」
と提案する。
「確かに……!」
雷がノックすると、返事の代わりに怒鳴り声が聞こえてきた。雷がドアノブに手をかけると、鍵は開いていたみたいで、すんなり開いた。
「ちょ、!おい~!なにしてくれてんだよw」
「あぁ~ごめんごめん~。」
少しボサボサな茶髪のショートに光のない黒っぽい紺色の目。シワのできた白いYシャツを着て、なんか色々入ったポーチを腰に付けた少年が、藍色で、所々水色の入ったツインテールに光のない茶色い目、スーツ姿の人を怒鳴っている。少年は|神我廻 蒼《かがね あお》。もう一人は|佐々倉 碧《ささくら あおい》。手元にお茶で濡れたパソコンが置いてある。大方、碧が蒼のパソコンにお茶を零して、怒られているのだろうと予想する。
「あっ、香澄君。こっちこっち。」
そうちょいちょいと手招きをするのは黒髪で、眼鏡をかけている白衣の不健康そうな男。彼は|三辻 大輝《みつじ だいき》。ここの中で最も古参で、ゲヘナの創作者らしい。はっきり言うと、私は嫌いだ。
「もしかして、今日の担当って、大輝……さん?」
香澄が聞くと、大輝は頷く。………一番、最悪………。香澄は苦虫を噛み潰したような顔で実験室へと入った。
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「ゲホッ………ガハッ………。」
香澄は激しく咳き込む。少し血の混じった痰がでてくる。大輝って加減しないからやなんだよ………。はっきり言ってしまうと、本当に人間なのか疑ってる。
「あれーもうリタイア?これからが面白いのに。」
いや、体に毒物何回も入れられたら普通は死ぬよ。私は耐性あったから軽減してるけど。
「うーん。じゃあ、今回はお終いにしようか。」
ホッとする。しかし、それは間違いだった。腕にチクリと痛みが走る。
「!?」
見ると、注射器を持った大輝。
「これで、お終い。」
「う゛あ゛ァぁァ゛¿な゛にこ゛」
傷口が焼けるように痛く、皮膚が爛れている気がする。見えないから分からないけど。上手く呼吸ができなくて、喉から風をきるような音がする。
「カヒュ……こ゛レは゛¿」
声を絞り出す。大輝はそれに答えなかった。
「あぁ、その毒には耐性がないんだ。じゃあ、もっと注入しようか?」
「う゛あ゛や,やめ゛でアァ……ガッ…………。」
香澄はそのまま気を失った。
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目を覚ましたのは夜だった。静まり返った夜。香澄は夜が嫌いだった。
「こんばんはー差し入れ持ってきたよー。」
そう言って、牢屋の前に立ったのは|音桐 湊《おとぎり みなと》。白っぽい緑色の短髪に、瞳孔は蛇のように縦に長い朱色で、瞳は黄色い。青色の無地の着物を着ていて、腰に刀という大分和風な格好だ。
「あ゛、ありがとうございます゛。」
まだ、声がちょっとおかしい。
「三日も目覚めなかったから心配したよ。」
「み、三日!?私、三日も寝てたんですか……ゲホッ…ゴホッ!」
食べながら喋ったため、弁当が喉につっかえる。
「大丈夫?」
「あっ、はい。」
「なんかあったらすぐに呼んでね、じゃ!」
湊がいなくなると、夜は静けさを増した。香澄は闇の中で決心した。ここを、脱獄する、と。
考えもしなかった。**`《《あんなこと》》になるなんて`**
次回予告(っぽいなにか)
?「なにをしているんですか?」
香澄「!?」
新キャラクター登場。脱獄に仲間か!?
あとがき(っぽいなにか)
作者「ちわーす!」
香澄「こんにちは!」
作者「始まりましたねー!」
香澄「ですねー!」
作者「香澄ちゃんかわいいねー!」
香澄「ですねー!って、ん?」
作者「次回も見てねー!」
香澄「よろしくね!」