公開中
ボクだけのキミ、愛す。 #4
放課後の教室。窓からは夕陽が差し込み、オレンジ色の光が机の上を淡く染めていた。
誰もいない空間に、結の静かな息遣いだけが響く。
「結、目を見ろ」
御影司の声は低く、冷たく響く。
彼は一歩ずつ、ゆっくりと結の前に歩み寄った。
結は手を組み、顔を上げた。震える瞳は、彼から逃げることなくまっすぐに司の瞳を捉えていた。
「今日の罰は、言葉の意味を深く理解してもらう。俺への“忠誠”を見せろ」
結はかすかに頷き、かすれた声で答えた。
「はい……司くん」
司は結の手を掴み、その指一本一本を強く握りしめる。
「お前の命令違反は許さない。俺の所有物だということを、身をもって理解しろ」
結の胸が苦しく締め付けられる。恐怖と、なぜか胸の奥で疼く熱が混じり合う。
「まず、携帯を俺に渡せ。外部との連絡は一切禁止だ」
結は震える手でスマホを差し出し、司に渡す。
「次に、明日の放課後まで俺の許可なしに外出禁止。友達とも会うな」
「……はい」
「お前の一日は、すべて俺の管理下にある。甘やかすつもりはない。だが、従えば……」
司の声がひそひそと囁くように変わった。
「特別な“ご褒美”をやろう」
結はその言葉に震えながらも、目を閉じて小さく頷いた。
教室の窓から差し込む夕陽は、ふたりの影を長く伸ばしている。
結は司の目を見つめ、心の奥で決意を固めていた。
(私は、司くんだけのものになる。たとえ罰が辛くても、彼のためなら――)
「そうだ。お前は俺のものだ」
司の手が結の顎を優しく掴み、ゆっくりと引き寄せる。
唇が触れた瞬間、結の中で何かが壊れ、そして新たに結びついた。
教室を出て、ふたりは屋上へ向かう。
風が吹き抜ける屋上で、司は結に向かって低く言った。
「お前がどれだけ俺に忠実か、明日からの一日一日で証明しろ」
結はうなずきながらも、胸の奥に小さな疑問が湧いた。
(こんなに苦しいのに、なぜ私は司くんの命令に従いたいと思うの?)
だが、その疑問はすぐに消え去る。
司が優しく触れる指先に、救いを感じてしまうからだ。
夜、結はひとりでベッドに横たわり、スマホを握りしめた。
【司くん】
「明日の罰のために準備は怠るな。お前の従順さを楽しみにしている」
結は指で画面を見つめ、涙が一粒頬を伝った。
(私は本当に、これでいいの?)
けれど、その先に見えるのは、司の厳しくも優しい瞳だった。