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第一章 梶鈍マン of the world!!
**〜もくじ〜**
第一章 出会い。
第二章 タイムリミット
第三章 近づく流れ星
第四章 試練の成果
第五章 消えゆく希望
第六章 思い出の灯火
第七章 梶鈍マンの真意
第八章 流れ星の軌跡
第九章 二人の決意
**第一章 出会い。**
少年、中島一(うかしま)は、ある国を訪れていた。
一日三度の食事すらままならない貧しい生活を送っているが、その瞳には不思議なほどの希望が宿っていた。理由はひとつ——この国には、古くから伝わる言い伝えがあったのだ。
《地に落ちた流れ星を見つけ、三分以内に願い事を唱えれば、必ず叶う》
うかしまは、この言い伝えに目をつけていた。
「これで、貧乏生活から抜け出せる」小さくつぶやく。
もちろん、億万長者になりたいわけではない。せめて、毎日の食事に困らない生活——それだけで充分だと、心の奥では考えていた。
その夜、うかしまはポケットから古びたコンパスを取り出した。
中島家に代々伝わる家宝で、針はところどころ錆びているが、静かに方角を示している。
子どもの頃、祖父から聞いた言葉が思い出される。
「このコンパスは、落ちた流れ星を指すことがある。だから、使うなら最後まで諦めるな」
今日、このコンパスはうかしまにとって大切な頼みの道具だった。
速く走るために、全財産を叩いて高級シューズ(三千円也)を買ってしまったのだ。
「今日中に流れ星を見つけなければ…どうなるんだろう…でも、行くしかない」
原因は自分の行動にある。しかし、うかしまは恐れる様子を見せなかった。
自分には他の人にはない頼みの道具——コンパスがあると信じていたのだ。
国の夜空は無数の流れ星で満たされていた。
遠くの山の稜線をかすめ、森の間を滑るように落ちる光。
町や街道、港町まで、人々が流れ星を追い求めて駆け回っている。
大勢の召使を従え、網のように探す大富豪もいる。
「あんな大勢の人たちに、俺は勝てるのか…」
胸がわずかにざわつくが、針の示す方向は揺るがない。
うかしまはコンパスの針に従い、夜の国道を進み始めた。
「行くんだ、星を見つけるんだ…!」
しかし、歩いても歩いても、流れ星はまだ見つからない。
「くそ…いくら追いかけても…まだ手に届かない…」
何度もため息をつき、肩の力が抜ける。
朝から何も食べていない体はだるく、思うように動かない。
「お腹…減った…でも…諦めるわけには…」
希望はまだ残っている。
森を抜け、川を渡り、小さな市に差し掛かる。
屋台の明かりに照らされ、人々の笑い声や商人の呼び声が夜空の静けさを彩る。
うかしまは空腹に耐えきれず、足を止めて地面にしゃがみ込む。
「こんなに歩いたのに…まだ見つけられない…」
肩を落とすうかしまを、遠くから見つめる小柄で顔の大きい少年が立っていた。
「大丈夫か? 具合でも悪いのか?」
少年は温かい焼きたてのパンを手にしていた。
その優しい眼差しに、うかしまはほっとしながらパンを受け取る。
「助かる…ありがとう。あなたは?」
「梶鈍マン。オレも流れ星を探しているんだ!でも、全然見つからないんだよ。」
「僕もだ。この流れ星がある方角を指すコンパスがあれば余裕だと思ったのに…」
パンをかじり、体を温めたうかしまは再びコンパスを握る。
「行くんだ、針が示す場所へ…!」
迷わず歩き始めるうかしまを、梶鈍マンは少し笑みを浮かべ、そっと後を進む。
市を抜け、国境に続く山道に差し掛かる頃には、空腹も少し満たされ、体力も回復しつつあった。
だが、その後も事態は変わらなかった。
いくら歩き、目を凝らしても流れ星はまだ見つからない。
冷たい風が頬を切り、靴擦れは赤く痛み、膝に鉛でも詰められたかのように足は重い。
うかしまは立ち止まり、膝に手をついて深く息を吐いた。
「こんなに探したのに…まだ一つも…」
腹の虫が鳴り、体は疲労で重い。
しばらく座り込んだまま、うかしまは心の底から自分を鼓舞した。
「まだ…諦められない…ここで終わるわけにはいかない…」
だが言葉だけでは体の痛みと空腹は消えない。
手が震え、コンパスをしっかり握るのがやっとだ。
頭の中に、祖父が作ってくれた熱い粥の匂いや、母の笑顔がふと蘇る。
思わず目に涙が滲んだが、すぐにこらえて立ち上がる。
梶鈍マンはうかしまのそばに立ち、無言で水筒を差し出した。
短い沈黙のあと、彼はぽつりと言った。
「俺も、こうして誰かを助けられるとは思わなかったよ」
その言葉に、うかしまはぎこちなく笑った。
「ありがとう」
声はかすれていたが、確かに届いた。
再び歩き出すと、夜風が少し和らいだように感じられた。
コンパスは変わらず一点を指し続けている。
「ここなら…きっと…!」
うかしまは小さな火を胸に灯し直し、力を振り絞って歩を進めた。
川のせせらぎ、風に揺れる草の音、遠くで狼が遠吠えする。
国全体が生き物のように呼吸しているかのようだった。
そして、二人の冒険はここから動き出したのだった。
第一章が好評だったら第二章も書いてみようと思います!
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